Created on 1月 12, 2017
富士見丘では、SGH(スーパーグローバルハイスクール)認定校として、プロジェクト学習のベースであるアクティブラーニングが学内に浸透している。SGHは高校のプログラムであるが、同校は中高一貫校の強みを活かして、中学でもそのエッセンスを実施。破格のアクティブラーニングのプロトタイプが完成した by 本間勇人 私立学校研究家
中学1年では、昨年からLHRの時間を使い年間8回ぐらいアカデミックスキル基礎講座を行っている。ベースはアクティブラーニングで、その特徴は次の5つ。
1) 思考スキルとして、「比較・対照」「理由・根拠」「抽象化」「カテゴライズ」などをプログラムの中に埋め込んでいる。
2) 知識は論理的思考のエネルギーとして、思考と分離しないで融合させている。
3) ディスカッションと個人ワークの時間のメリハリをつけている
4) 模造紙、ポストイット、ロイロノート、iPad、電子黒板などアナログとデジタルの思考ツールのバランスの良い組合わせをデザインしている。
5) 創造的思考、批判的&論理的思考、共感する力、協働する力、ICTリテラシーの5つのメタルーブリック(思考コード)をもとに、タブレッドによる自動リフレクションシステムを開発している。いわゆる≪higher order thinking≫が基礎になっている。
中1の7回目のアカデミック基礎講座のトピックは、「フローチャートづくり」。学びのパターンは、身近な体験を通して「フローチャート」の意味を見出すということ。具体から抽象へシフトすることで、今度は別の具体的な現象に応用・適用ができる。
美濃部先生によると、「とくにフローチャートは、授業でのみならず、行事や生徒会で活動を運営する際にも適用できるし、なんといってもICTによるプログラミングの基礎的な考え方だから重要なんだという実感を生徒と共有したい」ということだった。
部屋の掃除ついて話し合っているテキストを読んで、掃除の手順のフローチャートをまずは自分で考え、チームで一つのフローチャートを創っていく。個人の考えを明確にしてから、ディスカッションすることで、軌道修正することになるから、自分の論理をクリティカルシンキングすることにもなる。ここに多くの気づきが生まれる。
リフレクションの全体の結果をみると、カテゴライズは、前回よりも十分に行ったという結果になっていたから、フローチャートの意味・意義を生徒は体感していたことになる。美濃部先生のプログラムデザインの目的はうまくいった。
また、個人ワークで考えてまとめて、さらにロイロノートでシェアしたりしたから、一人ひとりは没頭したという反応が前回よりも強くでていた。アクティブラーニングはともすると拡散して終わりになる。それはそれでよいのだが、たとえ短くてもいったんまとめて抽象的思考に飛ぶことに没頭する瞬間をつくりたいという美濃部先生の想いと創意工夫はある程度達成された。
一方で、今回は、ICTリテラシーに関しては、調べたり編集したりするためには使わず、ロイロノートをおもにシェアするために活用したから、前回ほど反応は高くなかった。リフレクションは、すべての反応が高くなることが目的ではなく、授業の目的に応じて反応が高い領域とそうでない領域がでるのが健全である。
そういう意味で、今回の授業は美濃部先生と中1の生徒の協働作業として成功したといえる。アクティブラーニングは、この瞬時のリフレクションシステムによって、生徒一人ひとりの取組みの強みと弱み、授業の強みと弱みが、教師も生徒も共有できる。
活動というのは、あらかじめイメージをして、その過程の中で試行錯誤と軌道修正のフローチャートループが出来上がると、成長思考につながっていく。そして、このフローチャートループの連続が、多様な価値観やものの見方・考え方を尊重しつつ、最適解としての結論や新たな仮説を導くことになる。
(個人のリフレクションシートも瞬時に出る。学年全体の集計結果の一部。それぞれの項目には5つの小項目がさらにあり階層構造になっている)
不確実性の時代は、正解は1つではないが、それだけに独善的な考えに陥りやすい。そうならないように、ディスカションしたり、協働したりしながら、最適解を共有していくことによって、難局を乗り越えていくことができる。
(カテゴライズしたかどうかの小項目は、批判的&論理的思考の項目に属している)
富士見丘のアカデミックスキル基礎講座は、この難局乗り越え体験のシミュレーションの場でもある。おそらくここまでのフローチャートループを完成させたアクティブラーニング授業は、世界でも類をみないであろう。