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「2018年度 様変わりする中学入試を予想する」をテーマとするセミナーが開催(後編)

首都圏入試の熱も冷めやらぬ2017年2月19日(日)、「第1回新中学入試セミナー」が和洋九段女子中学校高等学校にて、21世紀型教育機構の主催で行われました。先進的な取り組みである21世紀型教育を推進する学校の先生方が中心となり、「2018年度 様変わりする中学入試を予想する」をテーマに実施。
 
各校で行われている21世紀型教育の実践内容やその教育に対応する資質を測る入試について、それぞれの立場から見た講演やパネルディスカッションなどを開催。私立中高一貫校の先生方をはじめ、多くの教育関係者や受験生親子が一堂に会しました。(教育見届け隊ライター/市村幸妙)
 
 
(左から、山下氏、大橋先生、平方先生、石川先生)
 
 
【第Ⅱ部】パネルディスカッション:未来を動かす私立中高一貫校そしてC1英語と革新的授業
 
第II部はパネルディスカッションです。
パネリストは、
・平方邦行先生(工学院大学附属中学校・高等学校校長)
・大橋清貫先生(三田国際学園学園長
・石川一郎先生(香里ヌヴェール学院学院長)
・山下 一氏(首都圏模試センター 取締役統括マネージャー)がコーディネーターとして進行します。
 
パネラーの紹介の後、まずは各校がなぜ先進的と言われる21世紀型教育を推進するのか、その理由やきっかけが語られます。
 
大橋先生は、中学入試自体の大きな変化を感じつつも、学校教育はどこへ向かうのか、21世紀型教育とは?と考え突き詰めていったということです。21世紀を生き抜かなければならない子どもたちに21世紀型教育を行うことで、従来型の教育と比べて最大の違いは、「生徒自身が自分で物事を考えることにより、学びを深める必要性に気づくこと」と言います。この自分で気付き、能動的に動きだす仕組みや仕掛けは学校によってさまざまですが、この21世紀型教育という挑戦は、保護者の要請にも応えることになり、結果的に学校の価値が上げることにも通じると実感を伴った感想を伝えてくれました。
 
 
さらに、三田国際学園で呼ばれている“Soul”とは、21世紀教育を推し進める覚悟や意思、続けていくことで生まれる成果を学校内、保護者、生徒が共通理解することを指しているそうです。
 
平方先生は、2002年に海外の学校での授業を視察した際に衝撃を受けたそう。以来、講義型の授業では得られなかった成果を考え、もっと双方向性型の授業を行わねば、と21世紀型教育を研究してきました。
 
工学院大学附属で21世紀型教育が本格的にスタートしたのは2013年。まず着手したのは、「思考コード」の作成です。ブルームのタキソノミーなどの研究や研修を通じ、議論を重ねることで同校ならではの「思考コード」を作り上げました。
 
この際に非常に重要なこととして、20代後半から40代前半の若い教員たちが“本気”で学校を変えようとすること、その意識を共有することが、学校改革最大の肝であり、そのための人事を行ったことも話されました。
 
石川先生はまず、「カトリック校で言うところの“Soul”は“隣人愛”や“MFO/Man for Others”といった精神です」と、ミッション校としての考え方を示します。
 
「今までは言われてことをやればいい教育だった」として、「今後の教育で求められることは、社会に出た時に自己実現だけでなく、他者のために何ができるかという視点を持つこと。そのために必要なのは、自分はどう貢献できるのかを考える授業をALやPBLなどで学んで身につけていくこと」と言います。
 
だからこそ教育のあり方を一から考えたそうです。「教育の手法が変わることが大切なのではなく、私学だからこそ、一度立ち返って本気に考えて、生徒をどう育てるか、世界へどう送り出すかを考えることが教育の原点」と力強く語ります。
 
山下氏からは「思考コード」や「ルーブリック」についての説明が行われます。まず三田国際学園では21世紀型教育を具体的にどう取り入れ、実践しているのが大橋先生により語られます。
 
「インタラクティブな授業を行うことで、生徒自身が思考することの大切さを理解し、同時に互いを尊重するような人格教育が進んでいます。ただしこの授業を続けることで問題になってくるのは、いわゆる定期試験です。従来通りの知識を問うだけの試験では意味がありません」
 
三田国際学園では、ルーブリックの考えを授業や評価に落とし込むことで、定期試験も授業を反映した問題を課しており、成績の評価軸も一貫させることで有効性を高めています。同時に、生徒へはどんな狙いで何を学ぶのかをあらかじめ提示しているそうです。
 
次に「なぜ思考コードが必要なのか」と水を向けられたのは平方先生。日本の教育界についてのインパクトを含め説きます。
 
世界はすでに、過去の経験を当てはめても解決できない諸問題が広がり、イノベーティブな行動を起こさなければ、現状維持すらできない時代へ突入しています。その中でOECD/PISAの学力調査結果によって、チャレンジする子どもが極端に少なかったこと、インプットはできてもアウトプットする能力がないことが露呈し、教育界自体が受けたショックの大きさを語った平方先生。
 
知識・論理型の思考力を養成している日本の教育の限界について、果たしてこれでいいのだろうかと語ります。今後子どもたちが、AI社会の中で生きていき、20年後に社会で活躍するため、「未来に備える教育を求めた結果、中高の教育の中で協働的な学びも重視しながら創造性を獲得できるような授業の仕組みを作りました。そのために指標となる『思考コード』が必要でした」と話します。
 
山下氏は「中学入試問題でも、知識を問うだけでなく子どもたちがもともと持っている思考力や発想力、想像力といった才能を見るものが増えています」と話します。さらに、首都圏模試センターとして学校取材を続けていくなかで感じた、この「思考コード」の明確な定義付けがなければ、先生方の共有認識にブレが出てしまい、子どもたちや先生たち自身への評価も曖昧になってしまうという危険性を問います。
 
さらに石川先生へは、「思考コード」における基本的思考について説明を求める山下氏。石川先生は上記の工学院大学附属で使われている例題に基づいて解説します。
 
 
 
「大学入試でありがちなA軸の知識を深めていくような問題は、採点しやすい客観的知識です。さらにB3では信長の功績とその影響をサマライズすることで大抵の問題は構成されていました。どうなっていくかわからない将来に備えるためにこれから問われていくのは、C軸の創造的な力です」と力説したのち、よくある誤解として「いきなり思いつけばいいのではない」ということを注意喚起します。
 
信長の行いを知った上で(A)内容を正しく理解して(B)、創造する(C)ことができることがベストと話します。「知識を正しく覚えることに専念していた日本の教育。信長のことを考える時(C)に、知識(A)としては大切です。知識はなければいけませんが、こと細かく知っているからといって、創造性には結びつくわけではありません」と平方先生から合いの手が入ります。
 
山下氏はこうした教育の流れを追いながら、変動している大学入試についても触れていきます。
 
「石川先生の言う通り、現状はA軸が問われており、2020年の大学入試改革によりB軸へと広がって、各大学での個別の出題ではC軸まで出してくることになるでしょう」と現在過渡期にある大学入試についての見解を語ります。
 
次の話題は英語教育について。私立中高一貫校で目指しているという「C1英語」とは何なのでしょうか。平方先生はこう応えます。
 
「“CEFR”での言語使用者のレベル(基礎段階=A、自立した=B、熟練した=C)についてはもうだいぶ馴染みがあるのではないでしょうか」。グローバル化を目指す日本で、世界の中で自分の考えや意見を表明するためにどんな能力が必要なのか、語学教育を行うにあたって、“熟練”を目指さない教育はどうなのかといった提言がされます。
 
工学院大学附属でも中学生の早い段階でC1に到達している生徒が何人もいるそうです。大切なのは、何をどう学ぶのか、授業の展開次第で生徒たちの熟練度は変わります。
 
さらには、大学進学を見越した際の検定試験とどう向き合っていくのか、その見極めが重要という大きな問題提起を進めながらも、引き続き熟練した言語使用者を充実した授業で育てていくことを宣言されました。
 
さらに大橋先生が続けます。
 
「社会で活躍できる資質や能力をつけるために三田国際学園で行っているのは、双方向性授業を通じたコミュニケーション能力、ICTを使って得た情報を精査できる能力などを組み合わせた“自分で思考する能力”の育成です」。そのために必要なのが、英語をツールとして考え表現する、C1英語なのだと言います。
 
受験生から非常に厚い支持を受けている三田国際学園。大橋先生は人気校の学園長として「次の一手は?」とよく聞かれるそうです。そこでもやはり必要なのは「C1英語、PBL、そのためのルーブリック」とし、「すべての基準は『考えること』。学校を上げてやっているのです」とぶれない姿勢を見せてくれました。
 
香里ヌヴェール学院では、様々な教科を英語で学ぶイマージョン教育を行っています。石川先生は、同校で行われているイマージョン教育についてこう話します。
 
「イマージョン教育で誤解されがちなのは、単に英語に触れる時間を増やしているというわけではないことです。大切なことは、自分の頭で考え、それを表現する教育を受けて育ってきたネイティブの教員と触れ合うことで、同時にその姿勢を学べるということ。こうした教育の中身に着目する保護者の方が増えてきており、だからこそ本校も注目を集めたのだと思います」と教えてくれました。
 
