「グルコミ」で知性も人間性も成長するわけ
論理的にコミュニケーションする知性も人間関係を創り出すためにコミュニケーションする豊かな人間性も中高6年間、高校3年間で大きく成長するのには、理由があった。
「グルコミ」のプログラム設計に基準が織り込まれていたのである。
副校長片倉先生によると、
≪コミュニケーションは言語以外にも各自の性格や行動特性など複合的な行為です。ですから、論理的に話せればそれでよいというのではなく、話し合っていると温かい雰囲気が生まれてくるということも大事な要素です。
刑事ドラマ「相棒」が人気なのも、冷静で論理的に聡明な性格の右京と人情派で熱血漢でお人好しの亀山が二人で一人前である相棒を演じ合っているから見ている方も力も入りユーモアも理解できるのだと思います。
ドラマは、役者が1つの性格や行動特性を演じますが、現実はわたしたちは、複合的なロールプレイをして生きています。
論理的で人情も兼ね備えた、もちろんあるときは使い分けられなければならないのですが、そういうコミュニケーションをグルコミでトレーニングしています。
そしてそのために、「エゴグラム」という米国心理学の「交流分析」の研究の成果に基づいた指標を活用しています。
表にあるように、CP・NP・A・FC・ACという5つの特性のバランスを身に着けていけるように、各指標を伸ばすプログラムが「グルコミ」なのです。
うちの生徒は、最終的にはNP・A・FCの指標が高くなります。高2のワークショップでは、互いの信頼関係を前提にしているという点で、NP(思いやりが強く出る)がうまく機能していました。
また、論理的に選択判断をしていたので、A(理性的)の指標も機能していたわけですね。ときどき、問いで用意した項目の正当性に鋭い批判を投げかけていた創造力あふれる生徒もいましたが、それはFC(直感力・創造力)の要素が働いていたわけです。
しかし、最初からバランスよく5つの指標が使えるわけではありません。中1のころはどうしても道徳的な「ねばならない」という行動特性が強い、つまりCP(責任感)ですね。必要な要素ですけれど、これだけが強くなると、コミュニケーションにストレスがかかります。
そこをほぐしていくにはNPを伸ばす必要があります。相手を受け入れて言いたいこともきちんと言葉にするという型「たしかに・・・しかし・・・」の有効性をトレーニングするところからスタートするのはその一例です。
そして中3になると、先ほど見て頂いたように、型ではなくて実際にいろいろな場面でいろいろな言い方で、互いの信頼を形成するアサーショントレーニングをしていきます。≫
「グルコミ」のプログラムを拝見したが、一回ごとにプログラムがワークシートになっている。外部研究機関とコラボして制作しているということもあり、無限と言ってよいほどプログラムはたくさんあった。
エゴグラムのそれぞれの指標ごとにプログラム集ができているのである。また、その学年の特性や時代の情勢などを考慮して新作プログラムもあった。その多様な中から生徒の成長に合わせて選択している。
たしかに、「グルコミ」で生徒の知性も人間性も成長するわけである。しかし、片倉先生はこう付け加えるのも忘れない。
「グルコミはベースではあります。10年以上積み上げて有効性も証明されていると思います。しかし、大事なことはこのベースの上に、様々な教育活動という実践があるから生徒は大きく成長するのです」と。