戸板 カリキュラムイノベーションへ (1)

戸板中学校・戸板女子高等学校(以降「戸板」)は、来春4月から高校1年生からスーパーイングリッシュコース、スーパーサイエンスコースを開設。同時に、そのハイレベルのコースにつながるように、中1から「レディネス」を開始する。

そのためのプランは、カリキュラム全体の再設計という営みに凝集する。4月から、教師一丸となって、カリキュラムのデザインに取り組み、コンセプト段階から一歩進んで、具体的な設計の見通しが立ったという。進化する戸板のエンジンともいえるカリキュラム設計についてインタビューした。(by 本間勇人:私立学校研究家)

※左から原田啓志先生(進路・学習指導部)、大橋清貫先生(教育監修理事)、今井誠先生(入試広報部部長)

――この4月から、かなり大胆なカリキュラムの改訂を進めているということですが、それはなぜですか。

大橋先生:今回は改訂というより、戸板のカリキュラムイノベーションだと思っています。21世紀に生きる子どもたちに求められる教育をデザインしようというのが大きな目的だからです。政府や文科省も、そのような方向性に気づいていますが、まだまだ転換には時間がかかっているのは、実際の状況を見れば明らかです。

しかし、今子どもたちはすでに新しい時代に生きています。ますますグローバリゼーションに巻き込まれていくわけです。今すぐに転換しても、速すぎるということはない。むしろ遅すぎるぐらいです。子どもたちにとって、待ったなしという緊迫感を抱いています。

私立学校は、先進的にいろいろな教育活動を創ってきましたから、待ったなしの子どもたちのために、最先端の教育をデザインするのは、むしろ自然な挑戦でだと思っています。

――価値観の大転換の時代の要請に耳を傾けているということですね。中等教育段階で、どんな価値観の転換が起こっているとお考えですか。

大橋先生:子どもたちが生きていく時代は、かつて私たちが受けた教育とはかなり違う教育になります。20世紀は、先進諸国に追いつくための教育だったのは言うまでもありません。

中等教育は高等教育をうけるための基礎学力をつけることだった。基礎とは端的にいえば、事務処理能力に代表されます。豊富な知識を正確に速く処理する力です。それは、みんなと同じ考え方ができる、同じようにできる、全体で同じことを行うという教育です。

大学入試も、おのずとそのような力をみる問題だったし、いまだに変わっていません。それは20世紀の時代には必要な教育だったという意味では大きな役割を果たしてきたと思います。

しかし、21世紀に生きる子どもたちは、グローバリゼーションを背景に、まったく違う価値観、つまり誰もができないことができる、人と違う考え方をもてる、人と違う何かをもっているという能力が求められる時代になった。

もちろん、共生というのはますます重要になってきていますが、それはみんなが同じ言動や考え方をするという、いわば同調とは意味が違うわけです。

昨今「創造性」や「コラボレーション」という能力が大切だとよく言われるようになりました。しかし、それを中等教育段階で具体的に育成するカリキュラムは設計されていません。したがって、そのような21世紀型の教育を中等教育段階でデザインしようというのが、今回の私たちのカリキュラムイノベーションの挑戦です。

 

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