山下氏は、C1英語とアクティブラーニングの綿密なつながりを指摘します。三田国際学園では、先にもある通り、何よりも大切にしているのが「生徒自身が思考すること」です。
 
大橋先生は「そのために先生方は、生徒が思考するように仕向けたり、刺激を与えるトリガークエスチョンを考えに考え、投げかけます。生徒たちはそこから様々なことを互いに学び取り、考えをまとめ、プレゼンテーションします」と言います。
 
この授業は生徒たちにとっても、非常に負荷の大きいものでしょう。生徒たちは「集中する」という覚悟を持って授業に臨むそうです。なお、この考えたり議論する姿勢は生徒たちの中に着実に根付いてきており、自宅に帰って保護者と議論する生徒が増えているそうです。教育の成果に大橋先生はうれしそうに話してくれました。
 
平方先生はこの話を受けて「我々教員は、これまでの講義型授業のあり方を反省すべきだと思っています。ややもすると、生徒を静かにさせて、板書を写させるという授業でしたが、これで生徒たちが本当に集中しているのか、学べているのか。まったく異なる思考に囚われている生徒がいたかもしれません」と話します。
 
つまり、講義型の授業の中には抑圧と従順の関係もありえたと言い、それにより学校嫌いを生み出していた危険性にも言及。その関係性を解放し、授業を活性化するのが双方向型授業と教えてくれました。
 
また、自分自身で考えることも重要ですが、他人の意見を聞くことでさらに思考はもっと豊かなものになる、だからこそ協働的にPBLなどで学ぶのだとその重要性を伝えてくれました。
 
平方先生は「ただ、1時限の中ですべてPBLではありません。レクチャーすることもありますし、PILを取り入れることもあります。そのバランスで授業が行われています。その時に、思考することが絶対に必要になります」と話します。
 
アクティブラーニング型の授業に関して、先ほどの「思考コード」でいえば、どのレベルで行うのかを石川先生が説明してくれました。
 
「一番取り入れやすいのはAで、例えば信長がやったことを調べて発表する。Bはまとめる力がつくので、Aに比べればまだ良いけれど、どちらも教師が行えばいいものである」とバッサリ。
 
アクティブラーニングで大切なことは、「正解のない問いを考えること」であると言います。「自分の意見だけでなく、人の意見を聞くことに妙味があります。答えのない問いから、何人かで最適解を探していくことが将来に役立つ力をつける、アクティブラーニングを取り入れる最大の効果なのでしょう。
 
最後に、各校の今年の入試の総括と参加者へのメッセージをいただきました。三田国際学園では、年々入試の難度が上がっており、入試前に行った受験生へのアンケートでも併願校が確実に変わってきているとのことです。
 
大橋先生は「保護者の方の学校への大きな期待感を受け止めています。偏差値で学校を選んでいない、パラダイムシフトが起きていることにより、現在があります。子どもたちの将来を考え、こういう力をつけるために、何を行うのかを明確にしてきた結果だと思っています」と話します。
 
工学院大学附属では、2月1日の受験率の高さ(午前は100%、午後もほぼ100%)と入学辞退者が出ていないため、クラス数を増やさざるを得ないことがうれしい悲鳴です。これは保護者の意識の変化と、未来へ備える教育を訴え続けてきた結果と捉えています。平方先生は、この教育の過渡期だからこそ、私立学校は子どもたちの未来を考え発信していかなければと熱く語ってくれました。
 
香里ヌヴェール学院は、小・中・高の入試を行っています。受験生数は、中学校は横ばいでしたが、小学校と高校では、大きく倍率を伸ばしました。これは今後の社会を我がこととして捉えている保護者の意識や21世紀型教育への期待値を表したものといえるでしょう。
石川先生は「授業がすべてだと思っています」と話します。授業のさらなる改革をしていくことをここで誓いました。
 
 
【第Ⅲ部】展望
 
第Ⅲ部は、日本の21世紀型教育を牽引する先生方によるプレゼンテーションからスタートしました。登壇したのは、工学院大学附属中学校・高等学校教務主任の太田晃介先生と聖学院中学・高等学校で21教育企画部部長の児浦良裕先生です。テーマは「中学入試を転換させる思考力入試そしてSGT(スーパーグローバルティーチャー)」です。まずは各校で行われている「思考力セミナー」の動画発表から始まりました。
 
聖学院では、レゴブロックを使い表現する「思考力ものづくり入試」と、総合力で考える「思考力+計算力入試」を行っています。
 
この入試を始める際、まず「どんな生徒に育てたいのか」、「なぜ思考力入試を行うのか」を教職員研修で先生方も実際にレゴを使って考え、表現したのだとか。さらに生徒をタイプ別に成長段階を考えました。それぞれの個性を持った生徒たちを多角的に評価し、潜在的な資質や能力を大切に育むためです。
 
 
(左から、児浦先生、太田先生)
 
実際の入試では、創造的思考やクリティカルシンキング、さらに協働的思考を見るものとし、振り返りを重視していきました。気づけたことや自分ならどうできるかといった視点がポイントとなったようです。
 
なお、聖学院では受験生1人に着き、6人の先生方で思考段階をグレード別に分けて判定します。聖学院のメタルーブリック(工学院ではこれを思考コードと呼んでいます)に基づいた思考力入試用のルーブリックを作成しています。
 
児浦先生は、「条件設定を通して、自分だったらどうする?というところから、創造的思考力で“思考のジャンプ”を試みてほしいと思います」と言います。さらに、思考錯誤する力や粘り強く考える力な度も問われています。
 
 
工学院大学附属の「思考力入試」は、先に平方先生が示した「思考コード」に基づいて作られています。iPadなどを使ったICTによるもの、図書館を使い資料などを読み解くもの、レゴを用いて自分自身の考えを表現してみることといった思考力入試が行われています。
 
同校でもやはり思考力入試を行う意味・意義を考えた結果、直面した問題に対して正解がない場合、最適解を見つけたり、新しい答えを作る力の必要性を重視。太田先生は「思考をステップさせる経験を積むことで、思考力を磨くトレーニングができたら」と言います。授業も当然、これらの考え方がベースになっています。
 
 
工学院大学附属の「思考6ステップ」は以下の通りです。
 
みつける
あつめる
分析する
まとめる
つたえる
振り返る
 
入試の際の評価は、「質と量」、「項目と内容」「理由と具現化」、「要約」などに分かれており、小学生の男の子たちでも先生方が目を見張るようなカテゴライズや発想力を見せてくれるそうです。
 
「思考力テストはただのテストにあらず。プロジェクト(物事)を進めるフレームである」という、両校共通の思いを掲げ、まとめられました。
 
 
これらは、問題を発見することから様々な試行錯誤や段階を踏んだ思考などを経て、最終的に振り返るまでのプロセスがここに集約されており、これらは生徒が社会に出てから問われ続ける力を養成することです。
 
児浦先生は、生徒たちに「井の中のたわけもの、大海へ出よう!」と日々こう言っているそうです。生徒たちが社会に出た頃、変容した社会でも自分ありに理解して思考をジャンプさせられるようなタフな実行力と行動力と思考力を身につけさせたいと言います。
 
最後に、司会の平方先生から「SGT(スーパーグローバルティーチャー)という自覚」について突っ込まれた太田先生。「自分が“スーパー”というつもりはないけれど」と前置きした上で、「新しい教育を考え、実践し、踏み込んで外へ出るという意味で、SGTは目指しています」と熱く語ってくれました。
 
 
今後、21世紀型教育に基づく思考力を、学校教育や入試に具体的に取り入れたいと思っている方々の参考になったプレゼンテーションだったと言えるでしょう。
 
 
第Ⅲ部、そしてこの会をまとめとして締めくくるのは、順天中学校・順天高等学校校長の長塚篤夫先生です。テーマは「世界を変える21世紀型教育そして理軒館」です。
 
順天中学校・順天高等学校は、自然の摂理に基づいて真理を探究する「順天求合」を建学の精神としています。SGH認定校であり、21世紀型教育機構のメンバーである同校ですが、長塚先生の話は、
 
・世界は変わるのか
・入試は変わるのか
・教育は変わるのか
 
という3つの変化について、問いかける大胆な提言から始まりました。
 
「“世界は変わってきている”と言われてもまだ懐疑的な方もいらっしゃるでしょう。しかしその変化はもう始まっています」と、以下にその根拠を示し始める長塚先生。
 
大胆な提言について、世界は変化してきていることを肌で感じつつも、まだまだ懐疑的な方が多いのでは?と問いかけます。
 
例えば20世紀から21世紀で産業構造の変化により、衰退した職業について。あわせてAIの台頭により、子どもたちが社会に出る際の職業の変化など、現在叫ばれているさまざまな問題をその変化の片鱗として伝えます。
 
