今年になってグローバル人材育成時代が急激に現実的になってきた。日本語IB(国際バカロレア)200校構想、スーパーグローバルハイスクール100校構想、達成度テスト構想など、次々グローバル教育政策の構想が議論されるようになった。
しかしながら、日本の教育全体からすれば、そのようなグローバル教育政策のイメージがつかない。大学入試センター試験を廃止して達成度テストへと言われても、目の前の高校生には影響があるわけではなく、知識の定着を中心とする今までの教育を変えなければならない必然性のリアリティがまだまだない。
時代の要請と現場の教育の葛藤の風が吹く中、創立以来、新しい時代を生きる、豊かな知性と教養を備えた国際性豊かな若き淑女の育成を実践してきた富士見丘の先進的な教育について、サタデープログラムを進化させている先生方に聞いた。by 本間勇人:私立学校研究家
左から、遠藤央先生(進路指導部長)、岡本泰子先生(国語科主任)、大島則男先生(教頭)、久保誠一先生(プロジェクト統括リーダー)、民辻眞貴子先生(参事・GA部長)、石丸義之先生(数学科主任)、長島公聖先生(生徒指導部長) 4本の柱のプロジェクトチームのリーダーの先生方が一堂に会した。
サタデープログラムを進化させるプロジェクトチーム
今年、グローバル教育のベース「自主研究5×2」の発想をより進化・充実させるためにサタデープログラムをコーディネートするチームが結成。「自主研究『5×2』講座」、「グローバル関連講座」、「科目選択制(進路関連)講座」、「特別講座」の4本の柱を構築する各チームが知の交流を生み出し知の沸騰を生んでいる。
プロジェクトチームのスーパーバイザー久保誠一先生は、今回のプロジェクト活動を通して、今まで自分たちが実践してきた多様な教育活動が、意識してこなかったにもかかわらず、グローバル教育の時代にぴったり適用していて、むしろ牽引していることを改めて受けとめたと語る。
久保先生:富士見丘では、多くの知識を点のままバラバラにしておく授業はやってきていません。生徒たちが網の目のように互いにつなげていけるように、導いています。というのも独りよがりな網の目では困ります。基礎基本というのは、授業で扱う知識の網の目が、学問的基準に準拠しているということです。この点は、本校を指定校に認定しているロンドン・キングズカレッジにも高く評価されています。
さて、この網の目、大島教頭は知のネットワークと呼んでいますが、生徒がこれを拡大していくと、さらに発展的に探究していきたくなる関心や好奇心が芽生えます。そこからは、大学入試や学習指導要領のミニマムな範囲を超えて新しい知識の網の目を自分で増やしていくことになります。
富士見丘では、久しく生徒1人ひとりの関心や好奇心を大切にする環境を整えてきました。その結実の1つが、サタデープログラムで、土曜日に「生徒の主体的な学び」を促す一日にしてきたのです。
通常の教科授業で培ってきた基礎基本を土台に、生徒を主体とした「興味があること」「やってみたいこと」を追求していきます。ですから、あえて通常の教科授業は行わないのです。土曜日に行われる学習プログラムは、本校独自のオリジナルです。新たに体系立てた「4本の柱」を年間を通してプログラム策定を行っていることが大きな特徴です。
そして時代は変化します。毎年決まったものを行うのではなく生徒の興味やニーズ、学年、そして「今」と「将来」を見据えたプログラムを策定したうえで実施してもいるのです。