文化学園大学杉並が日本の教育を変える(3)

生徒主導型学習の授業 試行錯誤進む

小島先生:グローバルコースや2015年から実施するインターナショナルコースの授業は、生徒主導型学習になります。しかし、これはすべてのクラスで、つまり学内全体で行っていくのが目標です。ですから、今から私たちは準備をしています。先ほど青井教頭から、最近接発達領域あるいはScaffolding(足場)をつくる学びの理論について説明がありましたが、私たちは、同時にそれを授業で試行錯誤しています。実際に今から授業を見に行きましょう。

小島先生:1つの授業だけでは、試行錯誤の浸透度合いを実感していただけないと思いますので、2つ見てみましょう。まず英語の授業をご覧ください。ちょうど始まったところです。まずは教師が自ら英文を読んで、生徒はシャドーィングしています。I DO-YOU WATCH(教師が説明し、生徒は受け身)の段階から始まっています。

そして、少しずつ生徒が自分で学んでいく段階にシフトしていきます。I DO-YOU HELP(教師が説明したり行為したことを、生徒同士がペアワークなどでシェア)の段階に移っていますね。

このあとがおもしろいですよ。今までは互いに助け合う足場づくりをしていたのですが、今度はさらに電子ボードをその足場づくりのツールに加えます。この段階は、YOU DO-IHELP(生徒が自ら考え、教師はそれをサポート)にシフトしています。

教師は、電子ボードを駆使して、動画や音声を流します。また同時に質問の文を流していきます。これは理解を助ける「最近接発達領域」ですね。聴き終えてから、質問をするより、聴きながら質問の文を見ていく方が、聴く時に集中しながら同時に考えることにもなります。

今度は、理科の授業を見に行きましょう。すでに“I DO-YOU WATCH→I DO-YOU HELP→YOU DO-I HELP”までは終わっているかもしれません。“YOU DO-I WATCH”の段階に入っていると思います。やはりそうですね。知識の基礎やテキスト、動画などについては導入部分で情報提供し、テーマについて考える理解の過程の問題を、グループワークしているところです。

パイオニア植物の乾性遷移の特徴を、火山灰の土地などの環境からまずは議論しているところです。

環境の違いによっても遷移の原理は変わらないのかどうか、その固有の性質を考えるために、「比較」をして「推論」するという「理解」のステップから「応用」の思考のレベルに上げています。

この「乾性遷移と湿性遷移」について説明する問題は、将来インターナショナルコースでは、英語でやりとりします。

Explain ”xerarch succession” and “hydrarch succession” of landplant community.

となりますが、このやりとりは、今文科省が紹介している世界標準のモノサシであるCEFRのレベルでいえば、B1B2のレベルになると思います。英文法とかライティングとかバラバラの英語教育ではなくて、思考をサポートする足場として、英語力そのものが重要な役割を果たしていくようになります。

そして最後に自己評価。1点刻みの自己評価ではなくて、CEFRのようにどの思考のレベルまで自分は到達できているのか、ジャンプするにはどうしたらよいのかなど振り返るわけです。

松谷先生:授業をご覧いただいて、いかがでしたか。大事なことは、いつまでも教師がI DOをしているのではなく、勇気をもって、生徒を信頼して手放すことです。I WATCHと見守る段階に到達しなければならないのです。生徒が黒板の方を向いている同じ姿勢も、講義を聴いているだけのときと、自分で先生の説明を聞いたり動画を見ながら考えているときとでは、見た目では違いは分かりづらいですが、内側は全く違っています。

外発的動機づけから学ぼうとする力が湧いている内発的動機づけが働くようになっているのです。この内発的動機付けこそ、私が常に語っている「燃えよ!価値あるものに」につながる教育の根源だと思います。

グローバルコース、インターナショナルコースのシラバスづくりに、私たちが一丸となって取り組むことによって、本校が生徒主導型学習の拠点になると確信しています。

 

 

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