 
その一方で、長塚先生が驚いたこととして披露してくれたのは「AIは学ばない」というお話し。知識を蓄積したり、検索することはでき、それを組み合わせることは得意だけれど、あくまでそれは「学ぶこと」や「創造」とは一致しないと言います。
 
だからこそあらゆる産業でクリエイティブは必要であり、それがなければ職業も衰退してしまうと警鐘を鳴らします。日本ではまだ注目されていないですが、世界では、「クリエイティブクラス」という新しい産業構造がすでに生まれているのですと。日本でも、その新しい産業をマネジメントしていける力をつけるために21世紀型教育が必要なのだ、学び方も変えなければならないのだと力説します。
 
世界の中で将来を生き抜くために子どもたちに必要な力を洗い出した結果、現在の学習指導要領の改訂も合わせた大学入試改革では、日本の教育が世界基準に近づいて行っていることを長塚先生は評価されています。その世界基準の教育について、先生が感嘆しているのは、国際バカロレア(IB)の考え方です。
 
「IBの考え方で感動したのは、子どもたちに求めるだけではなく、教師や親に“探究すること”を求めている点です。さらに評価基準がしっかりと確立されていることは本当にすごい! そこまできちんと徹底するから世界基準になるのだと思います」と笑顔で話します。
 
さて、話を戻すと今回の学習指導要領の改訂においての注目点は、学ぶ内容だけでなく、学び方も変えていくということです。
 
「日本人はこれまで、学びに向かう意欲を培うことが一番苦手でした。しかし、この学習指導要領では、“探究”を繰り返すことで意欲を涵養するだけでなく、生徒自身が生き方や考え方を身につけ、確立できるものになるのでは」と話します。日本の教育が、これまでのようなコンテンツ(知識)ではなく、コンピテンシー(資質・能力)を育てるものへ変容する大転機であると言います。
 
大学入試や公教育は、これらの学習指導要領に則って展開されるでしょう。一方私学は、「建学の精神に基づいたルーブリックを各校が作り、教育を展開していくことで、私学らしい教育が可能であり、それぞれが個性を発揮できる存在となる」と話します。それがまた選択される存在になり得るのだろうと、長塚先生の話を聞いて思いました。
 
これらが、世界を担う子どもたちを育成すべく、21世紀教育に“本気”で取り組む私学の目指す方向性です。現在の教育過渡期において、思考すること、選択することなどは重要なキーワードです。今後もこれらの動向を見守り、見届けていきたいと思いました。
 
 
 

「2018年度 様変わりする中学入試を予想する」をテーマとするセミナーが開催(前編)

首都圏入試の熱も冷めやらぬ2017年2月19日(日)、「第1回新中学入試セミナー」が和洋九段女子中学校高等学校にて、21世紀型教育機構の主催で行われました。
先進的な取り組みである21世紀型教育を推進する学校の先生方が中心となり、「2018年度 様変わりする中学入試を予想する」をテーマに実施。
 
各校で行われている21世紀型教育の実践内容やその教育に対応する資質を測る入試について、それぞれの立場から見た講演やパネルディスカッションなどを開催。私立中高一貫校の先生方をはじめ、多くの教育関係者や受験生親子が一堂に会しました。(教育見届け隊ライター/市村幸妙)
 
 
 
 
今春2017年の中学入試で爆発的に実施校が増え、注目を集めた新入試――「思考力入試」や「英語入試」、「適性検査型入試」。
 
今回行われたこのセミナーでは、これらの新しい入試から2020年の大学入試改革の狙いを見定め、さらには日本と子どもたちの未来を支える21世紀型教育について実際に触れられ、理解できるものとなりました。参加した方々にとって、日々研鑽を重ねる先生方により行われている新しい教育の具体的な姿がより明確になったのではないでしょうか。
 
 
総合司会を務めたのは、工学院大学附属中学校・高等学校校長の平方邦行先生。
「従来通りの2科・4科入試に加えて、今年2017年度入試で激増した新しい入試、特に『思考力入試』や『英語入試』が、来年以降の教育界の変化を予感させるものなのではないか」と期待を寄せます。
 
2011年秋に発足した、この「21世紀型教育をつくる会」の経緯や概要について説明があり、さらに昨年9月12日に装いを新たに改組したことなどを報告。
 
「IBと同様のアクレディテーション機構として、各校が学校を上げて21世紀型教育に取り組むことを確認しました。欧米から受ける教育をなんとなくアレンジされたようなこれまでの日本の教育にくさびを打ちたいのです。日本の中から生み出された21世紀型教育を世界に発信したいという強い思いを持った団体です」と話す平方先生のことばに力が込められているのを感じました。
 
平方先生は、教育関係者に混ざって見受けられた受験生親子にもわかりやすいよう、講演の大切なポイントをまとめてくれました。
 
プログラムは「講演」、「パネルディスカッション」、「展望」の3部制で行われました。
第Ⅰ部の講演者は以下の3人の方々です。
 
【講演①】テーマ:2020年大学入試改革に影響を与える私立中高一貫校の教育
まず登壇したのは、21世紀型教育機構理事長であり、富士見丘中学校・高等学校理事長・校長の吉田晋先生です。
 
 
富士見丘は、SGH(スーパーグローバルハイスクール)として「サステイナビリティ=持続可能性」という観点などから、様々な社会問題を探究する課題解決学習に取り組んでいる学校です。
 
今回の講演では高大接続改革について、なぜ今行われる必要があるのか、社会構造から考える企業のあり方や大学選択、現状の受験生親子における中高選択の動機について、丁寧な解説が行われました。
 
同時に2020年を待たず今後の大学入試において、最大の目玉となっている英語入試と4技能の英語教育についての説明がなされました。文科省への提唱やさらには主体的に動くことのできない大学生の増加と、その原因・責任を高校に押し付ける大学の姿勢に対しても檄が飛びます。
 
だからこそ、この入試改革や高大接続改革には大きな意味を見出されています。「カリキュラムポリシー、ディプロマポリシー、アドミッションポリシーの3つのポリシーを大学が明確にしていくことで、受験生は大学名に捉われない、自分の将来や夢、目標に沿った大学選びが可能になります」と力強く語り、同時に「脱・偏差値」の考え方を提唱した吉田先生。
 
さらに富士見丘において「社会的グローバル人材として活躍できる教育を行っていきます」とより一層の教育の充実について宣言するのでした。
 
【講演②】テーマ:2017年中学入試分析と2018年の新展望
次に登場したのは、首都圏模試センター教育情報部長の北 一成氏です。主に新しいタイプの入試である「適性検査型(思考力)入試」と「英語入試」に焦点を当てた講演を行いました。
 
 
まずは今年2017年度入試の総括から。中学受験者数は、この4年間で少しずつですが上昇し続け、現在は首都圏では15%を超えていることが伝えられました。
 
なお、2月1日午前の実受験者数として発表されたのは3万7,201人。Web出願の増加により、一見受験者数は少ないように見えても実受験者数は増えていると北氏は指摘します。
 
注目すべきは、いわゆる従来型の2科・4科型入試の受験生数は減少傾向にあるということ。その減った人数を補っているのが、新聞やテレビ、ラジオなどでも話題になった「思考力入試」や「英語入試」といった新しい入試形態です。さらに、これらの入試の中でも形態は各校それぞれで、プレゼンテーション型や得意な科目を選択するタイプ、そして協働作業を行うものも出てきているということです。
 
 
来年度以降、これらの入試の導入を検討している学校が多いそうで、「来年以降もさらに増え続けるでしょう」と北氏は言います。
 
全体傾向としては、2020年の改革時期が不透明なため、大学付属校に人気が集まっています。またアクティブラーニングのメソッドが確立している学校は引き続き人気であることなどが、綿密なデータ収集や取材に基づき、具体的な注目校名と入試内容などが伝えられていきます。
 
そのなかには、この後のパネルディスカッションで登壇予定の大橋清貫先生が学園長を務める、三田国際学園の名前も上がります。
 
 
今春入試で125校が実施した「適性検査型(思考力)入試」について北氏は、「新しい入試は“希望の入試”です。これまで私立中学受験に関心を持たなかった保護者が私学へ目を向け、私学も豊かな資質と高い意識を持った生徒を迎えることができるためです。さらに、これらに関心を持つ保護者は、多くが大学入試の先を見据えている」と言います。
 
偏差値や大学合格実績などのデータに縛られず、我が子にあった学校選びを行い、私学も意欲のある子どもたちを受け入れる大きな機会となっていくのです。
 
【講演③】テーマ:21世紀型教育の果実そしてフューチャールーム
講演の部を締めくくるのは、21世紀型教育を今年度から本格的にスタートさせる和洋九段女子校長の中込 真先生です。今春の入試では、1897年に創立された伝統校が取り入れる21世紀型教育に受験生の期待が集まり、注目度の高い学校として人気が出ました。同校は今年生まれ変わり、歴史の1ページを新たに刻み始めます。
 
同校では、まずルーブリックで教育の指標となる示す方向性を探りました。最初は個人から始まって、その後に集団となり、最後は思考や発信力、対応力、通用する世界観も広がり深まりながら、世界へと広がっていくイメージなのだそう。
 
