国際社会の平和に貢献できる女性の育成。これが佼成学園女子の校訓である。「英語の佼成」「ニュージーランド長期留学制度」を特色として打ち出しながら、着実に進めてきたグローバル教育は、SGH(スーパーグローバルハイスクール)の指定校として、今年度からスーパーグローバルクラスを設置した。6月19日に行われた留学クラスとの合同公開授業を取材した。 by 松本実沙音:東京大学文学部、 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家
公開授業前に懇談会&説明会があり、山内校長先生が、SGHの指定を受けたことは佼成女子の設立理念にかなったグローバル教育と長年継続してきた留学コースの実績が認められたからであるとお話された。
そしてスーパーグローバルクラスを牽引する国際部長の宍戸先生がコース内容や育成する人材像について、続いてコースの仕組みを支えてきた江川教頭先生が大学入試改革をにらんだ今後の英語教育の対応などについて、それぞれ説明を行った。
公開授業は、まず留学コースの英語、宍戸先生の授業だ。
宍戸先生は、オールイングリッシュを基本としつつ、リーディングに必要となる英文法については手早く日本語で解説する、いわば二刀流の使い手。生徒たちは真剣そのもの。一言も聞き漏らすまいと凄いスピードでノートをとっている。
言うまでもないが、先生の話を聞きながら要点をまとめていくノートテイキングの技術は、大学進学前に習得するべきアカデミックスキルの一つである。ノートをとるというのが、板書事項を書き写すという意味になってしまいがちな日本とはその意味合いが異なっている。
ニュージーランドに毎年生徒を送り出している宍戸先生や佼成女子の国際部の先生方のことだから、留学コースの生徒にふだんからそのスキルを意識させているに違いない。
ほとんど無駄を排して一気に英文を読み進めていく。生徒の私語などあり得ないといった感じである。コミュニケーション英語を重視する立場の人は、もっと遊びがあってよいと思うのかもしれない。しかし、これから留学に出る彼女たちは事情が異なる。なぜなら、英語によるコミュニケーションは留学した後にいやというほど鍛えられる部分なのであるから。むしろ、留学前に最低限やっておかなければならないことを優先してやる、そんな意気込みが感じられる授業であった。
ただし、英語によるコミュニケーションが全くないかというと決してそんなことはない、佼成女子の中でそこは主にネイティブの役割となっているようなのである。休み時間になって、控え室からサラ先生が出てきたときにそれははっきりとわかった。生徒たちはすぐに駆け寄っていき、いわゆる女子トークが始まるのである。
自然な英語という意味では、これほど自然なシチュエーションはない。授業の中でコミュニケーションといっても、やはりそれは学習効果を考慮した内容にならざるを得ないが、休み時間のトークでは英語そのものは背景に退き、話の内容に意識が向かう。
このような人間関係を形成しつつ、一方でストイックといってよいほど英語の鍛錬を行っていく。当然英語を学ぶことへのモチベーションが高いことが前提となるわけだが、そこに英検まつりなどのイベントが大きく関わっているのだ。
英検は学校の生徒全員が取り組めるという点にメリットがある。級が異なっても、目標を達成するということではみな同じスタートラインに立っている。そこで江川教頭先生はこのイベントを重視しているのだ。
さすがに「英語の佼成」と言われてきただけのことはある。様々な仕掛けが組み込まれて、全体が有機的に機能しているわけだ。