富士見丘 SGH校としてソフトパワー全開

今春より富士見丘学園は、SGH(スーパーグローバルハイスクール)指定校になったが、指定校になる以前からグローバル教育及び創造的思考力を育成するプログラム、世界を舞台に独り立ち臨めるリーダーシップ「忠恕」教育を積み重ねてきた。

その実績があったからこそSGH指定校に認定されたのだが、認定されるやさらなるハードルを設定されるから、同校のソフトパワーはさらに強力になり、生徒の創造的思考活動は加速度的に活発化している。by 本間勇人:私立学校研究家

富士見丘のSGHの学びのプログラムは、さりげないが大きな野望がある。「サスティナビリティから創造するグローバル社会」がテーマであることからそれが伺えるだろう。現在グローバル社会に広がる光と影の混沌は、サスティナビリティがないがゆえに生じている。であれば、サスティナビリティを創ってしまえば、未来社会はそこに現れるだろうという大胆なテーマである。

同校が養成しようとしているグローバルリーダー像は次のように発信されている

①サステイナビリティの視点を持っている
②課題を発見し、その解決に向けて努力する情熱がある
③課題解決のために海外の人々と協働的な活動を行うことができる
④協働的な活動において他者への気配りができ、且つリーダーシップが発揮できる
 
言い換えれば、「①自然と精神と社会をつなぐエコシステム社会を目指す人材。②パッションベーストラーニッグ(PBL)を実践する。③アクティブラーニングを実践する。④man for others(忠恕)という人類普遍の最高ルールを身につける。」という希望のプログラムなのである。
 
そしてそれは夢ではなく、授業の中ですでに展開されている。高1のSGH授業「サスティナビリティ基礎」がスタート。基本的な知識を身につけるため、文献リサーチを書籍やインターネットで行い、課題を議論しながら解決していくアクティブラーニングである。
 
 
また、授業以外に慶応義塾大学大学院及び社団法人との連携も活発だ。

慶応義塾大学理工学部・伊香賀研究室との連携では、理工学的思考とデザイン思考を統合して、工学的データに基づきつつライフスタイルをデザインしていく。この高大連携の画期的なところは、富士見丘生が伊香賀研究室で教えてもらうという形ではなく、主体的に共同研究に参加できる機会をもらっているところである。

昨年から実施しているが、富士見丘生は、その研究の仕方や論文のまとめ方が、自分が想定していたものとは全く違う科学的発想と多角的視点の必要性に身が引きしまっという感想をもらしている。その気持ちに伊香賀教授は感動し、共同研究の機会を開いたのだろう。

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科・大川研究室との連携では、サスティナビリティの実現には欠かせないダイバーシティの感覚を議論することがメイン。チューターは研究室の留学生だから、議論はオールイングリッシュとなる。受験英語ではなくグローバルイングリッシュのプログラムを実施してきた同校のソフトパワーがここで大いに活かされている。

さらに、「サステイナビリティ基礎」の一環として、10月に岩手県釜石市でフィールドワークを実施する予定。そのレディネスとして、社会課題の可視化に取り組む一般社団法人リディラバ代表の安部敏樹氏とスタッフと協働して、釜石市の現状を学び、課題設定・解決策を考えるワークショップを開催した。

どの学びのシーンも、議論やプレゼンがあるが、その過程で生徒は探求型のスタディスキル(文献リサーチ、フィールドワーク、議論、編集、クリティカルシンキング、プレゼン、エッセイなどの方法論)を身体化していく。教科学習で身につけた基礎知識をスタディスキルによって活用し、新たなグローバル社会を支える新しい知識や技術を生み出す機会が富士見丘のSGHプログラムなのである。

さて、上記写真は、これまでの写真と同じ学びのシーンを映しだしているが、実は中1のロングホームルームの様子である。スタディスキルは、高1になってからはじめればよいというものでもないからというのもあるが、実は同校は自主探究「5×2」という探究型プログラムを久しい間全学年で行ってきた。週に5日は教科の学び、土曜日曜日はそれに加えて、自分の興味関心をもったテーマについて深掘りしていく学びである。

この自主探究学習は、自分の好きなところから入って、世界を広めていくうちに、価値ある生きがいに相当するテーマにぶつかることが多い。この探究を自分の存在の立ち位置として進路につなげていくOGが多い。

であればこそ、さらにスタディスキルをはやめに学び、探究活動を豊かにしていこうというのがねらいである。そしてそれがやがて高1からのSGHプログラムにつながり、探究というソフトパワーがさらに豊かになっていくという知のサスティナビリティの教育システムが完成するのであろう。

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