中込先生は「PBL(Problem based Learning)授業をすべての教科で取り入れ、自ら発信できる生徒を育成します。将来は社会に貢献できる女性に育ってほしいです」と笑顔で話します。
 
 
伝統校の和洋九段女子ですが、これまでの価値観も新たに位置づけし直し、時代に即した新たな息吹が吹き込まれました。
 
中込先生は、このルーブリックを整備したことによる良かったことの一つに、目指すべき道標があるため例えば学年ごとの研修旅行や文化祭などの学校行事でも「例年通り」ということばは使う必要がなくなったそうです。
 
また小グループにまとまりがちな女子の特色が、共感から協働へと、小さく育てて大きく飛躍させる学びの広がりのテコになることも改めて確認できるようになったということです。
 
学校としての大きな改革元年となった2017年、和洋九段女子はPBLとICTリテラシーを磨くこと、さらに充実した英語教育を掲げ、多様性を受容しながら飛躍する生徒たちを育てていきます。
 
 
なお、「フューチャールーム」とはPBLのための実験室のような視聴覚を中心とした教室です。同校を訪れた際にはぜひ覗いてみてください。
 
パワーポイントの画面をスマホなどで撮影する関係者や保護者が多数いたことは、現代らしい様相の会だったのでしょう。それらのエッセンスを惜しげもなく披露された講演者には今後とも発信を楽しみにしたいと思います。
 

 

 

聖徳学園 進化する「AL × ICT」

聖徳学園では、2015年以降、生徒全員がiPadを1台ずつ所持し、さらに全教室に電子黒板を設置するなど、ICTを本格的に取り入れていることで注目されています。その聖徳学園で、「アクティブ・ラーニングを実践するタブレット端末活用授業の開発研究-教科ごとのタブレット端末を活用した双方向型授業の開発研究―」と題した発表会が行われました。中1から高2まで様々な授業が行われていた中で、私は中学1年1組の英語基礎コース(宮林幸恵先生)、中学2年2組の歴史(涌島訓先生)、そして中学2年3組の国語(久保圭司先生)の授業を見学してきました。(高木美和:早稲田大学1年  21世紀型教育機構リサーチャー)

まず見学したのは中学2年生の国語です。今回の題材は「走れメロス」。どの学校でも取り扱う有名な作品ですが、ここで興味深かったのは、授業の進め方です。授業の最初に、「メロスの問題解決能力について30秒で発表できるようにまとめること」が目標として掲げられ、この目標に沿ってディスカッションやプレゼンテーション、そして評価という流れができていました。

 
久保先生は授業開始直後に3、4人のグループを編成し、今までで一番苦労した経験についてグループ内でディスカッションさせます。「走れメロス」の主題に関連するような経験を思い出させることで、授業内の対話が活発になっていくのが分かります。
グループの発表者として代表が選出されると、次にタイムキーパーなど、一人ひとりに違う役割が与えられました。そのことでグループ内の連帯感も生まれ、全員が積極的に授業に参加することに繋がっていくのです。
このグループワークに活用されていたのが、ロイロノートです。話し合った内容をその場で送信することができ、生徒と先生が考えを瞬時に共有するツールとして活用されていました。
そしてロイロノートは、もう一つ、評価の明確化という役割にも活用されていました。国語という科目は、何を学んだかわかりづらい教科だからこそ、目標を明確にしておくことが重要だと久保先生は授業の最後にお話されていました。ルーブルック評価の観点を配布することで、最初の目標がどの程度達成されたのかということが、最後に確認できるという構成になっていたのです。ICT機器が単に独立したツールとしてではなく、授業構成や授業の狙いをより効果的にする役目を果たしていることに気づかされました。
 
 
 
次に見学したのは、中学1年1組の英語基礎コースです。Alice and Humpty Dumptyを題材にして、グループワークが行われています。先生は各グループに大きい紙とポストイットを渡しており、大きい紙には穴埋め問題が、ポストイットには単語が書いてあります。生徒はグループで話し合いながら正解を導き、その結果をiPadで撮影して先生にロイロノートで送っていました。
結果を受けとった先生から、今度は生徒に解答が送られ、全員で答え合わせをします。先生はすべてのグループがそこまでできたことを確認してから今度はその文章を読んで録音するように指示しました。
さきほどの国語と同様に、このクラスでも生徒一人ひとりに役割が与えられていました。一人が英文を読んでいる間、別の生徒が録音しているといった様子を見ていて、発音まで記録できる点にICTの可能性を感じました。英語のクラスでは、ロイロノート以外に、Quizletなどのアプリも利用して発音やイメージを活用した単語力の補強を行っているようです。
ICTの活用により、生徒が楽しく授業に参加するだけでなく、反復練習することも楽しみながら行えるようになっています。また、先生の側からすれば、生徒一人一人の達成度が容易に確認できるという利点があります。
私自身、英語教師を目指す身として、とても参考になる授業でした。
 
 
 
最後に中学2年2組で行っていた歴史の授業を見学しました。歴史といえば先生が教壇に立って教科書に沿った内容を板書し、それを生徒がノートに書き写すというイメージです。とても静かな授業風景を想像しながら教室へ入ると、その先入観はまんまと覆されました。他のどの教科よりも生徒たちが活発に発言していたのです。5、6人のグループに分かれて話し合いがすでに始まっていて、覗いてみるとみんなiPad片手に教科書で何かを探しているようでした。
この授業の目標は「帝国主義とはなにか?条約改正はどのように達成されたのか?」という問いに答えることで、その目標は、いつでも生徒が確認できるように電子黒板に写されています。
ともすると先生が一方的に年号や主要人物を教える受け身の授業になりがちな歴史の授業ですが、ここではロイロノートを通して送られた何枚かの写真をヒントにして、人物の名前、なにをしたのか、その活動が他にどう影響したのか、といったことを歴史的な順序を並べ替えながら理解を深めるというグループワークになっていました。まるでパズルを一つ一つ組み立てるようで、生徒が主体的に取り組む学びがそこに展開されていました。今回は時間が足りなかったため行われませんでしたが、いつもは授業の最後にグループごとにたどり着いた結論を先生に送り、電子黒板上でそれを発表する場を設けるそうです。
最後は、先生お手製の小テストがClassiというアプリに送信され、生徒全員の知識の定着を確認するという授業構成になっていました。
 
 
今回見学した授業ではいずれもICTを活用することで、従来の授業ではかなわなかった学びが展開されていました。生徒たちは自分たちのペースに合わせてiPad内のファイルを行き来したり、先生は生徒から送られてきた課題を簡単に記録したりすることができます。また、グループワークの成果は生徒間で共有もできるため、授業外での学びにも有効です。歴史の授業でも見受けられたように自分で情報を探して処理する、情報処理能力を培う勉強もICTとアクティブ・ラーニングを組み合わせることで可能になりました。インターネットが普及し情報にあふれた現代で情報処理は絶対的に必要なスキルであり、それを生徒たちに指導するのは教師の役目ともいえます。つまり「ICT×アクティブ・ラーニング」は今後教育者にとって避けては通れない道であり、そして聖徳学園はそれをいち早く実践に移したと言えます。
これに加え、すべての授業に共通するものが3つありました。キーワードは「目標、時間、役割」です。先生は毎回必ず生徒たちに授業で達成すべき目標を明記することでなにをするべきか一目でわかるようにしていました。また、ディスカッションの時間やスピーチの時間などを決めてタイマーをセットすることで時間内に達成する集中力を鍛え、一人ひとりが役割を担うことで責任感を与えました。私はこれら3点が学校という場に限らず生きていく上で必ず必要な人間力につながるものだと感じました。企業に入るにしても海外で生活するにしても必要なスキルです。アクティブ・ラーニングの中で、主体性を伸ばし、知識の活用を図っていく上で、聖徳学園が行っている「ICT×アクティブ・ラーニング」の学びはとても有意義なものだと感じました。
 
 

 

工学院 21世紀型教育改革の基盤できる

2013年4月、平方先生は、工学院大学附属中学校・高等学校の校長に就任するや、21世紀型教育改革にとりかかった。IBやSGH、ブルームのタキソノミー、CEFRなどのリサーチやフィールドワークに教員を巻き込みながら、PIL×PBL型の授業改革を断行。
 
 
(工学院の教育改革の歴史と未来を語る平方校長)
 
 
2014年度にはいるや、教員全体でPBL研修を行い、そのためのプロジェクトも立ち上がった。そして、まずはじめに「思考コード」という基準作りを行った。このコードに従って、PBL型授業の見学をし、思考コードの軌道修正もした。この年の中1は、2017年に高1になるときに大きく改革ができるように準備がスタートした。この準備が、次の年のハイブリッド構想の設計図となった。高1の3ヶ月留学も開始した。このプログラムが在校生全体の意識を高める力にもなった。
 
2015年には、プロジェクトチームはiTeamというイノベーションチームに進化し、思考コードで定期テスト分析をするまでに進化。S-P表も活用し、授業改善、生徒の弱み強みの共有、問いの質のアップなど、データサイエンス的な議論が学内でできるようになった。
 
