2021年度第1回定例会 オンライン開催【 グローバル教育4.0へ】②

定例会は、各加盟校の取り組みを紹介・シェアする場でもあります。昨年もコロナ禍においてどのような対応をしているかという話は、各加盟校から非常に参考となったと反響がありました。特にオンライン授業への対応は、21世紀型教育機構にとって当然の前提であり、今年の定例会でもオンラインとリアルのハイブリッド環境をいかに高い次元で実現するかということが関心の的になりました。それは昨年11月以降に行われたアクレディテーションにおいて新たに加わった基準、「ハイブリッドPBL型授業のステージ」によって明確になりました。単にテクノロジーによるオンライン授業の実施ということにとどまらない、PBL型授業をハイブリッドでどう実現しているのか、という視点が加盟校の中に醸成されてきたのです。

 

 

工学院大学附属

平方先生の後任として今春から校長に就任された中野由章先生は、前校長の築かれた礎をいかに引き継いでいくかということにプレッシャーを感じていると謙遜されつつ、21世紀型教育機構の研究・実践してきたことに大いなる賛同を示されました。国立大学の関係者と話をしている際にも21世紀型の教育を受けたような生徒が受験者に増えてくることを願う声が強くあることを紹介してくださり、21世紀型教育の実践を広げていく決意を表明されました。

高校教務主任の田中歩先生は、工学院が哲学授業を取り入れた経緯からお話を始めました。輪になるように椅子を並べて授業を行う様子が先生と生徒のフラットな関係を物語っていることに触れ、工学院が大切にしている教育の質をさりげなく滲ませました。一方、ケンブリッジインターナショナルスクールとしての認定が得られたことで、A-levelを取得する道を歩み始めたことを紹介するなど、先進的な教育を推進する力はいささかも緩めていないことも印象づけます。ハイブリッドインターコースはすでに多くの海外大学進学者を輩出、ラウンドスクエア加盟校でもある骨太のグローバル教育に、もともとの強みである工学系教育、STEAM教育など、21世紀型教育の要件はほぼすべて取りそろえたラインナップで新しい21世紀型教育を牽引する覚悟を語りました。

 

静岡聖光学院

校長就任以来、次々と学校改革を進めている静岡聖光学院の星野明宏校長先生は、静岡の地にあることをアドバンテージにしたローカルなイベントと、オンラインを活用したグローバルな協働を同時並行に行うパワフルな動きを進めています。昨年は全国でもいち早くオンライン授業への対応を開始し、マスコミにも取り上げられことは記憶に新しいところです。しかし、星野先生は、そこで満足していてはいけないと語ります。教室での授業を鮮度の高い魚にたとえ、教室に来られない生徒がいつでも鮮度の高い魚が食べられるように、オンラインでのPBL授業の環境整備にさらなる意欲をにじませていました。

星野先生のスピードと突進力をがっちり支えているのが副教頭の田代正樹先生です。静岡聖光学院は、寮を持つカトリックの男子校という強みを活かし、世界中の名門パブリックスクールやボーディングスクールとの交流を矢継ぎ早に成立させてきました。今年もコロナ禍で自由に渡航ができないという状況をものともせず、オンラインでフランスの学校とつながったり、A-Levelのオンラインプログラムを開始して、海外大学進学へのサポート体制を充実させたりしています。そのあたりの情報のアンテナが高い帰国生や留学生からの問い合わせも増加しているそうです。

 

順天

順天からは副校長の片倉敦先生がお話されました。昨年のコロナ禍におけるオンライン対応については、奇しくも21世紀型教育推進のために生徒全員がPCを持つ環境を準備していたことが、遠隔授業の体制を早く整えることにつながったということでした。昨年予定されていたリアルでの海外交流はほとんど中止になる中、オーストラリアのクイーンズランド州の高校生とのオンライン交流が実現したというエピソードをお話されました。このイベントは、生徒たちが独自に進めていた交流がきっかけとなり、クイーンズランド州教育省からの招待につながったということです。つまり、生徒が主体となって、オンラインで世界とつながるという新しいグローバル教育のあり方についてお話されたわけです。もう一つ片倉先生が大きなヒントとして指摘されたことは、そのイベントで最優秀賞をとったのが台湾の学校だったことに象徴されるように、アジアから21世紀型の教育を実践する学校がどんどん出現してきていること、そしてそういったアジアの学校がグローバルにつながる際に、英語に加えて21世紀型の教育実践が共通言語になっているということです。コロナ禍の時代だからこそ見えてくる新たな教育のヒントです。

 

聖学院

聖学院からは、21教育企画部長の児浦先生が学校代表として近況について報告されました。高校に今春誕生したGlobal Innovation Classのコンセプトを紹介する中で、リベラルアーツに哲学を組み込み、そのゴールに向かうプロセスとしてSTEAM教育を活用するというプログラム全体の流れをお話されました。その一例として、中学段階から情報プログラミングに触れられる授業を新設し、そこで得たプログラミング技術を、高学年になってから商品開発に応用するプロジェクト授業などにつなげるといった教科の枠を越えた学びを実践するということです。児浦先生は、聖学院の中にプロジェクトを推進する先生が次々と誕生していることを挙げ、学校外で先生同士が交流することの効用についても話されました。オープンなコミュニケーションで生徒の才能を拓く聖学院の方法論が、21CEOの教員全体に広がっていくことを予感させるトークでした。

 

聖ドミニコ

聖ドミニコ学園からは教頭の千葉恵一郎先生が代表してお話をされました。聖ドミニコでは数学や理科を英語で学習するイマージョン教育を行うインターナショナルコースが始まって3年目を迎え、だいぶ浸透してきたことをお話されました。昨年は慎重にオンライン授業の準備を進めて、今ではオンラインでの授業を確実に行う環境も整ったということです。

インターナショナルコースと併設されているアカデミックコースでは、PBLが授業の中心となります。現在は対面での授業が行われているとのことでしたが、またいつオンラインを余儀なくされる状況になるか分からないという想定のもと、ハイブリッドPBL授業の準備を試行錯誤しながら進めているとのことでした。

哲学的な教育については、もともと聖ドミニコのアイデンティティであるカトリックの教えがベースにあるので、そこに結び付けていくことを想定して今年度は進めていきたいということでした。

 

この後も加盟校のお話が続きます。

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