八雲学園 9ヶ月ハイレベル英語プログラム(2)

今回はバックアッププログラムを拝見した。よく世界のテニスプレイヤー錦織選手の海外でのインタビューシーンが話題になる。英語で意志を伝えるだけではなく、外国人インタビュアーの質問を切り返したり、いなしたりている様子があまりに自然で、グローバルな活躍をするときの英語力のロールモデルになっている。

そして、16人の3ヶ月留学から帰還した生徒の英語の授業は、まさに錦織流だった。

(UCサンタバーバラ大学3ヶ月留学クラスのエッセイライティング授業。オールイングリッシュで対話)

エッセイライティングは言語哲学が基礎

バックアッププログラムというから、3ヶ月留学の時に、日本で学習できなかったところを補うプログラムだと思っていたら、大間違いだった。英語の場合は、その必要がなく、むしろ、さらにハイレベルの英語力を身につけるためのバックアップ授業だったのである。

英語科の近藤隆平先生ご自身、米国大学留学体験者であるから、その授業は米国大学のゼミナール形式。エッセライティングの場合、大きなフレームとその中に収めていく文と文との関係の構成が大切。

しかし、何よりもその前にトピックやディテールセンテンスで活用する「単語」の意味を何度も問い返していた。もちろん、英語で。

自分たちが学んできた“English”とはそもそもどうとらえたらよいのか、コンセプトマップを英語で問答しながら描いていく。辞書的な意味や日本で体験していた英語に対する先入観をクリーニングする対話が行われていたのである。

米国大学でエッセイを書くには、英語ができることは大前提だから、英語のスキル的な話より、内容そのものの議論になる。だからそこでは、記号論や言語哲学の手法が使われるが、それを近藤隆平先生は、3カ月留学の生徒のバックアッププログラムに適用していたのである。

というのも、彼女たちは英語のスキル自体は英検でいえば準1級以上だから、同じようにエッセイの内容の議論に時間を使えるのである。

エクスパンシブ学習(拡張学習)

テネシー工科大学3ヶ月留学クラスでは、11月の学校説明会で、3カ月留学の体験を受験生・保護者にプレゼンするイングリッシュ・パフォーマンスのスキットを英語で議論していた。

もちろん、エッセイライティングのバックアップ授業なのだが、アクティビティ理論で重要なのは、学んだことを実際の社会や世界に応用するエクスパンシブ学習(拡張学習)にシフトすることなのである。

私立学校は教育と市場のバランスのうえになりたっている。しかし、これは学校だけの特色だけではなく、生徒が世の中にでたらすぐにわかるが、社会とはそういう構造になっている。

たとえば、医療活動はその典型である。医者とクライアントの間には信頼関係が築かれるが、同時に薬などのように、市場経済の中からその信頼関係の中に入り込んでくる経済関係がある。人間関係と経済関係のバランスを取る方法を学ぶことはとても重要である。

欧米の高校や大学は、このエクスパンシブ学習を行うのは、当然であると考えられている。たとえば、エール大学やハーバード大学が、日本の高校生や大学生とリーダーシップ研修パフォーマンスを実施しによくくるが、それはグローバルな信頼関係を築くことと自分も誇りをもている機関へのリクルート活動も兼ねている。大学がそのために支援するときもある。もちろん、大学が依頼するのではなく、学生が企画を立てて支援をゲットするのである。

したがって、八雲生の今回のパフォーマンスアクティビティも、このようなチャンスをつくってくださった先生方に感謝するとともに、このような誇り高きわたしたち八雲生のようになってほしいという市場へ支持をアピールするエクスパンシブ学習でもあるのだ。

つまり、信頼関係とは市場で支持されるというものでなければならない。ハイレベルな英語教育は、高度な英語のエッセイが書けるだけではなく、その内容が市場で支持されるという実感を抱けるところまで到達しなければならない。

八雲学園のハイレベル英語教育の真骨頂はそこにあり、すでに15年以上続いてきた学校説明会でのイングリッシュパフォーマンスの意義を改めて気づかせてくれた。日本で唯一プラグマティックな教育を実践している学校であると常々感じてきたが、やはり米国にルーツを持っている八雲学園のウェルカムの精神の真髄はここにあったのである。

 

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