八雲学園 共学化とラウンドスクエアで進化加速(1)

八雲学園の教育の進化が加速している。今春共学化し、ラウンドスクエア加盟校として動きが本格化しているのである。共学校になったこととラウンドスクエアに加盟したことが相乗効果を生み出し、多様性の次元が他に追随を許さない豊かさを生み出すことになった。by 本間勇人 私立学校研究家

5月ゴールデンウィーク直後に訪れると、わざわざ近藤校長に迎えていただいた。そして、すぐにこちらへと、案内された場所は、端午の節句の鎧兜が飾ってある場所だった。3月にはひな壇が飾ってある場所である。つい3月までは女子校だった八雲学園に端午の節句の人形は、やはり新鮮だった。

近藤校長も、まるでいっぺんに男子のお孫さんが誕生したかのように、満面の笑みを始終たたえていた。そして、男子の入学がこれほど有効であるとは想像以上であったと語った。世界に通用する男子とは、近藤校長はナイト(騎士)をイメージしているということだが、同時に世界で通じるナイトは、その前に日本人でもあるから、武士道という文化も顧みてほしいと。

なるほど鎧兜は、日本文化の精神の1つである武士道の象徴なのである。しかも、実は武士道という精神を可視化して世界に浸透させたのは、新渡戸稲造という私学人が初めてだったのであることを思えば、私学の系譜が連綿としてつながっていることに改めて驚愕したのである。

 

さらに感銘を受けたのは、この鎧兜には、ナイトや武士道の背景にある欧米と日本の文化体験やグローリーダー育成という新しい八雲の教育ビジョンが明快に表現されているということなのだ。やはり、近藤校長の一貫した強い意志に感動しない人はいないだろう。

中1の男子生徒には、高3の生徒がチューターの役割も果たしている。ここにも教育ビジョンが実現されているのである。そして何より、共学校としての授業にそれが現れている。

近藤校長は、「今まで経験してこなかった成長の速度が違う男子の存在は、新しい人間関係の文化を形成する契機となる。グローバル教育とは英語教育のみならず、多様性に対する寛容性の育成が根本で、それがグローバルリーダー育成の土壌ともなる」と語る。

授業には、上記の八雲学園の教育ビジョンがすべて埋め込まれているのであるが、その中でも、C1英語×PBL×ICTという21世紀型教育は基礎である。

今回見学させていただいた中1は4クラスともすべて数学を行っていた。数学で、ICTを使うシーンがあるとは想像していなかったが、八雲学園では、ここでもICTを導入していた。3月までは、そもそもタブレット型PCを1人1台持っているという学年はなかったが、4月から中1は早くも1人1台の環境になった。

授業におけるPBLとは、スパンの長い探究学習とは違い、気づきをどれだけたくさん得らるかというのがポイントである。その気づきがやがて、自分の世界を広め深堀していく好奇心や創造性に火をつけることにつながるのである。

中1のこの時期であるから、講義と演習が中心であるが、授業の後半で、ロイロノートなどを活用して、自分の数学的思考プロセスを振り返り、先生と共有していくリフレクションタイムがあった。これは将来eポートフォリオの役割にも変容する大事な体験であると菅原先生は語る。

菅原先生は、「共学化へのシフトやラウンスクエアとの連携は、たしかに大きな動きで、改革とも言えるが、j授業そのものは、すでに21世紀型教育にシフトしているから、ICTの導入などのアップデートはしているが、そこが改革によって混乱するということは全くないのです。むしろ今まで実践してきたことの正当性が検証されたという実感を抱いています」ということだ。

そして、昨年から月2回くらい行っている理科体験教室をはじめとするイベントは、口コミで広がってきたのだが、広がるというとは、授業の魅力が評判となっていることの証明である。今年も5月19日(土)の理科体験教室はあっという間に満席になってしまったということだ。

しかも、昨年に比べ男子の参加率が激増したという。PBL型授業体験の背景には、チームで行うことが多いので、毎時間グローバルリーダーの種づくりをする目的もあるのだろう。このように、あらゆる教育シーンに、教育ビジョンがきちんと収められているために、八雲学園の教育の質は加速度的に豊かになっていくのである。それが魅力として口コミで広がっているのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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