佼成学園女子 ヤングアメリカンズと才能発揮 (1)

1962年、若者の素晴らしさを音楽によって社会に伝えようと、ミルトン・C・アンダーソンによって設立された非営利活動団体がヤングアメリカンズ。音楽公演と教育の二本柱を活動コンセプトとしている。17〜25歳の若者たち、約300名で構成されていて、1人ひとりをYA(ヤングアメリカン)と呼んでいる。そのうち45名のYAが217名の高1生と交流。3日間でいわばミュージカルというパフォーマンスを創り上げる。

江川教頭から、オープンマインドがともに作品を創り上げる生徒たちの体験の一端を見るだけでも、ツールとしての英語で国際交流をする本当の意味がわかりますと言われていた。今回初日の後半のワークショップを見学する機会をいただいた。(by 本間勇人:私立学校研究家)

1人で歌う勇気の意味

すでにアルト1、アルト2、ソプラノ1、ソプラノ2などの声域別にグループになって分かれて、ワークショップが始まっていた。人数の多さに圧倒されたが、それでも筆者が見学していたホールには50%の生徒のグループ集団しかいなかったという。それなのにこの迫力の存在感は何だろう。その段階で、このイベントが国際交流の一環であるということはどこかにいってしまっていた。

初日とあって、チーム作りからはじまっていたが、生徒1人ひとりの才能を開放するところからはじまっていた。ヤングアメリカンズとのコラボのマネジメントをしている英語科の脇坂秀樹先生(高1学年主任:英語科)によると、生徒たちは、自分がどんな役割を演じ、どんなパフォーマンスをするのか、またどういうプログラムなのか、まだ知らされていないということだ。

3日間のワークショップで、フィナーレは、第一部YAによるパフォーマンスが行われ、第二部で自分たち自身がパフォーマンスをするという大きな流れは知っているが、細かいことは知らされていない。

そんなことは知らせる必要はないという意味ではない。見通しを立てる自分というのは、自分を客観的な立場に位置づけてしまうので、オープンマインドを開いていくときには、逆に壁になる。これからこうこうこうなっていくのだという判断が必要な時とそうでない時をヤングアメリカンズのプログラムは、使い分けしている。今の段階では、大事なのは「いまここで」の瞬間瞬間。脇坂先生は、

「ヤングアメリカンズと本校の交流は7年目です。最初教員たちは、この手法に驚いていました。どうして手順を教えないのに、最終的にパフォーマンスができてしまうのか。しかも涙と笑いが止まらない感動的なものがと。しかし、今ではわたしたちは深く理解しています。これが『自己開示』の方法なのだと」

たしかに、これだけの多くの人前で、自分の気に入った歌を次々と歌っていくのである。自己開示の「いまここで」の瞬間が目の前に広がっていた。

1人ひとりの才能を支えるハイタッチ

生徒が勇気をもって歌える。そこにはYAの眼差しとアーティスティックなエールの声(「イエイ!」)があった。静かに見守るYA。美しく歌う生徒。終わると拍手喝采と称さんの声。それが次々と繰り返される。プログラムがどう進んでいるのか考えている生徒は1人もいない。そこには没頭する世界が立ち上がっている。

脇坂先生は、こう語る。

「瞬間瞬間、ハイタッチが行われるのがすごいところです。佼成学園女子は、ニュージーランドやイギリスに研修の拠点を置いていますから、米国のこのような文化は、YAとの交流で体験できます。ダニエル・ピンクが『ハイ・コンセプト』という著作の中で、米国のイノベーションとそれを支えるモチベーションは、右脳の刺激によるのであり、ハードパワーからソフトパワーへのシフトこそが21世紀の教育から政治経済を形成していくのだと。そしてその象徴が『ハイタッチ』文化なのであると。クリントン時代をけん引した時代のビジョンであり、それはオバマ大統領も継承している米国の文化遺伝子だというのです」

そして、ついにYAたちが待っていた瞬間が生まれる。各チームのYAとメンバーだけが支えるのではなく、チームを超えて、全員の眼差しが、集中し始める。みんなで支え合う雰囲気が広がるのである。

持続するモチベーション

こうして、みんなで支え合う雰囲気が、1人ひとりの自己開示を促す。そして、モチベーションが持続し始める。

脇坂先生は、「もちろん、217名もいれば、3%ぐらいは、引いてしまう生徒もいるのは当然です。しかし、YAは諦めないのです。45名ものYAがいるのは、そういう生徒の自己開示を別空間で待つコミュニケーションをとるためでもあります。自己開示をしないのは、自分の才能に気づいていないだけですから、その気づきを待ちます。歌あり、ダンスあり、ハイタッチあり、そして真摯で静かなワンツーワンコミュニケーションありで、その子に合った交流を探し当ててくれます」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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