桜丘のイノベーション 教育の質JUMP (3)

桜丘の教育イノベーションによって、生徒1人ひとりが翼とコンパスを持てるようになる。自分の世界、他者との世界を創り出す発想と方法。つまり、夢を抱き、夢を実現する。そして、桜丘がドリームチームになることを予感させる。

気づきのシェア

2015年OECD/PISAの調査では、新たに協調的問題解決スキルも加わる。コラボレーションは21世紀型教育の柱の一つ。協調というと、従来はそして今でも部活や行事、生徒会活動を中心に行われているが、従来は授業で行われるイメージはなかった。

ところが、iPadが授業の中に織り込まれるや、活動そのものが協調性を帯びる。ネットにつながることにより、ワールド・ブレインと協調することになるからである。しかし、そこよりも大切なところは、品田副校長によると、気づきのシェアである。

ある生徒が気づいたシーンをみんなで再生する。改めてそのシーンを共有すると、それぞれの生徒がまた違うことに気づく。この気づきの多様性が、いつもそこに居合わせていた仲間のものの見方や考え方・感じ方の違いをシェアし、驚き受け入れ絆が深まっていく。この絆が仲間を群れからチームにシフトする。ドリームチームの誕生の瞬間である。

互いの気づきは、相克にまで到る。葛藤もおこるだろう。どうにもならない極限にまで到ったときに、撤退するのか、妥協するのか、新たな道を創造するのか。映画の中では、ニールは撤退した。しかし、自分たちはどうするのか。「言葉や理念は世の中を変えられる」。極限だと思っているのは自分たちなのではないか。その自分たちが自分たちにつくった壁を壊そう。そして創造しよう。そう気づいたとき、ドリームチームが授業の中で生まれるのである。

変化のエピソード

たとえば、倫理の授業もすでに大きく変わったという。iPhoneでiPadを遠隔操作しながら、授業を進めている。授業の速度が3倍になった分、対話をしたり考えたりする時間がとれる。今でも多くの学校の倫理の授業では、哲学や思想の歴史的流れを記憶する作業がほとんどだろう。ところが、桜丘では、サンデル教授の白熱授業さながらになる兆しが今からあるようだ。

サンデル教授の授業自体、ICTがバッチリ活用されているのは、テレビを見ていてよくわかる。iPad導入によって、普段の授業でもそれが可能になる。

体育の授業も変わったという。オリンピックの番組を見ていると、iPadやパソコンに瞬時に打ち込まれたデータをみながら、監督やコーチがアドバイスをしているシーンが映されるが、それがそのまま授業に入り込んでいるという。

あるとき、綱引きをしていたが、どうも態勢や協力の仕方がパワフルにならない。グランドでもwifiが使えるから、教師はすぐに綱引きの達人たちの動画を検索し、生徒たちとシェアした。すると、みるみるうちに生徒たちの綱引きは上達したということである。

iPadが浸透する気遣い

このように来春の入学生を迎える準備が着々と進んでいるのには、品田副校長の気遣いがあった。それは、教職員全員にiPadを渡した日のことである。ふつうだったら、事前にOSや必要なソフトなどをインストールするキッティングが済んでいるものを渡すのだが、桜丘ではそうしなかった。

パッケージに入ったままのiPadを渡した。それは、来春生徒に渡すときの光景そのままである。そして、講師の研修によって、自分たちでキッティングをしたのである。教職員は、生徒と想いを共有すればするほどモチベーションは燃える。

想いをシェアする気遣い。これこそがドリームチームが生成される源泉であろう。

 

 

 

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