富士見丘学園には、訪れた人も驚く、風光明媚な最上階ペントハウスラウンジがある。季節によっては富士山が見えるほど。ランチのスペースであるが、実際には、自習のスペースや各テーブルにグループに分かれて対話しながら理解を深めていくカフェスタイルのプログラムが行われる空間。
最近では、留学生、海外姉妹校の校長先生、大学の先生、企業人など異文化異分野の人との連携プログラムが頻繁に催され、いわばダイバーシティカフェが根付き広がっている。 by 本間勇人:私立学校研究家
(ダイバーシティカフェ開始前の留学体験スピーカーとミーティングする大島教頭)
「夏休み学校見学会」の一環として、「高2生徒が語る<私の3ヶ月・6ヶ月留学>」が開催された。留学に興味と関心がある在学生が、先輩の話を聞いて、対話をするというアクティブラーニングでもある。受験生・保護者も熱心に耳を傾け、質問していた。
今回は、「学年横断 理科<科学的思考力講座>」のアドバイザーで来校していた大学生の留学体験の話も聞けた。まさにダイバーシティ。
まず6人の留学体験者がスピーチをした。話の内容は5つ決まっていた。
①留学先の様子
②留学で楽しかったこと
③留学で苦労したこと
④留学で気づいたこと
⑤コミットメント
というのも、ダイバーシティカフェは、気づきが生まれる仕掛けが埋め込まれていて、まずは傾聴し、好奇心、そして違いに気づくところからスタートする。
傾聴した後、各スピーカーのもとに集まり、お茶とお菓子も用意されて、対話が始まる。傾聴しているときの表情と対話のときの表情の違い。このメリハリが大切だ。まずはリサーチ、そして疑問が生まれてくる瞬間の重要な体験だからである。
大島教頭は、
「富士見丘は、この生徒が自ら問いを立ち上げる体験を積み上げていくために、頻繁にダイバーシティカフェを行っています。好奇心を深堀する探求につなげるには、自ら問いを立ち上げることが必要だからです」
と語る。すべてのスピーカーと語り合いたいところだが、チャンスは2回。これも、傾聴の時に、自分は何を聞きたいのか判断するために制限をあえてマインドセットしているという。
そして、最後は聴き手だった生徒が、気づいたことや自分も留学するためにこれからどんな準備をするのか、スピーカーの先輩にお礼も兼ねてメッセージを贈る。
大島教頭は、
「これは重要なプレゼンテーション。スピーカーが最初のフォーマットに沿った話から、カフェでかなり具体的な話を明かす。いわば自己開示がおこるわけです。すると、傾聴して、質問をする聴き手側も、自己開示していくわけですが、この過程こそが共有・共感という体験です」
と語る。世にシェアや共有の重要性はよく語られるが、なかなか具体的な方法論にまで踏み込んで語られることはない。しかし、グローバルな時代は、価値観や文化などが違う人々が互いを尊重し、理解を深めていく必要がある。
それには共有・共感というプロセスが極めて重要。大島教頭が、ダイバーシティカフェをグローバル教育の基礎プログラムとして位置付けている理由が実感できた。