八雲学園 C1英語の学びの環境 着々

八雲学園の英語教育は、CEFR基準でいうC1レベルの学びの環境を設定し、実際にB2からC1レベルの生徒が、毎年50人くらい育っています。C1レベルの生徒というのはどんな感じか、帰国生も含めて日本人ばかりの生徒がいる中高一貫校では実感できないかもしれません。

しかし、八雲学園には、イエール大学やケイトスクールの生徒が訪問し、国際交流が行われますが、イエールやケイトの生徒をもてなすには、すでに八雲学園が英語のレベルC1を目指さなければ、このような国際交流を行おうと思いも及ばなかったでしょうし、そもそも相手にされなかったでしょう。(本間勇人 私立学校研究家)

(米国超名門校の典型的なソクラティックメソッドによるゼミスタイルの学び。ケイトスクールのサイトから)

イエール大学が、300年以上も歴史がある米国の名門大学で、アイビーリーグのメンバー大学であることは、有名です。一方米国の高校となるとまだまだどこの高校が名門なのかさえ、日本では知られていないのが現状でしょう。

ケイトスクールは、イエールをはじめとするアイビーリーグやMIT、スタンフォード、UCバークレーなど世界大学ランキング100位以内の大学に入る生徒ばかりが通う高校です。一学年75名で、全寮制の学校ですから、学費や生活費など合わせると、年間600万円弱かかります。

いわゆるノーブレス・オブリージュの生徒であることが大前提の生徒が通う共学校です。ですから、女子校である八雲学園も安心してケイトスクールの男子生徒をホームステイで受け入れます。

ですから、こちらから交流を申し込んで、はいわかりましたと了承してくれるような高校ではないのです。八雲学園が中学再開して以来の交流が続いているのは、ケイトスクールが日本中の高校をリサーチした結果、ケイトスクール側から八雲学園に交流を申し込んできたのです。

それは、茶道や武道に代表される日本人の高い精神性が養われる学校だとケイトスクールが認めたからです。C1レベルというのは、英語に限らず、実は言語活動そのものが、そのような高い精神的活動ができるレベルのことを意味し、たんにTOEFLなどの英語資格試験のスコアが高いことを意味しているわけではないのです。

ケイトスクールの生徒は、箱根に行ったり、京都に行ったり、2週間くらいのジャパントリップのスケジュールに、やりたいこと見たいことをギッシリ詰め込んでいます。それだけ貴重な体験に対し、貪欲で好奇心旺盛です。八雲学園の在校生やOGの家庭にホームステイしながら、八雲学園を日本文化や社会の学びの拠点として動いているのです。

私が取材に行った午後の時間帯は、八雲学園の先生方と茶道の体験をしていました。午前中は、空手の体験をしていたそうです。つまり、岡倉天心の「茶の本」や新渡戸稲造の「武士道」を貫いている「道」について学んでいたわけです。

お茶のお点前を体験している時には、途中まではきちんと正座していましたが、さすがにしばらくすると椅子に座ってお茶をたてていました。日本人も今や正座は得意ではないから安心してくださいと先生方の気遣いがすてきでした。

いずれにしても、ケイトスクールの生徒は全員日本語を学んでいる生徒が訪れているので、当然ですが日本語でやりとりしているのですが、なんとも不思議な茶室の空間となりました。それはともかく、ケイトスクールをはじめとする米国の超名門高校では、第二外国顔をいくつか学ぶのは一般的です。榑松先生によると、ケイトスクールの生徒も、日本への興味と関心のきっかけは、「ナルト」や「千と千尋の神隠し」などアニメだったようです。

その好奇心からもっと日本を知ろうと思うようになったときに、日本語を学ぶのは当然で、日本語を学ぼうとして学んだわけではないのです。もちろん、グローバル時代ですから、アジアやアフリカで活躍する夢もあるのでしょう。日本語以外に、中国語やフランス語も学ぶというのは、そういう理由もあるのです。

八雲の生徒は、中3のときサンタバーバラのレジデンスで1ヶ月ほど学びます。そのとき、各チームに1人ずつ、ケイトスクールの日本語を学んでいる生徒が、チューターの役を買って出てきてくれます。その彼らが、日本にやってくるのです。八雲の生徒にとって、英語を学ぶことは、大学受験勉強のためだけの目的ではなく、グローバルな世界で、相手の国の文化を学ぶための言語活動の一環であることを、チューターのケイトスクールの生徒と生活を共にしながら、実感してきているのです。

(お昼は、いっしょに調理をしてランチをしながら、会話が弾んでいました。引率の先生は2人で、1人は日本語は話さないので、八雲生は英語で会話。そのシーンです。)

もちろん、2020年大学入試改革によって、英語4技能の試験はB2以上要求されてきますから、八雲生にとってたいへんアドバンテージが高くなるわけですが、それは時代が八雲に追いついてきたということでしょう。

それにしても、ケイトスクールの生徒が箒や雑巾をつかって、八雲学園の生徒といっしょに掃除までしていました。彼らに尋ねると、これも日本の精神がやどっている行為だから、ぜひ経験してみたい活動の1つとして、予めプランしてあったそうです。

掃除に日本の文化の精神が宿るとはどういうことなのでしょう。私たち日本人が忘れてしまったかもしれない大切な心を、八雲学園の生徒はケイトスクールの生徒と見出し、共有しているのでしょう。それが両校の長い間の交流を可能にしている大きな理由であると確信に到った取材となりました。

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