聖パウロ学園 学びの質を求めて(1)

聖パウロ学園は、高尾山に連なる森のキャンパス、宿泊施設、イタリア修学旅行という他校にはない学びのスペースに恵まれている。したがって、同学園の学びの質は測り知れなく豊かで、かつ独自のプログラムが展開している。

高橋博先生(理事長校長)、倉橋和昭先生(副校長)、本田佐和子先生(数学科教諭)、松原由典先生(生徒指導部長)が、聖パウロ学園の学びの質の可視化についてミーティングをしているシーンに立ち会った。大変興味深い話し合いだったので、一端をご紹介したい。by 本間勇人:私立学校研究家

高橋先生:昨今大学入試改革、スーパーグローバルハイスクール(SGH)など、世間の方も教育制度改革の話を聞かない日はないだろう。しかし、今回の制度改革が、今までと少し違っているのは、脱ゆとり路線のときのような学力問題の話だけではない。グローバルリーダーを目標に掲げていることもあって、学力向上のカリキュラムだけでは、その目標を達成できないということもあるのだろう。

では、制度改革が目指すグローバル人材の射程はどこまでなのだろう。それはこれもまた今話題になっているが国際バカロレアの10の学習者像が参考にされている。

Inquirers 探究する人
Knowledgeable 知識のある人
Thinkers 考える人
Communicators コミュニケーションができる人
Principled 信念のある人
Open-minded 心を開く人
Caring 思いやりのある人
Risk-takers 挑戦する人
Balanced バランスのとれた人
Reflective 振り返りができる人
 
こうして見てみると、日本の教育ではなかなかうまくいかなかった点が網羅されているという見方もできる。実際、信念、心を開く、挑戦するという側面が弱いのは、たいへんな問題だ。高校入学時に、自己肯定感を抱けていない生徒が多いというのは、全国的な問題になっている。
 
 
聖パウロ学園でも、それは例外でないが、入学時に自己否定感に悩む生徒の心が開き、信念をもって、自分の目標に向かって挑戦する人間として育って行っているのも確かである。
 
今まで偏差値と大学合格実績は数字で表現されてきたが、このような人間に育っていく3年間の学びの体験や授業の仕掛けの質については、実はまだまだ可視化されていない。ブラックボックスのままであるところが多い。
 
だから、聖パウロ学園は、自分たちの学びの質がどのように形成されているのか可視化してみたいと思う。それは、生徒たちにとっても、自分にとって価値あることがどうやって内面化されたか知ることにもなり、たとえば、いくら優秀な成績をとっても、存在論的な不安が消えないのに、かけがえないのない価値を見出した途端にモチベーションが内燃し、自己肯定感を抱けるようになることを実感できるだろう。
 
もちろん、聖パウロ学園の教育が、悩める日本の教育の参考にもなるだろう。今日は、聖パウロ学園の学びの質をどのように可視化できるのかヒントを探したい。

 

 

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