戸板の理科教育が進化 女性科学者を生む授業(3)

ペンタゴンモデルは、しかし一巡して閉じてしまうわけではないという魅力的な議論に発展していった。しかも、そのループへの階梯の上昇は、はじめから生徒自らでできるわけでもない、やはり細かいトリガークエスチョンをなげかける教師の役割がカギになるという議論にもなった。

副校長の小泉豊先生は、「最終的に教師は、授業の中心から外にでて、センターには生徒が入り込んでいる状態になれば、研究者としての準備はできたということになる」と決定的議論を理科の先生方に仕掛けてきた。

川口先生は、「トライアングルモデルの限界は、大学入試準備でおわってしまいがちだということですね。研究者になるには、大学に進むのは重要だけれど、大切なことは研究者の素養の準備まで中等教育段階でしておくこと。そのためには、最終的にはペンタゴンの中心は、生徒1人ひとりで、わたしたちは見守るポジションに移動するというのはシラバスやカリキュラムの全貌をデザインするときのカギだと思います」という結論にいきついた。

この結論はIB(国際バカロレア)のディプロマの一つTOK(Theory of Knowldege)と共通するコンセプトである。

また、再び「記憶と記録」の差異について議論が及んだが、そのときの「記録」の意味はポートフォリオとしての位置づけから、さらにプロセスフォリオの位置づけに進化していた。レポートやノートは最終的には持ち歩くことができないほどの量になるから、授業の中で、生徒1人ひとりが過去にさかのぼってポートフォリオとして活用するのは難しい。

そこでICT、とくにiPadは重要な役割を果たすというところまで話が進んだとき、いやそのレベルの話ではなく、実験したときに同時に撮影して得た気づきは、さらにもっと細かい「記録」の話であると。つまり結果と結果を結ぶ過程の「記録」こそが、未知の問いを解くヒントになるはずと、プロセスフォリオの重要性が語られた。

これはハーバード大学の多重知能の第一人者ハワード・ガードナー教授が発見した知見と同じ質感である。戸板から女性の科学者がたくさん輩出される可能性が、先生方の議論のいたるところにみられた。今後の展開に期待したい。

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