IBの10の学習者像育成の土台が、工学院にはすでにあることは了解できた。ただし、IBでは、行事や部活で、その学びを行うのではなく、授業そのものでトレーニングできるようになっている。
一般に日本の教育は、授業は知識を教える講義形式で、工学院のように科学教室のようなチャンスがないところでは、部活に依存するから、その部員でないない場合、10の学習者像を身につける場がない。
工学院の場合は、このようなチャンスは科学教室としてあるが、IBレベルの教育に挑戦するとなると、授業そのものに、すでにある土台を埋め込まなければならない。果たしてそれはどうなっているのだろうか。
もちろん、授業の中に、対話型、討論型の授業=PIL×PBLを埋め込むということが、プレスリリースで高らかに謳われている。しかし実際にはどうなのだろうか?言うまでもなく試行錯誤はスタートしている。
(POP作りや創作のアート活動、図書館運営の活動、読み聞かせのボランティア活動に挑戦している図書館委員。IBのCASのプログラムをすでに実践している)
実は、IBの重要なもう1つのプログラムにCAS(creativity, action, service )があるが、工学院の図書館では、司書教諭の有山先生と図書委員たちがすでにそのCASに相当している活動を行っている。
したがって、あとはこれを新教科にすれば、授業にIBレベルの教育を盛り込めるということになっている。システム思考×デザイン思考の新教科を首都大と連携して行っている。10月にはその実際の取り組みが新聞で取り上げられることになっているという。
(高1の化学の授業は、全クラスPIL×PBL授業にシフトしている)
また、高1の化学の授業は、すでに年間通じて全クラスが、PIL×PBLを実施している。そして、授業はテストに反映しなければならないから、定期テストも、知識×高次思考を問う問題を実施している。そのようなテストが行われれば、評価も当然変わる。
IBの評価は、総括的評価(従来型スコア評価)と形成的評価が組み合わせっている。したがって、この両評価を併用するようになったという。
「科学教室」と同時開催で、工学院大学附属高校のミニ説明会が3回催されていた。そこで、工学院はIBに象徴されるような21世紀型教育を推進することが明快にアピールされた。広報のスタッフが、堂々と語れるのには、ビジョンが明快で、それが学内で共有されて、実際に実践されているからである。
中学のミニ説明会も1回だけだが、行われた。驚いたことに昨年比150%ということだった。プレスリリースの広報戦略があたったのかもしれない。それにしても、中学の説明会も明快で、わかりやすかった。一貫性が伝わってきた。
その一貫性は、教師の情熱にあると、広報の佐藤氏は語る。教員も、生徒と同じ学習者である。これはIBの理念であるが、昨年も今年もIBのワークショップ研修に参加する主体的な教師が多く、そこで得てきた見識ということだ。そして学内で定期的に教員研修が行われ、教員自身新しい教育に挑戦しているということだ。
先述した化学の授業以外にも、PIL×PBL授業を実践する教師が増えてきたということだ。
佐藤氏は、こう語る。
「教師が変われば、授業が変わる。生徒が変わる。生徒が変われば学校が変わる。」
ここまではなるほどだったが、最後に「学校が変われば日本が変わる」という吹き出しがでてきたときには驚愕してしまった。
平方校長が物語るだけではなく、学内の教職員全員が、高い志をもっていることが参加者に伝わった瞬間だった。