「第2回21stCEO静岡シンポジウム」(3)

トークセッション グローバル教育3.0へ

 
静岡聖光学院の田代正樹副教頭、聖学院中学校・高等学校の伊藤豊高等部長から「新たなグローバル教育で才能を開花する」と題し、お話がありました。田代先生からはマレーシア・マレーカレッジ(MCKK)の交流の紹介がありました。MCKKはマレーシアの超トップ校。
 
男子だけの全寮制の学校です。静岡聖光学院の生徒が参加したのはMCYDS2018。世界の未来について、プレゼンテーション・最先端研究見学・文化交流・ポスターセッションを通して思考する会です。
 
 
*MCYDに参加した生徒の率直な感想は「日本ヤバイな」。
 
マレーシアでは日本人というだけで尊敬の眼差しを受け、今は日本は先進国と言われているが、いつ抜かれてもおかしくないと言います。そして彼は「一緒に未来に築くために絶対負けたくない」とも述べました。そもそも自分たちはマインドで負けていると。
 
そうした強い思いを抱き、彼は将来的に本校を会場にした国際サミットを開催したいと述べたそうです。海外の学校からサミットに勧誘し、アジアの学校と手を結んで、未来を創りたいと述べました。なお、この後、星野先生が「来年やりましょう」と。未来をつくる学校は、生徒と学校のマインドでつくられることを肌で感じました。
 
伊藤先生からは聖学院中・高の海外研修についての報告がありました。聖学院では語学研修とPBL(現地の人たちと協働するプログラム)が数多くあります。その中で最も特徴的なタイの山岳民族の研修旅行を紹介していました。
 
 
 チェンマイやチェンライという地域はたくさんの社会課題を抱えています。昔は麻薬汚染が酷かったといいます。現地の活動家と以前の聖学院中・高校長が問題解決のため、昔は麻薬撲滅を解決するプロジェクトを実施していたそうです。そのプロジェクト自体は今はタイ政府に移管し、2000年から子どもを保護するプロジェクトにかわったそうです。
 
伊藤先生は社会課題を自分事化するためには現地に行けばよいと考えていたそうですが、そうならないのが現実だといいます。そういう状況に陥っても、生徒は距離すら詰められない。そうした課題意識のもと、今年度はSDGsをもとに距離を縮めようとする試みを行ったそうです。
 
そのさいに気づいたのは、山岳民族の村にSDGs実践例があるということ。やるべきことがあった、と感じたそうです。村おこし、コーヒー栽培で自立、水源の森の保護、児童保護施設整備、自立支援活動のリーダーにインタビュー、国籍のない子に国籍を与える活動の支援。タイ研修旅行は旅行ではない、という強い想いで、伊藤先生は取り組んでいる様子が窺えました。
 
なお、参加希望者70~80名。しかし、連れて行けるのは30人とのこと。この様子をとりまとめ冊子として販売し、その収益を現地の支援に役立てるとのことでした。
 
 
伊藤先生は「最初麻薬撲滅プログラムをよく高校でやったと感心する。家庭も寛容だった。」「トイレ、水は衛生的ではない。ハードに活動するには水関係克服しないとダメ」とタイ旅行の厳しさを語ると、会場は驚嘆と笑いが起こりました。そして、「本当に社会貢献をするなら、お人よしだけではダメ。貢献するための技能が必要」「社会問題に出くわしたとき、自分たちに何もできない、専門家に任せたほうがいいと思いがち。でも、社会問題はキミたちと繋がっているし、どうにかなる」とエールを送り、SDGsや社会問題と自分とのつながりを考えて欲しいと訴えました。
 
田代先生は「マレーシアの件は面食らうことが多かった」と、想定外でアグレッシブな現地の方々の姿に驚いたといいます。また、生徒たちがもどかしさを抱いていたと振り返ります。英語できないから伝わらない。英語使えても、本当に未来をつくることができるのか。英語が話せるようになるのは、実はスタートライン。
 
 
「(隣人とは)友達にはすぐになるし、いくらでもつながれる時代にある。肝心なのは、どういう一歩を踏み出せるかだ」「マレーシアの高校生のエリート意識の高さを見てほしい。我々がこの国をよくしていきたいという公共に対する意識が高い。誰かのために何かをすることが実行できる人間であってほしい」未来を担う生徒たちに熱いエールを送りました。
 
静岡聖光学院と聖学院の取り組みは、単なる異文化交流、海外研修とは一線を画しています。星野先生も「正しい心と正しい力」が大事と述べていましたが、この取り組みのなかには、本来教育の現場にいる人々が伝えるべきなのに疎かになりがちな、哲学や倫理観、シチズンシップ、そして「man for others 」を自ら思考する学びがインストールされています。
 
留学するから、海外研修をするから世界が広がると表面的に捉えがちなところを、いかに人間として幸せを得るための学びに昇華するか。お二方の熱量を感じるセッションでした。
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