文化学園大学杉並中学・高等学校は、今年4月から大胆にもグローバルコースを新たに設置する。たんに英語教育を強化するということではない。すべての教科、教育活動が、世界各国が推進している21世紀型スキルを駆使したグローバル教育に転換するということである。教師の教授主導型から生徒の学び中心型に変わる。
ここにきて、やっと文科省も、グローバル人材育成のためにスーパーグローバルハイスクール(SGH)構想を実施する段になったが、このSGH構想のベースになっているのも、21世紀型スキルを活用するグローバル教育。だが、しかし、今月にわかに500校を招いて、はやくも2月14日にその構想案を提出せよと。その中から50校ほど選抜するという。準備不足であることは、火を見るよりも明らか。
ところが文化学園大学杉並は、10年以上もかけてパラダイム転換の準備をしてきた。不思議なことにSGHのマニュアルには、教師の変容を審査の評価基準に入れている。2013年まで、一斉授業をよしとし、生徒中心主義を頑なに拒んできた日本の教育現場。それを年が明けた瞬間に変容せよとは、リアリティを感じることができない。
そんな日本の教育を、文化学園大学杉並は変えるロードマップをデザインした。同校が変える日本の教育について聞いた。by 本間勇人:私立学校研究家
チーム文杉:左から小島浩司先生(入試広報部長)、相澤まきよ先生(理事・事務局長)、松谷茂先生(校長)、青井静男先生(教頭)
どうして変われたのか!
松谷先生:もともと本校は「感動の教育」を実践してきました。「感動」は実に1人ひとりの心に生まれながら、そこに集う人々に一気に広がります。文化祭のファッションショーを昨年本間さんにもご覧いただいたので、わかると思いますが、パフォーマンスする側も見る側も、「感動」は一体となって渦のようになっていたでしょう。
21世紀型教育は、クリエイティブな時代とも言われますが、ファッションや音楽のような芸術だけではなく、学びにもアートがあると思います。そのアートの力を教育活動全体に浸透させてきた本校の教育の基盤が、大胆なグローバル教育に転換できる根本だと思っています。
相澤先生:ファッションというと、日本ではすぐにブランド商品に結びついてしまうかもしれません。しかし、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで、世界を「おもてなし」するときに、その気持ちを表現するコスチュームは、商品というより文化的な価値の意味合いが強いでしょう。そのときになって、ファッションがいかに文化を表現し、芸術性の高いものか、かけがえのない価値あるものか実感すことになるでしょう。
世界に目を向けると、ファッションがいかにアートであるかがわかりますよ。
毎年海外のファッションサイト「Fashionista(ファッショニスタ)」が、世界のファッション学校ベスト50を発表しています。John Galliano(ジョン・ガリアーノ)やAlexander McQueen(アレキサンダー・マックイーン)を輩出したイギリス・ロンドンのCentral Saint Martins(セントラル・セント・マーティンズ)やMark Jacobs(マーク・ジェイコブス)やTom Ford(トム・フォード)を輩出したニューヨークのParsons(パーソンズ)、ベルギー・アントワープにある名門のAntwerp Royal Academy of Fine Arts(アントワープ王立芸術アカデミー)、本学と海外留学プログラムを行っているアメリカ・ニューヨークのFashion Institute of Technology(FIT)がランクインしています。
実は、2013年本学は7位に評価されたのですが、セントマやアントワープのファッションスクールは芸術性の高い大学であることはイメージしやすいでしょう。そのような大学と肩を並ばせて頂いて光栄です。そして、文化学園大学杉並もその文化遺伝子を受け継いでいるのです。
ですから、ヨーロッパに研修のために訪れるのも、本物のアート体験をしてもらいたいからです。それからヨーロッパでアートというと、たんなる美学ではないのです。歴史に表れる人間の葛藤や社会の問題との関係がとても深いのです。欧米ではアートはリベラルアーツ(教養)でもあるのです。
そして、欧米のアートスクールは、ディスカッションが大切なんですね。あらゆるものは「言葉」で対話されます。教育も同じです。本物のグローバル教育を、ヨーロッパ研修で生徒は体験してきたのです。