八雲学園の感性教育(2)

八雲の体育祭は、「感覚―something―表現」のパフォーマンスを支えないがら生み出している芸術祭。しかも、ここには勝者を祝う一方ですべての生徒が楽しむという軸がもう一つある。

思いやるそして支え合う

スピードを競う100メートルやリレーは、やはり応援と歓声の声が盛り上がる。一方で、借り物競争、3人4脚リレー、パン食い競争、綱引きなどエンターティメント性の高い競技は、身体機能以外の才能を必要とする。

ここにも八雲らしい精神が流れていると感じた。「競争」は、1人ひとりのタレントを称え、「思いやる」行為であり、羨みや嫉妬を生み出す場ではない。同時に、それぞれの才能を発揮できる競技を演出するという「支え合う」行為も広がっていた。ここにも2つの世界が顕れている。

☆中1のダンス

☆中2のダンス

☆中3のダンス

☆高1のダンス

☆高2のダンス

☆高3のダンス①

☆高3のダンス②

☆高3のダンス③

高3への思いやりと高3からの支え合い

体育祭ならではの競技の合間に、各学年のダンスパフォーマンスがある。これも圧巻。見ながら、テーマや演戯のスキル、迫力がたしかに成長していることがわかり、八雲の確かな教育に感動する。

しかし、これもまた単なる成長を演出するパフォーマンスではなかった。

バックヤードで先生方と演出の確認をしている高3生に少し話が聞けた。「5年間憧れてきた高3のダンスを行います。ワクワクします。このチャンスを手にすることができる6年間を過ごせたことに八雲に感謝します。今日は私たちが伝統をみんなに伝えるために踊ります」と。

この全員が旗を翼のように羽ばたかせるダンスは、伝統としてある。毎年伝えたいテーマは違うが、必ず旗を使う。後輩へのエールであり、八雲と共に未来を描き、八雲の先生方、後輩、保護者、来賓者に6年間支えてくれたことに深く感謝する。

今回高3生は、八雲の未来のテーマとして、7年後の東京オリンピックを選択した。八雲もこのときになんらかの形で参加するようにというメッセージを表現したわけである。そして、激しく頼りになる動きから一転、最敬礼のお辞儀をした。この高3のダンスには、八雲の感性教育のすべてが詰まっていたわけである。

体育祭終了後、高2の生徒に話を聞くことができた。

「高1までのダンスとは違い、今回のキャッツのダンスは、猫は群れないから、それぞれ個性ある表現をしなければならなかったのです。もちろん、学年全体としての統一感はださなければならなかったのですが、それは難しかった。身体で憶えていくしかなかったのですが、何度もやり直しました」

「個性を出すことに集中すると、ダンスをしているときに笑顔が消えてしまうのです。楽しむこと、またそれを伝えることも大切なのがパフォーマンスですが、頭ではなく身体全体で表現できるようになるのには努力しましたね」

「支え合えるのがわたしたちだし、友情に感謝しています。たいへんだったけれど、いつも友達と助け合って、楽しかったからですね」

「でも、高3のダンスは、高2のわたしたちもがんばったけれど、今のままではたぶんまだまだです。どうやったら、あそこまでやれるのか。見ているとわからないかもしれませんが、ダンスをしているとき、全体が見えるわけではないですから、支え合うことと、イマジネーションは半端ではないと思います」

 

やはり「感覚―<?>―表現」の関係がある。そして、後輩は憧れ、先輩を尊重し思いやり、先輩は後輩を支えるのである。「思いやる―<?>―支え合い」というエニグマが新たに顕れた。

 

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