順天 新設「Sクラス×Eクラス」の躍動(1)

今年、順天中学校高等学校(以降「順天」)は、高1からサイエンスクラス(Sクラス)とイングリッシュクラス(Eクラス)を新設。3か月目を過ぎようとしている現時点で、新設クラスのメンバーのアクティブで躍動感あふれる行動の構えができてきたと、教師も生徒も確かな手ごたえを感じている。同時に、先生方は、この躍動感が順天全体の雰囲気をさらに生き生きとしたものにする大きな契機になることも期待している。躍動感が生まれる理由を、長塚校長、片倉副校長、中原国際部長に聞いた。(by 本間勇人:私立学校研究家)

順天の学びの基礎構造

順天の学びの構造全体像は、冊子にきちんとまとまっている。このスタンダードに合わせて多様な教育活動がダイナミックに動いている。それはまるで、楽譜・シナリオとオペラの舞台の関係に相当する。この楽譜やシナリオを、先生方が互いに読み込んでいるから、ビジョンを共有でき学びの構造を現実化できる。

冊子を全部ご紹介することはできないが、上記写真からビジョンとそれが浸透する学びの場が、順天独自のデザインになっていることがわかる。一般には、ビジョンはあるが、その学びの場は、教科活動であり、その教科を「系統学習」「探究学習」「統合学習」というようなカテゴリーに分けることはない。

しかし、順天の場合は、学びの基礎構造として、まずは3つの場をデザインする。このことによって、対話を活かして授業を組み立てたり、実験やフィールドワークから論理を組み立て一般法則を見出していったり、コラボレ―ションによって創造的な活動をしたりと、最適な学びの方法を場に応じて生徒が使い分けできるように育つのである。

 

学びの行動特性のポートフォリオ

学びの方法とは、生徒にとってはどのような言葉や行為をとるかという具体的な活動に対応する。したがって、順天では、生徒の行動特性をエゴグラムという心理学に裏付けられた指標を使ってつかんでいいる。上記の写真は、平成23年度の高3の特性。他校調査・前回調査・今回調査の順でならんでいて、順天の生徒の特性と生徒の変化を分析できるようになっている。このような調査が年2回、全学年で行われており、入学から卒業までの変化を1人ひとり、クラス単位、学年単位で分析できるようにきちんとポートフォリオ化されている。

これによって、生徒1人ひとりのコミュニケーションの行動の状態が汲み取れるという。また、保護者にも研修を行い、エゴグラムを作成してもらっている。これによって、面談の時に、家庭でどのようなコミュニケーションなどの行動をとれば、モチベーションがアップする雰囲気を生み出せるか、話し合うきっかけになっているというから驚きである。行動特性という評価を、互いに自己評価の段階にまで引き寄せながら、お互いのイメージや印象のズレを話し合うことができる。

この双方向に話し合う仕掛けが、先述した学びの基礎構造にしたがって、あらゆる場面で少しずつ方法を変え、最適化して展開されているのが、順天の教育活動なのである。

(左から中原国際部長、長塚校長、片倉副校長)

双方向を大切にする教師陣

たしかに、データというモニターに学びの行動特性を映しだしながら、話し合えるというのは、何をどのように改善していくのかということが具体的によくわかる。したがって、方法論なき根性路線教育に陥らないところは、順天の教育の優れたところである。

しかし、もしもデータをそのまま鵜呑みにしていたのでは、もともと多様でダイナミックな行動を固定化させ、形骸化させてしまう落とし穴もある。したがって、データの活用の仕方だけではなく、データの見方・考え方・読み方について、常に教師は話し合っている。

同じデータでも互いに見方は違う。それゆえ、クリティカルに喧々諤々やるのである。これからご紹介する順天全体で繰り広げられている双方向的な教育活動の発信地は、実は教師同士がどんなに忙しくても双方向的に話し合う時間を惜しまないところにある。論より証拠、今回3人の先生方にお話をお聞きしたが、その最中でも、喧々諤々であった。そしてそこから明快な結論が常に提示されたのである。

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