グルコミで知性と人間性を拓く
順天では、2000年からLHRのほとんどの時間を「グルコミ(グループコミュニケーション)」に当ててきた。
今回高2の「グルコミ」では、「学部選択―必要な資質を考える―」というテーマでディスカッションされていた。
最初はまず個人ワーク。各学部を選択した場合、どのような資質が必要になるのか、9の資質から上位3位を、自分の考えとしてまとめた
次にグループとしてまとめる。自分の考えと友人の考えの違いが鮮明になり、グループとしての客観性を付与するディスカッションが盛り上がる。
たとえば、
体育の学部の場合、運動への関心と探求心がぶつかっていた。しかし、体育学部を選択する際、運動への関心があるのはむしろ当然で、学問として体育を捉えるにはやはり探求心の優先順位が高くなるのではないか。
医学部の場合、読書力や発想力、持続力がでていた。そして、医学部は大学院まであり、学部的には、まずは基礎的な知識や技術を地道にみにつけていくことが重要。発想力は、むしろ大学院で新しい医術などを開発する時に必要になってくるのではないか。
理工学の場合、探求心と持続力がぶつかっていた。その際、理学部は理工学とでは違うのではないか、研究とものづくりの違いは大きいのではないか。また探求心がないと持続力がでないから、この項目は分けられないのではないか。どちらかというと探求心かな・・・。
経済の場合は、政治の在り方や未来の社会の在り方を設計することにつながるから、筋道を考えられる資質が大切。
などなど、侃侃諤諤。ファシリテーターのロールプレイをしていた高谷哲司先生によると、
「中1から5年間このクラスのグルコミを担当していますが、コミュニケーションのレベルはたしかに上がっています。ディスカッションする時に話す量も格段に増えています。しかし、大事なことは質的なレベルが上がっているということですね。それは個人のコミュニケーションレベルというより、むしろ互いに話すことによって、自分の気づかなかったことをたくさん発見し、それを受け入れながらよりよい内容を組立てらるということを理解できているというところでしょうか。」
高2の生徒のコミュニケーションの論理的な部分は、比較・差異の検討、その根拠をきちんとすり合わせていたが、実はその前提として人を思いやったり受け入れたりする人間関係を形成する力も同時に育っていた。
このある意味知性と人間性の両立は、たまたま高谷先生のクラスがそうなったのかと思って尋ねたところ、
高谷先生は「いや、わたしたちは全員、このグルコミのための研修やこのための基準書のようなテキストを読んで研究しています。ですから、ある一定の水準をキープしていますし、中高6年間あるいは高校3年間で、知性や人間性が両立できるコミュニケーションの習慣ができるようにプログラムを設計しています」ということだった。
プログラムの設計は何が基準になっているのだろうか?コミュニケーションのレベルが向上するには種も仕掛けもあったのである。