佼成学園女子 新しいキャリア教育(1)

2014年1月13日(月)、成人の日。この日、佼成学園女子では、平成23年度卒表生のために「成人を祝う会」を催した。思春期教育である中高のキャリア教育、就活のためのキャリアガイダンスは、現代社会でいつも話題になるが、成人を迎える期間のキャリア教育は見過ごされがち。

特に今の大学生は「さとり世代」と揶揄されるばかりで、中高と社会人のギャップをブリッジするプログラムは積極的につくられていない。そのミッシングリンクをつなぐ新しいキャリア教育の先進校が佼成学園女子である。「成人を祝う会」の第一部を取材した。(by 本間勇人:私立学校研究家)

中高の思い出を胸に 第二の卒業式をともに祝う

平成23年度卒業生たちは、今度は子供から大人に旅立つ卒業式として成人式を母校に集い祝った。

卒業生の50%以上が出席するという得難い成人式。学園と同窓会挙げて、「21世紀の社会を支えていく皆さんが、立派な成人となってもらうことを心から期待しています」とエールを贈ったのである。

教頭江川先生は、成人式当日に開催して、これだけ卒業生が戻ってきてくれるのは感無量だと語る。そして、実はこの成人式は、OGが卒業して初めて会うというわけではなく、中高を卒業した後、社会に出るまでの間支援するシステムの一環だというのである。

学校長は、挨拶の中で、人生の節目節目に、原点に還れるモニュメントを見つけてほしいと、アイデンティティのコアを創ることを再び強調した。さりげなく、語られたモニュメントの話であるが、それが卒業生の心にすっとはいるのには、理由があった。

それは、自分を見つめ、他者を受け入れ、社会の痛みに心ふるわせ、さまざまな思春期の問題を佼成学園女子時代に、教師と生徒、生徒と生徒がいっしょになって乗り越えてきたからである。つまり、自分たちの原点がここにあるという気持ちでつながっていたからである。

理事長は、日本をはじめとする先進諸国の少子高齢化の悩みの話をし、その問題解決の基本は、温かい家庭をつくることである。子どもに恵まれ愛というベースをつくってほしいとしみじみ語られた。そして、男の子は男子校に、女の子はこの女子校にと宣伝し、会場はドッと沸いた。

もちろん、OGは、自分の原点と学校の理念が結びついているわけだから、自分の家族もそのクオリティに結び付くのは当然ですよという返礼の気持ちで受けとめたのであった。

多くの方が、成人した卒業生に、21世紀の主役として、ゆるぎない信念と決意で、心強く優しい大人へ成長してほしいと祝辞を語った。

卒業生は、中高時代お世話になった先生方に御礼の言葉をかけたり、同期どうし、中高時代の思い出話に花が咲いたりしていた。

ところで、卒業生の中には、海外に留学中で、出席したくてもできないOGもいる。その卒業生の母親から、昨年末江川教頭あてに長文のメールが届いた。佼成学園女子の思い出とその後の卒業生の成長がわかる内容なので、紹介させていただく(一部省略)。

 

江川昭夫先生
 
御無沙汰しております。日増しに寒くなっておりますがお元気に御活躍のことと存じます。高校時代は由里杏、また家族一同、一方ならぬお世話様になりましてありがとうございました。
 
あの頃のことを考えると、言葉にならないほど懐かしくなります。江川先生には最初から最後までお導きいただき、本当に素晴らしい師に娘が巡り合えたことを、幸せに思います。今日も思い出したのですが、先生に留学コースをあのように強くすすめていただかなかったら、私も娘をニュージーランドに一年出すことなど考えられなかったのです。 
 
実は、早稲田の国際教養学科では一年間の海外留学が必須となっておりまして、この9月からイギリスのヨーク大学のロースクールに由里杏は留学しております。来年の6月末には帰国する予定でおります。そして大学三年の後期からまた早稲田で勉強し、四年では佼成で教育実習をお願いしております。そのあとは、今のことろ大学院進学を希望していますが、ここからはどうなるかまだわかりません。
 
