聖学院 本物教育で人気(2)

授業でプロジェクト型学習を展開

中学部部長の大野先生は、高1の日本史の授業で、プロジェクト型学習を展開している。もちろん、通常の授業であるから、一年中、プロジェクト型学習を行っているわけではない。11月前半までは、一斉授業で基礎知識を「リンク」させながら、テキストや資料集に書かれている近現代史を「理解」する。「リンク」「理解」を促進するスキルは、「因果関係」「比較」「分類」などの学びの視点。

実は、結論先取り的になってしまうが、一斉授業がすでにプロジェクト学習の準備になっているのである。たしかに、テキストや資料集などに書かれている溢れ出る情報を「リンク」させて「理解」していくのだが、その「リンク」のさせ方は「因果関係」「比較」「分類」などの視点に拠る。

11月まで、大野先生は、この学びの方法を体得しながら知識をリンクさせ定着そして「理解」を広げていく。つまり、生徒たちに「方法」と「内容」の両方を体得させていたのである。もしも「方法」を学ぶのが抜け落ちた場合、その「内容」の「理解」は「暗記」と呼ばれるものに石化する。「理解」に命を吹き込むのが「方法」。大野先生は、その微妙な違いを仕掛けていく。

そして、さらに11月半ば以降になると、与えられたテーマについてチームで、掘り下げていく。最初は、図書館で文献リサーチやiPadでネットサーチをする。というのも教科書や副教材を超えてテーマの背景を調べるためだ。

しかし、ここで大切なことは、いったい何を調べるのか?ということに生徒は直面する。ただ闇雲に調べていくわけにはいかない。チームで話し合う時に、マッピングしたり図を書きながら議論していくのだが、何を議論するのかというと、結局何気なくマッピングや図に書き込んだ矢印や線の意味をはっきりさせていくことなのである。

そのときに結局は学びの視点がカギとなる。

調べながら、まとめながら、つまり拡散と収束の議論を繰り返しながら、結論に行きつく。今度は、なぜその結論になったのか、プレゼンするためのアウトプットを編集する段に進む。図書館からパソコンルームに移動することになる。

プロジェクト型学習は、アクティブであるため、空間も変容する。この学びの空間の変容こそ、学びの過程を可視化する作業である。空間の変容を逆算すれば、自らの学び方を学べるのである。がしかし、一般に、学校でこの学びの空間をデザインする教師は少ない。

聖学院では、大野先生を中心に、オリエンテーションや農村研修においても、この学びの空間のデザインを議論する教師が多い。学びは、柔軟でなければならないが、柔軟かどうかは、学びの空間が変幻自在であるかどうかにかかっていると言えるかもしれない。

プレゼンのための編集過程は、一斉授業の時とも、リサーチのときとも大きく違った。ロジカルな思考に聞き手に効果的に伝えるために伝える内容の「引き算」の議論が加わっていた。「共感」を創り出すことに集中し始めていた。このレベルに達するときこそ、大学受験勉強の日本史をこえる瞬間なのである。

大学受験勉強は、自分の理解したものをアウトプットすればそれで十分だが、グローバル市民を育成する聖学院は、アウトプットした情報は「共感」を呼ばなければ意味がない。自分たちが編集した内容が「共感」を生み出すことができるかどうか。その思考のレベルを、世界各国が試みているグローバル教育では、「メタ認知」と呼んでいる。またそれは最終的に「選択」決定を迫られる。

そして「選択」には責任が伴う。果たしてこれで「共感」を生み出すことができるのかどうか、チームは失敗を恐れず決断する。この失敗を恐れずチャンレンジ出来る責任を引き受けることこそ、オンリーワン・フォー・アザーズの精神。聖学院のグローバルリーダー像である。

 

 

 

 

 

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