同時に英語教育もC1英語を目標に、ケンブリッジ出版のCLIL手法が埋め込まれているテキストを活用。中1のハイブリッドインターナショナルクラスが立ち上がった。帰国生や英語体験者が多く、英語ばかりでなく、数学、理科、社会もオールイングリッシュで展開することになった。
 
 
(思考コードベースの授業×テスト×評価の三位一体改革について語る太田教務主任)
 
2014年にスタートした「思考力テスト」のもとになったデザイン思考の新しい授業もパワフルになった。中学生全員iPadをもち、one to oneの授業展開も繰り広げられた。
 
何より、高橋一也先生(現教頭)がグローバルティーチャー賞トップ10入りして、学内全体の21世紀型教育改革は拍車がかかった。
 
2016年には、ハイブリッドインターは中1、中2にしか設置されていなかったが、その先駆けとなった中3の生徒も全員iPadを授業で活用するようになり、思考コードに基づくC1英語×PIL×PBL×ICT教育×リベラルアーツの現代化という21世紀型教育改革の方程式が完成した。
 
特に2016年は、iTeamを高橋一也教頭を中心に、TOK(田中英語科主任、太田教務主任、加藤学年主任兼eTeamリーダー)という3人の先生がリーダーシップを発揮し、学内全体にコーチングシステムを浸透させ、21世紀型教育改革を推進する「学習する組織」を持続可能なものにしている。その一環として、太田先生をリーダーとした若手教員のiTeamキャッチアップ研修も立ち上がって、日々研鑽自己マスタリーに励んでいる。
 
 
(英語教育について語る田中英語科主任)
 
2017年は、中学全体の21世紀型教育改革の基盤はかなり盤石になったので、いよいよ高校1年を手始めに21世紀型教育改革を本格的にスタートする。もちろん、忘れてはならないことは、この過渡期にあって、大学進路指導の改革も同時進行で行われていることである。高2、高3は改革の完成を待つことはできない。いまここでが最重要である。進路指導主任の新井先生が指導に集中し尽力し、21世紀型教育改革を未来につなぐ力技を遂行している。
 
2017年1月14日、2017年度中学入試のファイナル説明会が行われた。いつもの会場では収まりきれないほど多くの受験生親子が参加したので、急遽隣接の工学院大学の大講義室を活用。
 
この21世紀型教育改革の歴史を、平方校長が語り、次に教務主任の太田先生が、授業改革について具体的に語り、さらに英語科主任の田中先生が、英語教育改革の実際的な効果を生徒の活動の動画を使いながらスピーチした。
 
 
(思考力セミナーを主宰している高橋一也教頭)
 
同時に中高校舎の図書館では、PBLスタイルの「思考力セミナー」を高橋一也教頭をスーパーバイザーに思考力入試チームが実施していた。ある都市の気候現象のデータをもとに、都市の在り様を洞察していき、最終的には自分の考案するドリーム都市をレゴで作り上げるところまでいく。リサーチには、参加者はiPadも活用。
 
データリサーチから始まり、分析をしていき、発見した構成要素を論理的につないでいく過程を、個人ワークとグループワークを組み合わせながら歩んでいく。そして最後は自分の考えるドリーム都市をレゴでプロダクトするのだが、現実の都市とドリーム都市のギャップをクリティカルに考える過程も埋め込まれている。
 
このプロセスの中で際立っておもしろかったのは、分析段階で、クリエイティブシンキングを活用しているところ。分析だから論理的ではあるのだが、おもいきり仮説を挿入するから、そこはクリエイティビティが必要となる。
 
 
つまり、これはどういうことかというと、情報→理解→応用→論理→批判→創造という思考の次元をリニアー(直線的)に進むのではなく、クリエイティブシンキングを挿入して、ループあるいは螺旋を描きながら考えていくプログラムになっている。そう「プログラム」。コンピュータのプログラミングにも相当するフローチャートループが埋め込まれている。
 
2017年、思考コードにプログラミング思考が新たに加わる。STEAM教育やCLILもスタートする。隣接する大学のいわばSTEAM研究棟も新設され、そこを中高も共有できる。高1でもハイブリッドインターナショナルクラスが開設され、帰国生も入学してくる。新宿キャンパスの活用も検討されている。
 
 
(最終保護者会では、「英語入試」の傾向と対策について田中先生が説明。英語入試の受験予定者のために別室で行われた。)
 
そして、まだ企業秘密ではあるが、平方校長によると、日本初のプランが予定されているという。工学院の21世紀型教育改革はさらに進化する。なにゆえにこうなのか?教員のありたき「学習する組織」を協働して創るモチベーションや情熱が大きくなっているからだ。Growth Mindsetされた教師が外からもどんどん参画したいと応募してくる。もちろん、その魅力はTOKを中心とするITeamによる涙ぐましい創意工夫とプロデュースによるのである。(by 本間勇人 私立学校研究家)
 

聖徳学園― 創造性を解き放つPBL

聖徳学園の伊藤校長先生は、校長就任以来次々と学校外の団体とのコラボレーションを進めてきました。独立行政法人のJICAや大学の研究室、あるいは地元商店街や地域とのつながりも重視するなど、学校全体がまさにプロジェクト学習をしているかのようです。今回の訪問では、中1の2学期に10週に渡って行われてきた「シネマアクティブラーニング」と呼ばれるプロジェクトを見せていただきました。プロの映画監督とコラボレーションし、ICTを活用しながら進めている授業の様子をご紹介します。( by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家)

シネマアクティブラーニングというのは、映画監督である古新舜(こにいしゅん)氏が進めているアクティブラーニングで、映画作りを通して教科横断的な学びをチームで行っていくというものです。聖徳学園では、古新監督を講師として招き、トークノートやApple TV、それにiPadなどのICTツールを活用する形で独自のプロジェクト学習に仕立てています。

伊藤校長によれば、映画を学びの題材にしてみようという着想は、欧米の学校で行われる「演劇(Drama)」の授業から得たということです。台本にあるストーリーを再現するドラマの演出に加えて、「撮影・編集」という観点が加わる分、映画作りのプロセスは複雑になりますが、監督業を実際に行っている古新氏がファシリテーターとなれば、細かな枝葉を落として、核となる部分に学びをフォーカスすることが可能になるはずということで実現したプロジェクトなのです。

この日は、作品を仕上げるための最後の授業ということで、これまでの復習を兼ねて、古新監督が講義をするところから始まりました。小気味よいテンポと歯切れのよい口調で、これまで進めてきた映画作りのプロセスを確認します。生徒を引きつけながら、一斉授業は一斉授業として効率よく進めていく様子は、大手予備校の講師だったという古新監督の腕がさりげなく発揮されているところでした。

復習とリフレクションが終わると、チームに分かれて作品最後の仕上げを行う時間です。アニメーションの撮影を行うチームは教室に残り、その他のチームは撮り残しているシーンを撮影しに、教室から外へと出かけて行きました。

面白かったのは、台本に忠実に撮影をしていくところもあれば、その場のノリを大切にして台本にこだわらないところもあるなど、それぞれのチームの個性が表れてくるところです。中には、演じたいイメージが先にあり、そのシーンを挿入するために台本のストーリーをその場で作り変えているチームもありました。

古新監督は、どのチームのやり方も尊重し、何かを求められたときだけ助言をしていくというスタンスです。決して自分からあれこれ言わないのは、生徒が自分で気づくことに大きな意味があると、体験を重視しているからなのでしょう。

授業見学の案内をしてくださった伊藤校長は、各チームの撮影を見守りながら、「生徒たちは自分たちの映画が作品として完成した後に、一つ一つのプロセスの意味を振り返ることができてくるはずです」と、このプロジェクトの意義をジグソーパズルを完成させる作業に譬え、体験する学びに大きな意味があると強調されていました。

伊藤校長のお話を伺いながら、アウトプットすることで培われる学びの意義に改めて気づかされました。学びというとついインプットに焦点を置き、インプットがあってこそアウトプットができるかのように考えてしまいがちです。しかし、表現というアウトプットの機会が与えられることによって、自分の新たな可能性が開かれていくような学びだってあり得るわけです。

考えてみれば中学1年生は、つい半年前まで受験のためにインプット重視の学びをずっとしてきたのです。知識を持つことの重要性をいわば強迫観念のように刷り込まれてきた可能性すらあります。そのような学習観からすれば、映画作りにおいても、ストーリー構築や演技力・編集技術など、映画を制作する上で必要となる知識や技能を十分に身につけてから作品を制作するという発想をしてしまうかもしれませんが、そのような技能を重視し過ぎると、「上手くできる」ことに囚われて、自分らしい表現が阻害される場合もあるのです。

中学1年生の時期だからこそ、まずは体験しながら表現する機会をあたえようとするところに、聖徳学園の目指している教育の真髄があるように感じます。それは、生徒を教科という枠に閉じ込めるのではなく、自身を解放する方向に学びを転じようという態度です。そして、古新監督という「プロ」が指導にあたるからこそ、逆に、知識や技能を相対化して指導してもらえることもおそらく織り込み済みであったことでしょう。

