八雲学園 憧れそして成長(1)

2020年大学入試改革がどうなるのか、それはまだ議論が続いている。しかし、知識の量がどれくらいあるのか、知識を引き出すスピードがどのくらいなのかについて、1点刻みで競ってきたテストから中高で生徒1人ひとりがどのように成長したか、そのためにどのような学びの体験を積み上げてきたかを評価できるテストにシフトしていくというコンセプトは大いに歓迎である。では、その学びの体験の積み上げとは何か?どのようにイメージしたらよいのか?その最も信頼性の高いロールモデルが八雲学園の文化祭なのである。by 本間勇人 私立学校研究家

文化祭パンフレットの巻頭言で、近藤校長はこう語っている。

「全体の成功のために、いかに自分が適切に役割を果たせるかを一人ひとりが熟考し、周りの人に配慮しながら力を注いでこそ、生徒たちは輝きを放つのです。

今年の統一テーマは「Growth~美しく咲くとき~」ですが、才能の花を咲かせるというのは、一輪の花ばかりが目立って咲けばよいのではなく、それぞれの花も美しく、なおかつ全体を見渡してもバランス良く美しく見える時に初めて見る人の心に響くのではないでしょうか。

自分に目を向けることにとどまらず、周囲を気遣いながら自分の在り方を見つけていく、そのような姿勢で取り組んだ生徒達の「成長」を、どうぞじっくりご覧ください。」

八雲学園における生徒1人ひとりの成長の全貌を見ることができるのがこの文化祭なのであるが、それは来訪者が外から見ることができるという意味だけではなく、当事者である生徒自身も全貌を見ることができる機会でもある。そしてこの機会はなくなてはならないオール八雲学園の共有時空でもある。

成長というのは、学力の伸長だけをいうのではもちろんない。身体能力が高くなるということだけをいうのではない。芸術的感性が豊かになるということだけでもない。それら多様な能力が統合されて成長する。八雲学園のモットーは、「教育の総合力で日本一そして世界一」であるから、文化祭は多様な分野で生徒は能力を高め成長する。

その一つに言語能力の成長がある。各教室では、ポスターセッションが行われ、芸術鑑賞行事でおこなったフィールドワークを通して調べたことを各クラスが一丸となってプレゼンする。

たとえば、中1のあるクラスでは、日本のエネルギーの現状について、徹底的に調べ、フィールドワークし、課題を見出している。まずは「情報」を収集し、整理し、全体を「理解」する。そのうえで「課題」を発見する。それについて、訪れてきた方々にプレゼンをしていくのだが、相手が小学生であれば、小学生が理解できるように「気遣い」ながら説明していく。

実は、このとき、中1生は自分の成長に気づく。自分もこんな小学生のころがあったが、今は説明する側に立っているのであるから。

かくして、自分が成長しているかどうかは、人とのかかわりとの中で実感できる。そしてさらに自分自身とのかかわりの中で実感できる。クラスというチームで協働して学びの体験を積み上げていく中で、自分の中に新たな問いが生まれ、それを調べたいというモチベーションが生まれてくる。

そのモチベーションにしたがって、夏休みなどの自由研究を行う。問題解決するために、仮説を立て、その検証方法を調べたり自分でアイデアを出したり、そのための道具を揃えたりしていく。自分の内面の世界が広がっていく瞬間であり、それが実感できるときでもある。

チームとの学びの活動と自分の探究。全体の成功のために、自分が適切に役割を果たしているうちに、自分の内面の世界が広がり、才能の花を咲かしているという実感を。

(カリフォルニア州のUCサンタバーバラで3ヶ月留学を終えて帰国したばかりの高1生)

中高6年間、この「チームとの学びの活動と自分の探究」の螺旋が幾重にも回って上昇していくのが八雲生の成長の特色だが、それはどこまで行きつくのだろうか。この成長の発達の目標はどこにあるのか。それが先輩の実績にかかっているというのが八雲学園の大きな特色。中学校1年生から高3までの活動を一望することができるのが同校の文化祭であるが、今回カリフォルニア州のUCサンタバーバラに3ヶ月留学してきた高1生3人と会うことができた。

彼女たちは、日本と米国の文化やものの見方の違いを実感し、多様性を受け入れる寛容性を豊かにし、視野を広げ、さらに内面の世界を広く深くしてきたという実感を語ってくれた。UCサンタバーバラの教授陣の話に耳を傾け、自分の考えを少しずつもちろん英語で語たったり、ホストファミリーとの生活の中で、市民生活というのを感じたり、推理小説など好きな分野の本を原書で読書三昧したり・・・。

今、放課後を活用して、留学後の発展学習の指導を受けているが、そこでエッセイライティングという技術をさらに磨く。文化祭は、このような世界に通じる高度な言語能力を磨いている先輩といっしょに協力し合う。

目標は憧れの先輩であり、そしてまたその先輩を乗り越えるオリジナルな成長によって才能は輝き花開く。互いの成長を確認し合い、さらなる目標を見出すことができる場が八雲学園の文化祭である。

 

 

 

 

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