学びの過程が価値を生む
倉橋先生:かけがえのない価値は、聖パウロ学園の教育全体で作られます。生徒1人ひとりがこの総合的な教育の中で、それぞれに居場所を見つけて、それぞれの大切な価値を見出すわけです。一般には、その学びの場はイベントや部活とされ、授業はあたかも知識を優先する場として説明されがちです。
しかし、聖パウロ学園の場合、この豊かな自然や宿泊施設、イタリア修学旅行などでかけかがえのない価値を発見する準備は、授業の中にも埋め込まれています。かけがえのない価値ゆえに、発見もまたそう簡単ではありません。あらゆる教育のチャンスをその発見の場にしたいと思っています。
高橋先生:そこだね。授業の中で、そのような価値を生み出すチャンスは、聖パウロ学園ではどうしているのだろう。
松原先生:わたしは「情報」の授業も担当していますが、ICTを活用すると、授業は自ずと学びの過程が重視されます。パソコンやソフトなどの基本的な活用法や検索エンジンの活用法や情報倫理など教えることも確かに多いのですが、いずれにしても実際に使ってみなければならない。
そこには21世紀ユネスコ教育委員ではないですが、learning by doingという学びの過程が現れます。自ずと試行錯誤になりますし、検索ができるわけですから、わからないことは調べることになります。同じ道具をつかっているわけですから、グループワークにもなります。そうなるとある意志決定が行われますから、当然その提案を編集し、プレゼンすることになります。
このような学びの過程が頻繁に循環されていくのが、「情報」の授業ですね。ただ、ここが肝心なのですが、この学びの過程は、「情報」の授業の理解のために行われるだけではなく、他の学びの領域にも適用されているのです。
高橋先生:イタリア修学旅行はその典型だね。生徒たちは、秋に旅立つ前に、相当調べている。そして中間プレゼンを頻繁に行っている。パソコンやプレゼンテーションツール(パワーポイント)を駆使している姿には、その学びの過程があったわけだね。
松原先生:そうだと思います。生徒の調べる糸口は様々です。まずは興味と関心のある場所や食物、建築、芸術などなどから、調べていきます。その過程の中で、友情や将来の仕事や、学び方、世界の問題など自分がそこで役立つかけがえのない価値を見出す生徒も多いですね。かけがえのない価値はイタリア修学旅行に限るわけだはないですが、私は「総合の学習の時間」で、この事前の調べ学習を担当していますから、かけがえのない価値は、学びの過程がかなり大切な要因になっていると確信しています。
高橋先生:いや確かにそうだ。与えられた教科書をくまなく暗記したとところで、そこからかけがえのない価値を多くの生徒たちが見出すとは考えにくい。学びの過程は、冒険であり、人生の旅にも思えてきたよ。