まずは自分達のやりたいようにやってみる。そこから学びが始まるということがこのプロジェクトの意義であるわけです。

ICTは、このプロジェクトでも大活躍でした。ICTの環境をバックアップする横濱先生は、伊藤校長や古新監督と非常に良好な関係を築いていることがよくわかりました。授業の狙いや学校の目指す方向といったものを素早くキャッチし、一を聞いて十を知るが如くに必要な環境を整えていくのです。

技術的な興味関心を中心に考えるICT関係者も多い中で、授業に参加する先生や生徒たちの目線に立つことのできる横濱先生は非常に貴重な存在だと言えるでしょう。

iPadは、一人に一台が渡されているので、カメラを2台設置して違うアングルいから撮影することもできるし、一人が台本通りの撮影をしている一方で、その撮影シーンをメイキング映像風に撮るということも可能になります。撮影したものを違うチームにも共有する際に有効なのがApple TVです。また、トークノートというSNSはここでも大活躍していました。チームの打ち合わせは、トークノートを利用して授業前に共有されているから、授業時間は撮影等に有効活用できるのです。

ICTもまた自己を開放し表現するための強力な道具です。YouTuberを人気職業に押し上げるほど映像制作を身近なものにしたiPadやiMovieは、表現する行為を特殊な才能を持つ者だけのものから解放しました。一方で、映像制作以外の才能を発揮する人を活かすこともできるのです。絵を描くのが好きな子は絵を描くところを動画に撮って公開することができるし、野球が好きなのであれば、やはりその自分らしさを記録することもできる。

このようにして出来上がった生徒の作品は2学期の最後に上映会という形で発表され、いったん完結します。しかし、伊藤校長の頭の中では、次のピースがまた用意されていることでしょう。6年間の学びは、ジグソーパズルのような大きな完成図へと向かっているのです。

SGH 順天学園の教育改革 <1> ICT活用

順天中学校・高等学校(以降「順天学園」と表記)は、2014年度からスーパーグローバルハイスクール(以降「SGH」と表記)の認定校として、いち早く21世紀型教育に取り組んできました。同校の掲げる教育目標「英知を持って国際社会で活躍できる人間を育成する」は、文部科学省のSGH構想と100%合致しており、強力なシナジーを得て21世紀型教育改革を推し進めています。
 

そんなSGH順天学園の最先端の取り組みを、全4回の連載形式でお届けしてまいります。初回である今回のテーマはICT(Information and Communication Technology)。中学校・高等学校におけるICT導入は、ともすれば単なるIT機器の設備投資になりがちです。本稿では、順天学園が「ICTの本質」をどのように捉え、どのように活用しているのかご紹介していきたいと思います。(by 福原将之 株式会社FlipSilverlining)

 

<順天学園の反転授業>

さて、順天学園におけるICT活用を見ていくためには、その活用現場である「順天学園の授業」について先に触れておく必要があるでしょう。

「二次元において空間を分断させるものは線ですね。では、三次元において空間を分断させるものは何だと思いますか?」と生徒に問いかけるのは中原晴彦先生。順天学園では様々なスタイルのアクティブ・ラーニングを採用していますが、ここ中原先生の数学の授業では反転授業のスタイルを用いています。反転授業とは、従来の授業と宿題の役割を「反転」させ、教室では知識確認と問題解決学習を行うアクティブ・ラーニング型の授業です。

反転授業の問いかけをする中原先生は、東京大学大学院にて理論物理の博士号を取得した「研究のプロ」です。イギリスの高校で教鞭を執ってきたキャリアもあり、生徒への発問は的確に「学問の本質」を突いています。受講している生徒は4名と少数精鋭。生徒たちは脳に汗をかきながら、それでいて楽しそうに議論を交わしています。

写真:中原先生の問いかけに応えて、自分のアイディアを述べる生徒たち。活発な議論の様子が伺えます。
 

<反転授業のICT活用>

それでは、中原先生の反転授業で使用しているICT機器をみていきましょう。中原先生の授業で使用しているICT機器は全部で二つあります。ひとつ目は、次の写真のような電子黒板です。

写真:順天学園の反転授業で使用されている多機能型の電子黒板。生徒がこれを使って講義をすることもあります。

 

いわゆる多機能型の電子黒板で、(写真では使用していませんが)三角形などの図形をきれいに描いたり、デジタル教科書を映したりすることができます。しかし、この授業ではデジタル教科書は使用していませんし、また図形もハンドフリーで描くことが多いでしょう。なぜ、反転授業で電子黒板を採用しているのでしょうか。

「電子黒板は、普通の黒板でできることが全部できます。でも、何かをスピードアップしてパッパッパと見せるためにあるわけじゃないのです。」と中原先生。「電子黒板の強みは、書いた内容を全部“共有”できる点にあります。普通の黒板ですと、一度消してしまったものは無くなってしまいます。でも電子黒板なら、授業中に書いた内容は全部デジタル化されて保存されます。電子黒板を使用することで、生徒は「ノートに記録する作業」から解放され、議論の内容により集中してもらうことができるのです。」

写真:順天学園の反転授業で生徒が使用しているノートパソコン。紙のノートとノートパソコンの両方を併用したハイブリッドスタイルで学習をします。

 

反転授業で活用されている二つ目のICT機器は、生徒用のノートパソコンです。こちらを活用して生徒たちは、議論に必要な情報をインターネットで検索したり、デジタル文書を作成・共有したりしています。ここで興味深いのは、ノートパソコンの使用を生徒に強制していない点です。たとえば議論のメモを残すとき、生徒たちは自ら考えて、ノートパソコンを使うか紙のノートを使うか選択することになります。「ノートパソコンは手段のひとつにすぎない、と自分で気づけた生徒は伸びるのです。」と中原先生。このように順天学園は、ICT文具論(学習者中心型)を目指す方針でICT活用を行っています。

<ネイティブスピーカーとICTの併用>

反転授業の他にもう一つ、順天学園のICT活用の事例をご紹介しましょう。

写真は順天学園の英語授業のワンシーンです。日本語の教師とネイティブスピーカーの教師の二人で実施しており、授業中は日本語NG・・・つまりオールイングリッシュのスタイルになっています。使用しているICT機器は、先ほどと同じ電子黒板とオーディオプレーヤーです。オーディオプレーヤーは英語の音源を再生するためのものですが、例えばスピーキングのトレーニングであるシャドウイングの練習時には、オーディオプレーヤーではなくネイティブスピーカーの生の声で実施しています。オーディオプレーヤーでは決まった速度でしか音声を再生できないのに対し、ネイティブスピーカーであれば生徒の習熟度に応じて英語を読み上げる速度を早くしたり遅くしたりできるからです。このように順天学園では「ICTがあるから活用する」のではなく、「ICTを有効な手段のひとつ」として適材適所で活用しているのです。

<ICTの本質とは?未来へむけてRikenkanの建設>

最後に、順天学園校長の長塚篤夫先生、副校長の片倉敦先生、そして国際部長の中原晴彦先生にICTの本質と今後の取り組みについてお話を伺いました。「面白いことに(アクティブ・ラーニングにおいて)議論の中心になるのは、パソコンが使える生徒でした。アイディアを出せる生徒ではなく、(ICT機器を使って)アイディアを具現化できる生徒が、ディスカッションの主導権を握ることが多いのです」と話すのは片倉先生。21世紀型教育であるSGHの探求学習においても、ICT活用の果たす役割は非常に大きいことが伺えます。

もちろんICT活用には、導入する際に気をつけなければならない点もあります。「ICTによって学習の自由度が増えると言いながら、ある意味で自由度が減ってしまう面もあります」と中原先生。ICTを授業で使うことに執着してしまうと、期待とは反対に学習効果が落ちてしまうことがあります。大事なのは、「なぜICTを活用するのか」を考え続けることです。ICTはあくまでも選択肢のひとつ。「ICTを導入することで、結果的に紙に戻るかもしれません。それでも良いのです。」と中原先生。将来、生徒の選択肢のひとつに「ICTという手段」を加えてあげる教育こそが、21世紀の社会において求められているのです。

写真:来年7月に完成予定のRikenkan(理軒館)。ICTスペースのほかにも、サイエンスラボやラーニングコモンズによる協働的学習環境が整備されます。

 

ご存知の通りICTとは、Information and Communication Technologyの略称です。つまりICT活用とは、単にIT機器を活用することではなく、コミュニケーションツールとしてITを活用することなのです。「ICTとは先生が効率的に情報を伝えるためものではなく、本来双方向にコミュニケーションできる点がその本質なのです。」と長塚先生。「そのためには、生徒が一人一台ICT端末を持つだけでなく、それを活用していくための共有ワークスペースも必要だと考えています。そのための空間を王子キャンパスにて建設中の新施設Rikenkan(理軒館)に作る予定です。」Rikenkan(理軒館)は来年7月に完成予定とのこと。加速していく順天学園の取り組みに、今後もどうぞご期待ください。

 

