戸板 カリキュラムイノベーションへ (2)
今回のカリキュラムの再構築は、改訂次元ではなく、たしかに大転換ともいうべき事態であることは、作成途中の大量なマトリクス表を拝見して、実感した。
今回のカリキュラムの再構築は、改訂次元ではなく、たしかに大転換ともいうべき事態であることは、作成途中の大量なマトリクス表を拝見して、実感した。
戸板中学校・戸板女子高等学校(以降「戸板」)は、来春4月から高校1年生からスーパーイングリッシュコース、スーパーサイエンスコースを開設。同時に、そのハイレベルのコースにつながるように、中1から「レディネス」を開始する。
そのためのプランは、カリキュラム全体の再設計という営みに凝集する。4月から、教師一丸となって、カリキュラムのデザインに取り組み、コンセプト段階から一歩進んで、具体的な設計の見通しが立ったという。進化する戸板のエンジンともいえるカリキュラム設計についてインタビューした。(by 本間勇人:私立学校研究家)
※左から原田啓志先生(進路・学習指導部)、大橋清貫先生(教育監修理事)、今井誠先生(入試広報部部長)
チームワークのあと、各チームのプレゼンテーションが行われた。そしてファシリテーターの黒川教頭が振り返りのコメントを語った。そのとき、IB(国際バカロレア)のディプロマのモデルと戸板の英語科のプレゼン内容を比較対照しながら展開。IBモデルはグローバルスタンダード。しかし、それをそのまま踏襲するのはなく、比較対照し、共通点と違いを共有し、独自に発展させた。ファシリテーターが整理や判断の規準として何を活用するかは、創造的コミュニケションにとって重要である。黒川先生は、IBの研究をしていたのである。
ブレストで互いのストックを棚卸しができたところで、2つのチームにわかれて、英語科のリソースをまとめてみようということになった。黒川教頭はファシリテーターとして、各チームを行ったり来たりしていた。このファシリテーターの極めて重要な役割についてはあとで腑に落ちる。そして、スーパーイングリッシュコースは、オールイングリッシュであるから、先生方の議論も英語で考えながら行われるようになっていった。
平成26年度高校1年生から、戸板中学校・戸板女子高等学校(以降「戸板」)は、スーパーイングリッシュコースを新設する。一般教科も英語で授業をするというオールイングリッシュのコース。英語力認定テストもTOEFLなどグローバルスタンダードのものに挑戦していくという。
IB(国際バカロレア)と決定的に違うところは、海外大学だけではなく、国際教養系の国内の大学準備にも強いコースになるという点。破格のコースになることは間違いない。それだけに、スーパーイングリッシュコースにつながるように、中学段階での英語のシラバスやカリキュラム、授業も大きく変わる。そのビジョンを議論する英語科の会議に密着した。(by 本間勇人:私立学校研究家)
左から、大泉洋幸先生・黒川道雄先生(高校教頭)・明石道子先生・斎藤敏子先生・平林則昭先生
戸板中学校・戸板女子高等学校(以降「戸板」)は来春からシラバス及びカリキュラムを変えていく。高校からスーパーイングリッシュコースとスーパーサイエンスコースを開設。しかし、根本的には授業のパラダイムを20世紀型から21世紀型にシフトするところから徹底する。
グローバル教育、イノベーション教育のベースはリベラルアーツ。リベラルアーツの拠点は、対話やディスカッションという他者と言葉を交わす授業。課題解決のコラボレーションをしながら理解を深め、学ぶ意欲を高めて勇ましい高尚なる精神を育成していく。まずは歴史を通して世界を考察する社会科が21世紀型授業に着手した。市川先生(日本史)の挑戦を紹介したい。(by 本間勇人:私立学校研究家)
ペンタゴンモデルは、しかし一巡して閉じてしまうわけではないという魅力的な議論に発展していった。しかも、そのループへの階梯の上昇は、はじめから生徒自らでできるわけでもない、やはり細かいトリガークエスチョンをなげかける教師の役割がカギになるという議論にもなった。
スーパーサイエンスコースのねらいは、佐藤充恵先生によると「未来の研究者を育てることです。日本ではまだまだ女性の社会進出、とくに科学者の進路をたどる比率は少ないですから、それではグローバル教育とはいえないですよ。その点戸板は女子校ですから、女性の研究者の礎を築くことができると思います」。
佐藤先生ご自身、産休中であるにもかかわらず、息子さんを連れて、会議に臨んでいた。佐藤先生の心意気に頭が下がると同時に、女性にとって心地よい職場を形成している戸板の経営の先進性に、女子教育の真骨頂を感じ入った。
戸板中学校戸板女子高等学校(以降戸板)は、2014年に、高校でスーパーサイエンスコースを開設する。そのために理科の先生方は、コンセプトデザイン、科学的発想を生み出す授業デザイン、実験とICTを結合した新しい理科のシラバスの開発など議論している。さらに、ロールモデルもつくり、試行錯誤の準備に余念がない。その画期的理科教育のイノベーションの一端をご紹介しよう。(by 本間勇人:私立学校研究家)
■ Can Do リスト風に
戸板の社会科の考える授業を、科全員でシェアするということ自体、実は他校ではなかなかないことである。今回の戸板の社会科の会議に立ち会って、開放的な対話が、いかに多角的な視点を共有でき、複眼思考ができるのか、実感できた。