八雲&エール 国際交流 クラシックとロックで(3)

いよいよコンサートが開催。YakumoとYaleの音楽交流は盛り上がった。共鳴もした。共振もした。互いに称える拍手と「イエー!!」「ヒューヒュー!!」というエールもホールに響き渡った。なぜエール大学だったのか。なぜハーバードでもコーネルでも、プリンストンでもなかったのか。

近藤校長や榑松先生は、謙遜して偶然だと語る。しかし引き合うには、響き合う共通の音楽コードが必要である。奇しくもコンサートは、その引き合う「Y&Yコード」を互いに奏でる結果となった。

“Whim'n Rhythm”メンバーは、シックな黒のドレスにつつまれて、最上階から現れた。

コーラスは、第1部で、9曲、第3部で、6曲、アンコール1曲で、全部で16曲歌われた。静かに激しく、愛と情熱と、何より彼女たちが背負った使命が響きとなって八雲生に染み入った。

第2部では、八雲生によるパフォーマンス。ドリル部の登場は、エール大学の学生を歓喜させた。なんてったって、米国文化が、大好きな日本に流れ込んでいるのを肌で耳で感じることができたのだ。ドリル部の表現は、自己表現であると同時、他者にエールをおくるサービス(奉仕)、支援の表現。幸せは、他者を応援できるときに訪れるという、アメリカのエリートの使命がそこにはある。Y&Yコードの1つがここで響き合った。エール大学生の絶叫は、さきほどまでのシックな歌声とは違い、チアリーダーそのものだった。

そして、グリー部の登場。初デビューということもあって、八雲生もエール大の学生も、嵐のような絶叫エールで迎え入れた。

パフォーマンスは大成功。部員の達成感は頂点に達していただろうし、きっと部員は激増するだろう。ミュージカルは、言うまでもなく、アメリカの文化そのもの。アメリカンドリームと世界の痛みを背負う民主主義国家アメリカの精神の塊。八雲のウェルカムの精神にも通じる。ここでもY&Yコードが響き合った。

吹奏楽部の演出もすてきだった。吹奏楽は、イベントには欠かせない音楽を奏でる。イベントの始まりの扉はマーチによって拓かれる。互いにたたえ合う国歌や校歌を演奏しもする。そしてフィナーレは明日への架け橋に目を向ける。

しかし、今回は、クラリネットアンサンブルと管打アンサンブル。小さな編成で、吹奏楽部の繊細で強い信念とエンターテイメントの洒落っ気を披露。強いアメリカ、スマイルのアメリカ。知性のアメリカ、ケアのアメリカ。八雲のウェルカムの精神に通じる。ここにもY&Yコードがあった。

高3生の司会者はもちろん、大いにコンサートを盛り上げた。Y&Yコードは、このオープン・マインド!

さあ、そしていよいよ声楽部とエール大学のコーラスチームのアンサンブル。これまで、たがいに楽譜を交換し、歌詞の意味と旋律との関係を議論してきた。今回、その精神を共に歌った。ハーモニーは美しかったが、それは異文化の相互理解が大前提。理解をするために何をするのか。歌詞の意味を理解するコミュニケーションツールとしての言葉ではなく、言葉には行動や気持ちや使命をいっしょに行うとするアクションとしての役割がある。ここにも深い強い美しいY&Yコードがあった。

こうして再び、第3部で、“Whim'n Rhythm”のコーラスが6曲歌われた。ミュージカル、映画、ジャズスタンダードなどからシックなアレンジでポップスが歌われたが、その雰囲気は、どこかイギリスだったしどこかアイリッシュな感じだった。前日のロックやディズニーの曲とは全く違う清楚な雰囲気。

実は、6曲目は“The Hammond Song”だった。メンバーの一人が、この曲だけは説明したいと語りだした。

この曲は“Whim'n Rhythm”の精神を象徴する歌だという。1701年創立のエール大学は、1968年までは男子校。アメリカの歴史の中で、1969年から女子も入学できるようになったという意味は深い。八雲学園も女子校である。女性が世界で活躍しなければならない使命は共有できるよね。男子にうつすを抜かすのが世の習いだけれど、私たちは、しっかりなきゃ、協力してがんばろうねというエール大学にできた女性だけのコーラスチーム“Whim'n Rhythm”のアイデンティティの1つ。これをシェアしようというメッセージだという。もちろん、八雲のマナー教育に通じる。ここにもY&Yコードを発見した。

アンコール曲は、ミュージカルや映画でおなじみの「オズの魔法使い」から「オーバーザレインボー」。八雲の中学生は毎年英語劇で、これを演技し、歌う。だから、この歌を選曲してくれた。しかし、実はそれだけではなかった。この歌は、マイノリティの支援の歌でもある。つまり、女性にとってのエールの歌である。また、未来への架け橋の歌である。未来は、この出会いの中から、必ずや世界で活躍し合うことになる。向こうの世界でもいっしょだよというメッセージがあったのではないか。

それから、もう1つ。八雲では英語劇は、「世界観」を自らの内に見出す大事なアクション。感性教育は、日々の繊細な気持ちの積み上げが、「世界観」に昇華するというのが、近藤校長の考え方である。オズの魔法使いの最後の場面で、ドロシーはこう語る。There’s no place like home“”

さて、このhomeはどこだろう。故郷だろうか、母校だろうか、母国だろうか、世界だろうか・・・。アメリカでもこれはいつも議論になる。歴史とともにそれは変わる。今では強いアメリカではなくなっているだろう。それを求めて“Whim'n Rhythm”は世界ツアーで響きを放っている。そのとき行った先で共振する何かがあるだろう。そこにhomeのヒントがあるのだろう。彼女たちは、日本→韓国→シンガポール→タイ→インド→・・・スペイン→イギリス×アイルランドと、2か月の演奏の旅をする。

すべては大英帝国の足跡である。なぜ私たちはアメリカだったのか、ハーバードの真実だけではなく、エール大学は「真実と光」を求めたのか。なぜ私たちは1969年以降のエール大学だったのか。旅は未来のhomeを建設するために、突き抜ける世界を全貌することができる。

おそらく近藤校長のイメージする世界観こそこのhomeと重なるのではないだろうか。生徒1人ひとりの独自のそれでいて世界に通じる世界観。私のそしてあなたのhomeを創り上げよう。そのために八雲学園の生徒も世界ツアーにでかける。中3では、全員がサンタバーバラに。そして帰国後、高1になるや、16人が3か月留学に旅立つ。エール大学の2か月間の世界ツアーに匹敵する。

写真の8人は、来月からテネシー工科大学の3カ月留学プログラムに挑む。もう8人は、その後すぐにUCSBの3カ月留学に旅立つ。エール大学の学生が歌ったY&Yコードの象徴「オーバーザレインボー」の響きを胸に。

 

 

 

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