桜丘 桜華祭が映し出す「学習する組織」(3)

リアルタイムにビジョンを共有

創立者稲毛多喜は自らの生活体験から校訓「勤労」と「創造」を生み出した。この姿勢は、今の桜丘の生徒が、体験からボトムアップスタイルで判断に到達してプレゼンテーションに到る学びの姿勢に見事に継承されている。

「勤労と創造」は「たゆまぬ努力と創意・工夫が新しい自分を作る」という意味であるが、それを今の生徒たちのアイデアを呼び覚ますように「コンパス」と「翼」という言葉でシンボライズしている。

なぜシンボライズしたのか。それは言葉や理念は世界を変えるほどパワーがあるという信念を持っているからだ。

(英語のスピーチコンテストで、ギターの演奏までしてしまうプレゼンテーション)

この言葉と理念は、言うまでもなく生徒のみならず、桜丘の教師も突き動かす。時間割編成上、学年ごとにあるいは学年を超えていっぺんに集う時間をつくるのは難しい。言葉や理念は世界を変える。しかも共通体験を大切にしている桜丘である。先生方は知恵を絞った。

平校長は、「朝のショートホームルームを10分伸ばして、30分使えるように、創意・工夫しました。ホームルームや朝読書に活用する時間ですが、学年の中で、学力やビジョンの共有で開きがでてきたと教師どうしが気づいた時、すぐにコンパスタイムの時間にします。コンパスタイムは、全学年同時間で活用していますから、学年を超えてリアルタイムに情報を共有することもできます。学年ごと、あるいは全学年でリフレクションをする時間を共有できるのです」と。

21世紀型スキルや21世紀型教育の大事な要素に、リフレクションとコラボレーション、コミュニケーションという活動があるが、その時間を全校生徒がリアルタイムに共有できるのである。

(感覚をシミュレーションするセンサー制作に挑戦するコンピュータ部員)

すでにある地図の道をたどるのではなく、未知の都市、森、山などで、自分の道を切り拓くには、その都度遭遇する課題を、コンパスを活用しながら創意工夫をしながら発見していく。

それは、いまここで解決・判断しなければならない。コンパスタイムとはまさにこのビジョンの共有体験をつくりだすシステムである。これもまた教師の創意工夫から生まれたのである。

不動の星に向かって翼を広げるのであるが、いまここでの瞬間はいろいろな問題や悩みが噴出する。平校長は、「そこを桜丘学校全体で力を合わせ創意工夫して乗り越えていく。コンパスタイムは、その象徴的な時間です」と語る。

平校長に桜華祭を案内していただきながら、お聞きした話の中で、決定的だったのは、ボランティアに対する活動の重視であったが、そのときこんな質問をした。「今日本でもIB(国際バカロレア)が話題になっていますが、プレゼンテーションや世界の痛みについて探求している桜丘は、ある意味すでにIBのディプロマと同質の教育を行っていますね。外国の方もたくさんお見えになっていて、グローバル教育も充実していますし。」

すると、「21世紀型スキルやグローバル教育を念頭においてはいます。IBも一つの教育の在り方として、先生方もリサーチしています。しかし、もう少し独自のそれでいてグローバルスタンダードに耐えられる教育を、先生方と生徒たちと創意工夫していきたいと思っています」と遠くに眼差しを向けた。

すると

Twitter icon
Facebook icon