今年4月から、戸板の教育の進化は驀進の軌跡を描いている。スーパーサイエンスコースとスーパーイングリッシュコースの準備とそこからバックキャスティング手法で、中学から高校までのシラバスイノベーション、そしてそれに伴う授業イノベーションと加速しているのである。
グローバル教育のビジョンにむかって、あらゆる教育活動が有機的につながりはじめているため、その進化の密度とスピードは尋常ではない。授業イノベーションのプロットタイプをつくっている市川先生(日本史・生活指導部長)のさらなる授業の進化/深化/真価を取材した。 by 本間勇人:私立学校研究家
さらりと、授業の流れを板書するところから始めた市川先生に声をかけられた。
今では、生徒もこのような「相互通行型授業」が楽しく、だから興味と関心、好奇心もわいてきているようです。そこから広く深く知識と知識を結びつけて考えていくことの重要性も実感し、何よりその経験値を高めています。
その証拠に、6月に取材したときは、PIL型(2人で話し合う)の相互通行授業で1時間、PBL型(チームで議論しながら知の編集をする)の相互通行型授業で1時間と、別々に行われていた。それが今回は、個別学習塾の講師と生徒になったつもりで2人で話し合うというシチュエーションの相互通行授業とグループでテーマについてまとめる相互通行授業がセットになっていた。
2時間で行っていたものが、1時間に統合されているということは、密度が高くなったからに他ならない。生徒も次にどのような展開になるか予想しながら授業に参加できるので、いわゆる従来型の受け身の授業とは、学びの当事者意識が全く違う。
しかし、今回はさらなる挑戦が仕掛けられていた。それは、400字の論述型のまとめ、つまり授業を通して到達した結論をレポートするというところまで行くというのである。
400字のレポートであるから、推敲して完成させるのは次の時間に持ち越されたが、PIL型相互通行授業とPBL型相互通行授業によって、考える過程の可視化がなされ、それを400字でレポートするという新しい戸板の授業のプロットタイプが完成したことを意味するのである。
したがって、社会科の今井先生、原田先生をはじめ、仲間の先生方が研究授業よろしく、見学に訪れていた。今井先生によると、
市川先生のように全サイクルを展開する相互通行型授業は、すべての教員が完成させているわけではないのですが、2人で対話する機会を埋め込んだり、グループワークを埋め込んだりと、パーツは授業に導入し、相互通行型授業の試行錯誤は着々と進んでいますということである。
かくして、説明会で映し出される、戸板の未来の授業のプロセスは、現実化しているのである。
教育改革だとか教育革命を唱える学校は多いが、かけ声だけで終わるところも少なくない。だから、受験市場は、少し様子を見てから学校選択判断をしようとなりがちであるが、これだけ実際に改革の動きが活発であると、たしかに教育の進化は加速し、生徒の才能は開花し、実績もでるであろうという期待感は高まる。
授業見学していた原田先生は、
授業イノベーションの実現には、一教師の力だけではできません。そこで、生徒が相互通行型の授業に参加するのだから、私たち教員も協調していかねばならいと決意しました。ミーティングを密に行っているわけですが、相互通行型授業で大事なのが、リサーチであるのと同じで、ミーティングの前につくったリサーチペーパーを持ち寄ることを大事にしています。
それでこのような授業を見学した時のリサーチペーパーをつくり、授業をデザインする視点を共有しているのです。
建学の精神「知好楽」を時代の要請に適合するビジョンとして現代化し、そのビジョンをもとに日本の教育を変えるリーダーになると強く使命感を抱いている先生方の教育活動の勇姿は、混沌とした未来社会に生きる勇気を与えてくれる。戸板の進化が加速するエネルギーは、授業イノベーションに取り組んでいる教師のチャンレンジ精神にこそあるのだ。