富士見丘 SGH研究発表会(2)探究活動組織

富士見丘中学校高等学校(以降「富士見丘」)は、SGH認定校の活動を通して、教師も生徒も探究活動をベースにしてきた組織であることを可視化するに到りました。一般にSGH校といっても、中高一貫校の場合、その活動は高校に限られますし、高校生も全クラスが参加するというわけではないのです。

ところが、富士見丘は中高全員が、SGH指定校の条件を土台にする探究活動を行います。もともと自主探究「5×2」という生徒1人ひとりの好奇心にもとづいたテーマを探究していく活動はあったのですが、それが、個人の探究活動から、クラスや学校全体にコラボしながらの活動になり、さらに大学や非営利団体などと連携して探究活動は研究活動に転ずる広がりを学内外の広い範囲につながったのです。

学内外とつながることによって、相互にコミュニケーションをとらなければなりませんから、その活動の全貌が可視化されることになったのだと思います。

§2 思考実験から始まるアクティブラーニング型授業

「サスティナビリティ基礎」というSGH授業では、小林和之著「おろかものの正義論」から、1000人を犠牲にしたら、すべての国民の暮らしが豊かになるという魔人の誘いに応じるかどうかという「思考実験」問題をまずは、個人で考え、次にグループディスカッションするというアクティブラーニング型授業が展開していました。

この思考実験は、まずは個々人の判断基準を確認しています。そのうえで、グループディスカッションすると、それぞれの判断は、主観的な段階から相互主観の判断に次元があがる仕掛けになっています。

全体の幸福のためには少数の犠牲はやむを得ないとする功利主義的な判断もあるし、少数の犠牲を強いる国は果たして幸せなのかという問い返しをすることもありえます。生徒は、「思考問題」の段階では、後者の判断が多かったようです。

しかし、これは「思考実験」だから、応えやすいのですが、実はこの問題は、フィクションではなくて、すでに世界中で起きている出来事。では、犠牲を出して全体が幸福になっているような国はどこだろうかという新たな問いが投げかけれます。

生徒たちは、苦しみます。なぜなら、それはアメリカや日本という先進諸国のあり方を問いかえすことでもあるからです。自分たち自身が、他者の犠牲のうえに幸せに生きているかもしれないということに気づいてしまうわけです。

このような授業は他にも実施されていましたが、基本はグローバルイシューが、自分事として結びついてくることに気づくところを大切にしています。外から与えられた客観的知識を、まずは主観的に捉え、今度はグループディスカッションによって相互主観的にさ捉えかえして深めていくうちに、客観的知識の背景や歴史的経緯が開かれて、その文脈に立っている自分に気づきます。

そのとき、はじめて真の問題性に気づき、解決しなければならない意志が芽生えてきます。

ここから生徒1人ひとりの探究活動は始まるのですが、ここまで導くコーチング手法のアクティブラーニング型授業が、富士見丘のSGHの授業だったのです。

 

 

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