工学院 PIL×PBLを全面展開へ(3)

PIL×PBLの授業のプロトタイプづくり始まる

カリキュラムイノベーションチームは、議論をしているだけではない。同時に自らの授業でPILとPBLの授業のモデルやプロトタイプづくりも行っていく。生徒の学力をさらに伸ばすために、当然その結果として、大学進学実績が伸びるようにという信念は当然固い。

国語科主任の斎藤先生は、高2の「古典常識」という授業で、PIL×PBL授業に挑戦した。古典常識の知識を記憶するだけではなく、そこから日本の文化や生活の何が見えるのか、異文化とのつながりがどう見えるのか、生徒の世界を読み解く眼を養う授業となった。本来の古典の勉強と同時に、大学入試における古典の問題で得点も取れるような一挙両得の授業デザインとなった。

プロトタイプづくりには、3時間の授業を活用した。齊藤先生とパートナーが授業に参加し、授業終了後、プロトタイプのデザインついて議論し、改善していくというプロセス。1時間目は、まずはいつもの授業スタイル。そこにPBLにシフトするタイミングがあるかどうか確認するところから始めた。

1時間目は、いつもの授業であったが、すべてIDO/YOUHELP(Iは教師、YOUは生徒)の問答で構成されていた。生徒は資料を調べながら、ワークシートに答えを書き込んでいく。そのとき、齊藤先生は、資料のどこに書いてあるかを問うのではない。午前や正午の中に生き続けている江戸の時間を表示する漢字はあるか、そのことは何を意味するのか問いかけていく。

そして、生徒の側から、文化も生活も違っているのに、なぜ今の文化に昔の暦や行事のなごりがあるのか質問がでる。そのとき、齊藤先生は、その質問については2時間目以降考えていこうと提案して授業を終えた。

授業終了後、齊藤先生も見学していたパートナーも、手ごたえを感じた。今回はYOUが単数だったけれど、あれがYOUたちという複数に問いかけられれば、ピアインストラクションやプロジェクト型の授業(PIL×PBL)に即シフトできる。しかも、生徒自身が問題を発見しているのだから、興味・関心・好奇心がわいているところからスタートできるタイミングであると導かれていった。

2時間目も最初の時間は、生徒が自分で調べてワークシートに書き込んでいく作業を行いながら、ますます今と昔の違いに興味をもち始めたところで、では、使う時期などは違うけれど、暦が存在していることは共通なのだから、まずはその暦の共通点から語り合うことにした。2時間目終了後、齊藤先生は、生徒のワークシートから情報を収集して、テータを整理した。

そして3時間目を迎えた。いよいよ考えを深める問題から出発。ただし、自由に話し合いなさないではなく、理由をまず考え、それからその理由の理由を考えるというように、ハードルを二段階にわけた。また、全員が考える機会を確保するために、まずは各人の考えをポストイットに書き込み、それをシートにはりつけてから、チームの意見をつくるために議論をしていった。

さらに、それらの議論を通して、今後日本とグローバルな社会について考える時に、大切な対概念について議論し、プレゼンすることになった。

授業終了後の齊藤先生とパートナーとの振り返りの対話では、生徒たちが古典常識の言葉の背景を議論していく過程で、根本的にぶつかり合う、「普遍と特殊」「社会と個人」などの人間や社会の本質的な問題に到達したことを確認。そして、ここまできたときに、はじめて教科横断的なカリキュラムが組めるというヒントも得た。

プロトタイプを構成する要素としては、シークエンス、テキストや問いなどのリソース、学びの道具、そしてなんといても、生徒がどんな知識をどこまで掘り下げることができたのか評価できる思考コードをいかに組み合わせるか、1つのモデルを提示できるのではないかというところまで、一気呵成に上昇気流に乗った。

 

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