東京女子学園 模擬裁判でActive Learning(1)

昨年末、2020年大学入試改革一体型の学習指導要領改訂の話題がリリースされるや、教育界は授業のアクティブラーニング転換の話題が喧しい。そんな中、東京女子学園は、すでに20年以上も前から弁護士の方々とコラボレーションして、模擬裁判を行ってきた。この体験学習こそアクティブラーニングと言わずしてなんて言おう。

しかも、起訴側と弁護側に分かれて、いわばディベートし、裁判員が判決を判断していく過程は、非常に深く考える学びの体験である。すでに事実を理解し、分析し、矛盾を見出していく思考過程と最終的には法感情で矛盾解決の判決を決断するリーガルマインドまで育成する本格的アクティブラーニングなのである。by 本間勇人:私立学校研究家

(東京女子学園中3生 模擬裁判でアクティブラーニングを展開しているシーン)

東京女子学園では、中3生が模擬裁判を行っている。裁判官チーム、裁判員チーム、検察官チーム、弁護人チーム、傍聴人チームに分かれてロールプレイ型の体験学習を行う。

弁護士の方々と先生方は、被告人や証人のロールプレイをする。特に弁護士の方々は、アドバイスやファシリテートを行い、事件現場や裁判現場というリアルな知識や情報を判断の材料として提供するときもある。

このロールプレイの興味深いところは、自分の考えと違ったとしても、その立場に立って考えを述べなければならないことだ。検査官側は事件のプロセスの中で、起訴が成立する「証拠」を提供する。

一方、弁護人は、検察官の提出した「証拠」が真ではないことを論証していく。模擬裁判の特徴は、この「証拠」が、検察側から観れば真として考えられ、弁護人から観れば、真ではないと考えられる程度に曖昧部分を残しているところだ。

たとえば、被害者が被告人の顔を見たという「証拠」をめぐって、被害者が被告人の顔を見た距離が近いとか電燈で明るかったなどの理由が挙げられるが、一方で逆光で、顔は見えなかったのではないかなど反論ができるようにシナリオが作成されている。

それゆえ、心情的に無罪だと思っても、立場に立って、徹底的に証拠の「真」あるいは「偽」である根拠を考え抜くことがねらいになっている。こういう理由で「真」、いやこういう理由で「偽」という裁判手続きの学び体験がなされていく。

この体験で、ものごとを考えるということは、主観的な立ち位置からではなく、与えられた役割の立ち位置から出発して論理的に考えるということを体験する。

主観を捨てろというのではなく、自分のものの見方・感じ方とは違う役割を体験することによって、自分と他者とのものの見方や感じ方の違いと共通点がわかる。この他者との違いや共通点を理解することこそ、多様なグローバル社会で異文化理解をするときに必要な根源的な思考であるはずだ。

模擬裁判は、進路先として法律関係に進むかどうかということに影響もするだろうが、論理的思考と立場によって判断が変わるという他者理解を体験することが本意であり、深いコミュニケーションの技法を学ぶ体験なのであろう。

 

 

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