共立女子 進化する「特別教養講座」(1)

共立女子では、テストもない、単位も関係ない、受験にも直接関係ない授業がある。2006年から、国語と社会と理科の教師3人及び生徒4人で始まった「特別教養講座」がそれである。

今ではコラボレーションする教師も倍以上になり、参加する生徒は20人を超える。テーマによってはもっと増える。共立女子は通常の「教科学習」と「特別教養講座」の間には、比類なき多様な行事や部活がある。

「教科学習」と「行事」の粋を集めたとも呼べる「特別教養講座」。この講座をスタート時からプロデュースしている池末和幸先生、金井圭太郎先生、桑子研先生に聞いた。(by 本間勇人:私立学校研究家)

左から池末和幸先生(社会)、桑子研先生(理科)、Iさん(高3)、金井圭太郎先生、渡辺眞人校長

特別教養講座のプロトタイプとリファイン

2012年の特別教養講座≪「海からの生命」と「素粒子から宇宙に迫る」≫は、2006年の講座に比べれば、コラボした教師や参加した生徒の数も、フィールドワークのエリアも、探究テーマも規模はかなり大きくなった。

しかし、金井先生に聞くと、その基本型であるプロトタイプは変わらない。その一大特色といえば、桑子先生は「外に出ることです」と即答。そして、その理由は興味付けにあると。金井先生も池末先生も「楽しいこと。特にプログラムをつくって生徒とともに学ぶのが楽しいからやっているのです」と。

もちろん、金井先生は「ファニーという意味ではないですよ、興味を抱くという意味です」と。すると桑子先生が「共立女子の生徒は、自分の中に興味付けが生まれたら、あとはどこまでも探求していきますね。ですから興味付けが一番大切だと思っています」と。

この講座のプロトタイプの成立の原点は「興味付け」「楽しい」にあるということは明快だった。

この特別教養講座は、実施後「kyoritsu 研究報告」という紀要にまとめられる。もう6冊に論考としてまとめられているが、生徒との興味付けや生徒と共に学ぶ楽しさを生み出す創意工夫が、毎年行われるたびに振り返られプロトタイプは洗練されている。プロトタイプ、リファイン!プロトタイプ、リファイン!・・・の軌跡こそ、共立女子の学びの設計の構えである。おそらくあらゆる授業や行事のプログラムも同様だろう。

ただ、本講座は、外に出ること、教科、科目の枠を超えて総合的に探究する力を養い、大学の学際的な研究に結びつくところまで目標となっている。

桑子先生は「一般の授業も興味付けは大事にしています。理科の場合は実験もありますから、基本は授業も特別教養講座も同じですが、外に出たり、教科横断型というのは、また次元が違う学びなのです。一教科や一科目以上に深まっていく度合が違うのです」と。

金井先生も「特別教養講座は、受験に直接関係ないというのは、入試にそういう科目がないからですが、ここで養われたものの見方や考え方は、当然大学入試の問題を解いていくときにも大いに役立ちます。実際私も受験に役立つような授業も担当していますが、知識を活用できるようにするものの見方や考え方の質感は同じです。特別教養講座のやりがいは、受験の指導にも負けないぐらいあります」と。

特別教養講座の受験に対する効用について、詳しく聴こうと思ったが、すでに世の中が支持し評価している生徒の進路決定の関心の高さと視野の広さ、そして大学進学実績があるから、それ以上聴くことは愚問であると判断した。

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