工学院 思考を工学する授業(2)

一般に生徒は授業の後半、疲れてくるものだ。ところが島田先生の環境工学の授業リズムは序破急なのである。静かなブレインストーミングのあと、タイミングよく第2の問いが投げられる。その瞬間生徒の内発的モチベーションはトルネードとなって燃えあがる。

第2の問い

第2の問いは、授業の前半で沸々とわいてきた農業の問題の解決策を考えよということだが、国の立場と自分の立場両方から考えるという条件が付けられている。ここが、実は環境工学の発想なのであると、授業終了後のインタビューで、島田先生は奥義を説明してくれた。

ただ問題を解決しなさいでは、道徳的な解決策で終わる可能性がある。環境や農業問題は、自分事としてとらえることが重要であるが、一方で国や世界単位の大きな問題でもある。だからこそ工学発想として、実際的有用性が必要になるし、そのためには経済的な基盤も考慮しなくてはならない。そして何より技術的実現可能性である。

工学の夢は、夢を見るよりも実現することのほうが楽しいとは、Hondaの経営する茂木のサーキット場に掲げられている本田宗一郎の言葉であるが、まさにそういうことである。

そういえば、島田先生は、自動車部の顧問でもある。毎年、自動車部の生徒は、茂木で行われるエコカーの競技に、自作のエコカーを持参して参加しているという。

今回の授業のクラスにも自動車部に所属している生徒が4人もいた。彼らは、エコカーを作りながら、有用性、コスト感覚、実現可能な技術と日々格闘しているわけだ。

ノートを通しての対話

第2の問いに対して自分の考えをノートに書き込んだら、生徒は島田先生のもとに走る。教師と生徒が互いに考えをぶつけ合う対話の瞬間となる。思考大会さながら、授業は盛り上がる。

ベストアンサーと評価された解答は、生徒自らが黒板に書き込んでいく。パワーポイントによる授業から黒板にシフトした時、洞窟深く迷い込んでいた思索が、光に導かれて外に出たときのように解放感でいっぱいになった。

 

 

 

 

 

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