近藤彰郎会長 新春インタビュー(2)

【2014年の私立学校】

   <今こそ「感性教育」を> 近藤彰郎会長新春インタビュー

   「国の教育と私立学校の教育の役割は違う」

(チベットTVがダライ・ラマ法王の八雲学園訪問の録画を世界に発信

→“His Holiness talk at Yakumo Girls High School_Japan”)

近藤先生:昨年11月、縁あって八雲学園はダライ・ラマ法王をお招きできました。八雲学園はもちろん宗教学校ではないですから、宗教家としての法王をお招きしたのではないのです。

むしろ法王ご自身が、宗教を超えて世界の平和と非暴力を訴えていらっしゃるし、その活動がノーベル平和賞受賞にもつながっています。まさにグローバルリーダーの中のグローバルリーダーという本物の人格者です。

八雲学園の生徒は、本物の存在者に出逢うことができ、本当に幸せだったと思います。

たしかにいろいろな幸せな偶然が重なって、急に訪れてくださることが決まったわけですが、その実現に向けて俊敏な動きができるのは、私立学校が民と民の信頼関係をベースに動いているからです。

これが、国の教育と私立の教育の大きな違いです。国の教育制度では、1つの学校がダライ・ラマ法王をお招きしようということはなかなか難しい。教育委員会が決めない限り動けないし、教育委員会が一つの学校に限ることは、公平性の観点からいっても難しい。

国の教育、直接には文部科学省や教育委員会は、あくまで日本という国家を守る絶対的な使命を帯びています。国と国の関係が前提です。民と民の信頼関係は、民の問題です。ですから、制度上、ダライ・ラマ法王のような国際的な人物をとなると、そうなってしまうのは、むしろ当然です。

ですから、公立学校の組織は、国の政治に左右されるのも理解できるところです。公立学校それぞれが全く独自の判断をするのは難しい。

(ニューヨーク国連本部ギャラリーにあるノーマン・ロックウェルのモザイク画。あらゆる宗教・民族を超えて平和を祈る象徴となっている。)

私立学校も普遍的な国家の法は遵守しますが、国に従うのではなく、法の下において、建学の精神に基づいて自己判断をして俊敏に動けます。

この制度上の違いは、公立学校と私立学校の運営に大きな影響をもたらします。学校を運営するのは、公立であれ私立であれ、同じ教員免許を有している教師です。ですから、違いはないように見えるでしょう。実際、世の中も、メディアも、もしかしたら、法の運営者もその違いを明快に意識していないかもしれません。

というのはその違いまで、法律で成文化されているわけではないからです。公立学校は、制度上どこも同じ形で動いています。ですから、自分の学校に入れ込んで、独自の文化を生もうとはしません。本当は制度の範囲内で主体的に教員が動くことはできます。

しかし、転勤があるわけですから、違うことを行うと、引き継ぎもうまくいかないでしょう。そういう情況でモチベーションがあがるということは、組織の性格上稀なことです。

ところが、私立学校の場合は、ほとんどの教師が定年までいます。ですから、時代の要請に従って、変えるべきところは変え、継承すべきところは継承するという強い意志があれば、目標に向かって、独自の動きができます。

もちろん、建学の精神の不易流行を実践するには、強い意志と絆が必要です。それがないとときに私立学校も運営上うまくいかなくなる場合もあります。しかし、強い意志と絆を形成できれば、すべての私学が再生することは簡単なんです。そういう組織になれるように、協会も応援しているわけです。

今回のダライ・ラマ法王が来て下さるというチャンスを実現するには、生徒に本物の存在者に出逢って欲しいという強い意志を共有したからこそ、直前におもてなしの準備ができ、実現の段取りとなったのです。

私は、生徒は本物の体験を通してのみ成長すると思っています。ダライ・ラマ法王のような本物の存在者に生徒が会えることは、本物のグローバル教育だろうと意志を共有した教師の協力体制こそ本物教育だと思いませんか。

学力を伸ばすことは、教育の総合力の1つであるということはお分かり頂けたと思います。

それには本物教育の環境が必要であり、その環境を活かせるかどうかは、公共的な機関においては、制度が決定的に重要なのです。そして、制度は完全なものではありません。法解釈上明らかにしなければならないこともありますし、もしかしたら国に制度変更を迫るようなときもあるかもしれません。

それは、一つの私立学校の力ではできません。私立学校が一丸となって協力していく必要があります。それが日本私立中学高等学校連合会や一般財団法人東京私立中学高等学校協会のような団体の役割なのです。

 

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