聖徳学園ー新たなICT教育へのチャレンジ始まる

聖徳学園グローバル教育センター長でスクールカウンセラーでもある山名和樹先生が、ICT教育の領域で新しい試みを開始しました。早稲田大学大学院の教職研究科の研究室とのコラボレーションで、TalknoteというSNSを利用した中学2年生向けの公開授業を6月に実施。異なる世代の考え方に触れる体験を通して、情報リテラシーやコミュニケーション能力を高めるICT教育のあり方です。 by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家

山名先生が示した授業目的は、次の3つです。

  • 外部とのつながりによる、新たな道徳教育の形
  • SNSの効果的な活用
  • コミュニケーションを考える

現代社会の働き方は、チームでのコラボレーションが重視されつつあります。会社の文化や世代の違いを超えてコミュニケーションをしていくことがますます求められている時代です。FacebookやツイッターといったSNSもまた、自分のメッセージが見ず知らずの人の目に触れてしまうかもしれないという意味で、実は高度なコミュニケーション能力を要求されるツールです。

聖徳学園では、そういう時代に要請されている高度なコミュニケーション力を育てつつ、しかもいきなり荒海に出るという危険性を回避するために、Talknoteというアプリを採用しました。学校外に開かれてはいるものの、一応学校の目を光らせておくこともできるSNSであるというところがポイントです。

そして、異なる世代で、顔も知らない大学院の学生とオンラインで交流することを通して、情報リテラシーやコミュニケーション能力を磨いていこうというわけです。

聖徳学園の中学2年生から大学院の学生に、Talknoteを通してすでに3つの質問が出されていました。

  1. 中学時代に戻ってやり直したいこと
  2. 中学時代に出会った大きなこと
  3. 14歳までに知っておくべきこと

年長の人たちが自分たちの年代を振り返った時にどのように感じるのか。自分が過ごしている「今」が未来からどのように見えるのか。こういうことを知る意味で、年長者による助言は時に有効な手がかりになります。特に中2という学齢は思春期の真っ只中で、自分を見失いがちな年代です。スクールカウンセラーでもある山名先生にとって、そういう問題意識がプログラムに活かされているのでしょう。

この日の授業では、学生がTalknoteを通して返してきた回答をカテゴライズして、それぞれのチームがプレゼンテーションを行うという流れになっていました。

この日、Talknoteでやり取りをした早稲田の学生は別室に待機していて、中継を通して教室の中2生たちの様子を見ていました。中2生の教室でも学生の姿がスクリーン上で中継されており、それまで顔が見えなかった相手がこの日初めて確認できたのです。「あの人が〇〇さんなのかも」と考えることで、どうやら親近感が湧いてきたようです。チームの対話も活発になってくるのがわかります。

ポスタープレゼンテーションでは、自分のチームでプレゼンテーションをするだけでなく、ルーブリックを用いて他のチームの評価もしました。

振り返りは、やはりTalknoteを通して行われました。中2生と学生とが、自分の感じたことをそれぞれ交換し合います。そこで印象的だったのは、顔が見えた後の安心感に言及している生徒や学生の意見が多かったことです。

SNSがコミュニケーションツールとしてこれだけ広がっている中、そのツールをただ禁止したり制限したりするのではなく、どのような特性を持っているのかを考えさせ、活用するための知恵を身につけていこうとする意味で、この授業はとても意義のあるものでした。実践を通して常に新しいことに挑戦する聖徳学園は、ICT教育においても新しい方向性を模索しているように感じられます。

おそらく今後はこうしたSNSを活用した学びをグローバル教育にも結び付けていくことになるのでしょう。年齢の異なる他者から文化が異なる他者へのシフトは、グローバル教育センター長である山名先生にとって、すでに想定済みのことであるように思われます。次の展開が今から楽しみです。

工学院 リーダーシップ研修 タブレット使って

工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」)は、多様な研修を内製化/内省化しています。もちろん、先生方自身、外部の研修でも自己陶冶していますし、NPOなどとの連携プログラムもコーディネートしています。しかし、最終的には、自分たちの力で学校をパワフルにしていく必要性を感じています。

ですから、自分たちでコーチングシステムを生み出し、学んでいこうとしています。授業・テスト・評価の流れをPIL・PBLに転換し、自らつくった思考コードというメタルーブリックでプログラムをつくり、データによって検証していくシステムはかなり進んでいます。プロジェクトチーム→教科チーム→全体研修と浸透を広めています。

しかしながら、最終的にはどんな局面でも、メンバーと協力し、乗り越えていくリーダーシップを発揮しなければなりません。そのため、リーダーシップ研修の内製化も開始したのです。 本間勇人:私立学校研究家

平方校長は、C1英語、PIL・PBL、ICT、思考力テスト、リベラルアーツなど、まずは中学から大改革を進めています。試行錯誤、紆余曲折はあるかもしれませんが、改革項目は中学校全体に広がりました。

したがって、来年から高校にまで広げていきます。しかし、高校は中学の3倍の生徒の数になりますから、たんに教育方法論を改革したからといって、入魂改革は容易ではありません。やはり、最終的には人材です。教師のモチベーションと生徒の未来を拓くリーダーシップこそ重要です。

だからといって、リーダーシップを発揮せよと号令をかけて動くものでもありません。改革のパラドクスは、改革の号令をかけると動かない人材がでてくるというものです。したがって、平方校長は、リーダーシップが教師1人ひとりの心に火がつくような学びのチームを形成しています。

中高から主任クラスを集めて、自分たちでリーダーとは何か?リーダーシップとは何か?どう語るのか?どう動くのか?メンバー一人ひとりの特性をどのように理解していくのか研修しています。

(左から太田先生、田中先生、岡部先生)

プロジェクトチームのリーダーである太田先生、田中先生、加藤先生(加藤先生は、今回は生徒のために海外研修にいって不在でした)が、リーダーシップ研修については、人生の先輩である岡部先生にプログラムを作成してもらい、指導を仰ぐという形式でスタートしました。

岡部先生は、その道の名ファシリテーターで、「映画」を使ったり、Web上のゲームを使ったり、要するにICTを自在に操りながら、何が一体乗り越える壁なのか、明らかにしていく機会(オポチュニティー)を創っていきます。

素材がわかりやすいものなので、互いにストレスなくオープンマインドで議論していく環境が整います。もちろん、参加した先生方は、この研修がリーダーシップ研修であると同時に、自分たちの授業でも活用できるサイトやアプリ、流れなどメタ的に理解しますから、一石二鳥なわけです。

リーダーシップ研修の内製化の何より重要なのは、映画やストーリーのケースを、最終的には自分たち学校の具体的なケースメソッドに落として議論していけることです。外部の研修ではこうはいきません。ですから、プレゼンにも責任を引き受けた真剣なものになります。

edModeを活用して、行うので、アンケートもとりながら、メッセージも共有しながら研修は進みます。簡易エゴグラムの結果も互いに一気に共有しますから、個人のリーダーシップの特徴を理解し合います。そして、とそれがチームになったときの組織的動きにどうつながらぬかも見えてきます。

事実確認をしながら、根本にある問題を共有し、それをどう解決していくのか。創造的問題解決型リーダーシップをトレーニングしているのです。

もちろん、この創造的問題解決型リーダーシップは、生徒も身に着ける大切な使命です。予想がなかなかできない未来にあって、生徒はこのリーダーシップを自分軸として持っていれば、なんとか突破口を見いだせるのではないでしょうか。

それにしても、少年少女のように学ぶ先生方。研修はいつもPIL・PBL型で行われるのですが、この姿はそのままふだんの授業の生徒の姿や表情に重なります。

教師も生徒も共に学ぶ組織が着々と形成されているシーンを見学することができました。

桜丘のICT教育 次の次元へ!桜丘ショック!はまだまだ続く(3)

§3 多様な思考スキル

アクティブラーニングは、タキソノミーという能力の段階とその段階の間を幾度も往復し、循環するための思考ツール、そして思考スキルの関係総体で展開されます。思考ツールには、iPad、レゴ、思考マップなどが強力ですが、粘土や木材、楽器、画材などなど無限にあります。しかし、iPadがそのほとんどを陵駕できてしまいます。立体的なものの触覚だけは今のところなかなか難しいかもしれません。しかし、IoTの進化でそれも克服できるかもしれません。いずれにしても、そうなれば、iPadのようなタブレットは、メタ思考ツールに昇格します。

【多様な比較スキル】

社会科の授業で、マップというアーカイブを活用する授業が展開していました。マップはズームなどが自在にできますから、地図をいろいろな角度から見ることができます。写真やコメントなども取り込めますから、多様な比較というスキルを瞬時に活用できる思考ツールとしてiPadが活用されていました。モノやコトを理解していくには、多様な比較というスキルを活用して差異や共通しているところから分析していくのは定石です。

しかし、iPadがなければ、多様な比較をするのに時間がかかります。限られた時間では限られた情報でしか比較ができませんから、理解の範囲は偏りがちになります。そこを補うために講義を行って知識で補強していくわけです。