国際教養という学科の性格上、自分の専門を見つけなければならないわけですが、娘は法律の専門家を目指し勉強しております。法律学科ではないので、色々苦労も多いようですが、医事法に興味をもっているのです。・・・・・・大学生になってから日本では、睡眠時間が数時間しかとれないほど勉強している様子ですが、イギリスではポーカーなど寮の友だちに教わったり、ダンスパーティーにも一度ですが行ったようで、彼女なりに楽しみを見つけているようです。少々遊んでばかりいるのかと親としては心配にもなりましたが、ポーカーはひとりではできないわけですし、友だちができたということで喜ぶことにしました。お酒はまだ飲んだことはなく、パブに行くときも、ココアを頼み、皆にあきれられたと言ってました。

・・・・・・ユリアが早稲田の後輩向けに書いたエッセイがあるので、以下に添付します。とりあえず、読んでやってください。

(以下添付)
 
現地に到着してから3か月、毎週課されるリーディングの量に驚くこともなくなりました。初めのうちこそパニックになり通しでしたが、ヨークの美しい空気と心あたたかな人々に囲まれ、自分の興味分野を思う存分学ぶことのできる幸せを味わっています。寮生活にも慣れてきました。フラットメイトは皆年上で学部も異なり、キッチンで出くわしてもなかなか話が弾まず気が重いこともありましたが、最近ようやく立ち話が長引くようになりました。一緒に食器洗いをしたり、ケーキを食べたり、この間はポーカーという賭け事ゲームを教えてもらい、夜通しコインに見立てた厚紙の切れ端を真剣に賭け合いました。初心者である私にいかにポーカーのルールを教授するかという些細なことにも腰を浮かせて議論してしまうのが何ともイギリス人らしいなと感心し、また嬉しくもありました。フラットメイトだけでなく、素敵な出会いもこの短期間にたくさんありました。優しいバスの運転手さんや今日一日何があったか聞いてくれる食堂のお兄さん、私の拙い話に注意深く耳を傾けてくれる先生やクラスメートの存在がこの留学を日々奥深いものにしてくれています。日本ではひとりになろうと静かな場所を捜し歩くことの多かった私が、ヨークに来てから人と話し、笑い合う心地よさに気づきました。 
 
以上です。これを読んだとき、ユリアも大人になってきた事を感じまして、とても嬉しく思いました。英語中心の佼成で培った体験がなければ、このイギリス留学はとてもではありませんが、やっていけなかったと本人がいつも申します。ヨークでは一週間に、先生の60分の講義のあと、それに関するディスカッションを数日後に2時間させられるそうです。専門的なことを学ぶことができるのは大きな特権と思いました。佼成で留学体験がなければ、ユリアはまず、語学や、異国での生活に慣れるという事にほとんどの時間を費やさなければならず、ロースクールには入れてもらえなかったと思われます。
 
さきほど、ユリアと連絡がとれたのですが、江川先生のことをしきりに懐かしがっていまして、おめにかかりたいようです。ただ佼成でしていただける成人式もイギリス滞在中という事で本当に残念なことに出席できません。

・・・・・・あと娘がくれぐれも江川先生に過労になられないようになさってほしいと伝えてほしいと申しておりました。先生の御身体のことを気遣っておりますのは、いつも働いている先生のお姿を思い出すからなのでしょう。
 
本当に過労になられないようになさってください。
 
どうぞ良いお年をお迎えください。・・・・・・娘のことなどを思い出していただいて心より感謝しております。

青山由里杏さんは、佼成学園女子在学中に英検1級を取得している。学園時代に励まされ、背中をおされで、自分でもチャンレジしたときに育まれたアイデンティティが、大学でも、そして将来の自分にとっても生かされていることが伝わってくるメールである。

 

 

 

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