昨今の風潮として、知識を記憶することが軽んじられていますが、知識自体は今も昔も大切です。知識を憶えることが目的なのではなく、目の前の限定的な情報で足りない部分を補うのに知識が必要なのです。それを極端に知識だけでモノやコトの理解の像をつないでいくことは、危険極まりないということは、ちょっと考えればすぐに気づくことでしょう。iPadの活用は、知識のみの偏向的理解を回避できるのです。こうして考えると、なぜ伝説の教師が注目されてきたのかは、よくよく理解できます。

【選択の最適化スキル】

オールイングリッシュの授業で、グーグルドライブなのかアプリなのか私にはわかりませんでしたが、機能としてはクリッカーが活用されていました。選択肢から正解を選んでiPadの画面をタッチすると、クラスメンバーの選択の分布が瞬時にグラフ化されるソフトです。

選択肢が正しいかどうかというより、どうしてこういう偏差が生じるのかを議論するところに価値があります。ものの見方や考え方を相対化し、何が妥当なのか信頼できるのか正当なのか、選択の最適化のスキルを獲得できます。

選択肢問題ができることも重要ですが、人生の岐路に立った時、どちらが最適なのか、妥当でも正当性がなかったり、信頼性があっても妥当でなかったりというようなジレンマに立たされるのが実際の問題なのです。

【引き出すとは因果関係あるいはカテゴライズのスキル】

生徒と直接対話しながらICT教育のあり方について、学ぶスペースが設けられていました。iPadを通じて先生方とどんなコミュニケーションをとっているのか、実際に画面に取り出してもらいながら説明してもらいました。資料や課題はPDFで送られてきます。記述の解答はメールで送るとコメントやメッセージが書かれて返ってきます。記述はノートやワークシートにそのまま手書きで書いてもよいし、メールで返信してもよいということでした。

ノートやワークシートに直接書き込んだ場合は、iPadで写真を撮ってメールで送るということです。おもしろいと思ったのは、ICT活用の普及で、合理的・効率的になったことによって、先生とのコミュニケーションの量、勉強の量がかえって増え、密度が高くなっている実感があるということでした。一日の時間は限りがありますから、量が増えたということは、質が向上したということになります。

これはおそらく先生の側も同じでしょうから、コミュニケーションと学びの量が増え、結果、教育の質が豊かになっているという質感が学内にあふれているということでしょう。

それは、模擬授業などの見学が終わってからの全体会議で明快に伝わってきました。オープンキャンパスを運営した教師と生徒が全員が、前に並んで、参加者の質問に答えている姿から、その雰囲気が醸成されてきました。

【ロールモデル化スキル】

数学の作図の授業には、実に興味深いものがありました。生徒一人ひとりが作図を終えたら、例によって、写真を撮り、先生に送ります。すると、ロイロノート・スクールに送られてきた解答をすべて白板に投影してシェアします。級友の書き方がシェアされるわけですが、それができるのは「オープンマインデッドネス」があることが前提です。また、この学びのシステムは、「システム思考」の一端を担います。互いの作図の方法の是非は論理的に「コミュニケーション」することが必要となります。

当然、このICT教育は協働するというチームワークも前提になっています。そして極めつけは、一人の生徒が代表して作図の実演をするところまでいくことです。この一見何気ない学びのシステムも、ロイロノート・スクールのアプリをiPadに搭載していないとできないのです。かりにアナログでやったとしたら、とてつもない時間がかかります。

それよりも重要なことがいくつかあります。この環境がなければ、全員の作図の方法がシェアできないので、代表者が実演することの意味が違ってきます。正解の発表という意味になってしまうのです。また、チームワークも必要ありません。それぞれができたかどうかだけが問題になります。オープンマインデッドネスも必要ないでしょう。

すると「シェア」「システム思考」「コミュニケーション」「オープンマインデッドネス」「ロールモデル」の5つの要素が揃わないのです。潜在的にあっても、可視化・顕在化していなければ意味がないのです。それでは、5つの要素が揃うとどんな意味が生まれるのでしょう?この5つの要素こそ、学びの組織を形成する重要な要素だったのです。

§4 次の次元へ

桜丘のICTオープンスクールに参加して、本当に驚愕でした。こんなにも学びの組織が浸透しているがゆえに、生徒一人ひとりが論理的にコミュニケーションをしたりプレゼンテーションするシステム思考が育っている姿に遭遇したのですから。

チームワーク、オープンな信頼関係、自分たちも先生方と一緒に学びの組織をつくっているのだという自信などがメンタルモデルとしてシェアされているわけです。昨今、国際比較で、自己肯定感が低い日本の生徒が多いと言われている中で、それを覆すような創造的自信を誇りにしている生徒がたくさんいるのに衝撃を受けました。

しかし、本当の「桜丘ショック」は、最後に待っていました。見学終了後、感動に満たされた気持ちで全体会に臨んだら、いきなり「導入に関する『先進校』としての役割は終わりました。このような形のオープンスクールは今回で終わりです。次の次元へ進みます。進んだらまたご招待します」と宣言されてしまったのです。

桜丘のICT教育の妙技をやっと知ることができたと思ったその瞬間に、学校としては、これでは満足いかないから、次のステージへと、パラダイムシフトしますと言われたのです。これが本当の「桜丘ショック」だったのです。

桜丘のICT教育 次の次元へ!桜丘ショック!はまだまだ続く(2)

§2 ロイロノート・スクールの効用

高2の政治経済の授業は、「学習を通じた創造的思考力一歩前」くらいまで到達する授業でした。「一歩前」と表現したのは、模擬授業の時間設定が30分だったからです。もしiPadやロイロノート・スクールなどのネットワークを活用しなければ、5時間以上かかる授業です。それを30分でやってのけるのですから、時間内にカリキュラムが終わるかどうかという不安はもはや払拭できるでしょう。

テーマは「パリ同時多発テロの背景を洞察して問題解決の正義判断をする」というものだったと思います。まずは、youtubeなどから、「同時多発テロ」を市民などが映した動画を見ていきました。担当の先生は、動画を活用することで「リアリティ」という思考のスキルをつかったのです。リアリティとは感覚ですが、思考する場合、問題発見をするときにはより「リアリティ」に近い状況を生み出すスキルとしての「リアリティ」がポイントになります。

ここにはリアリティのコペルニクス的転回がありますね。目の前の木とスケッチしている木とサイバー上に動画としてアップされている木とどれがリアリティがあるのでしょう。もし見ているだけではなく、実際に触るというスキルを活用すれば、リアリティを最も強烈に感じるかもしれません。

しかし、見ているだけなら、スケッチしている木や動画の木のほうがリアリティを髣髴とさせるかもしれません。つまり、リアリティとはイマジネーションを現実よりも強烈に脳内に映し出すことなのです。ちょっとカント的発想ですが、コペルニクス的転回ですから、そういうことでしょう。

これによって、生徒は、好奇心が立ち上がり、オープンマインデッドネスになり、なぜだろうという問いが生まれてきます。この状態をマインドセットといいますが、この3点セットがそろうと、生徒は探究思考の旅に没入していきます。議論は白熱します。次々と疑問が生まれます。フロー状態という没入状態はもちろん、モチベーションが内燃している状況です。

マインドセットされている状態をつくったうえで、先生はパリ同時多発テロの背景である欧米中心主義や、宗教問題、化石燃料の覇権の問題など、事実をキーノートを活用しながら情報提供します。ここは「知識」「理解」の段階ですね。もしマインドセットがないまま、いきなり講義に入ると、傾聴しない生徒も現れたでしょう。しかし、興味と関心が湧いて、自分事として意識できる状況ができていますから、生徒は真剣そのものです。

そして、このパリ同時多発テロについて、世界の人々の感じ方や物の見方の情報を提供します。時間があれば、検索してリサーチする機会を設定したでしょう。生徒はiPadを持っているので、PDFをメールで送ればよいのですが、ここはプリントを活用しました。なぜでしょう。それは、iPadは鳥瞰するのが苦手な道具だからです。

こういうところに、授業デザインの妙技があるわけですが、ともあれ、その多様な情報から、自分ならどれに共感し、どれに批判的になるかなど選択の意思決定をする段に進みます。

先生は、自分がなぜそれを選んだのか生徒それぞれがロイロノート・スクールに書いたものを、プロジェクターで映し出してシェアします。そして、プレゼンしながら、互いの考え方や感じ方の違いをシェアしていきます。

また、ロイロノート・スクールはウェブ上に保存できますから、他のクラスの生徒の考えをシェアすることもできます。このような多様なものの見方のシェアこそ、なぜどこが自分とは違うのだろうというリフレクションになるわけです。そしてこのとき、選択判断をしている自分という基準が現れてくるのです。「自分軸」の自己認識とでもいいましょうか。

「学習を通じた」というのは、実はこの「自分軸」を見出す過程だったのです。この「自分軸」があることによって、意思決定ができるし、自分独自の創造的な発想が生まれてきます。ここまでを「創造的思考力一歩前」と表現したのです。ここまでくれば、あとは生徒自身が創造の翼で飛翔するでしょう。

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