工学院「科学教室」 IB学習者像の創出(2)

工学院の中学生が、好奇心のゲートをくぐり抜け、世界を探求する道を歩き始めているのを了解できた。今度は高校生の活動を見に行った。するとIBの10の学習者像すべてが融合しているのがわかった。

(グローバルイシューの大きな問題である環境問題に取り組む未来のエンジニア)

自動車部の活躍は圧巻だった。エコカーを組み立ているわけだが、この感覚は、10の学習者像のうち、とくにBalanced バランスのとれた人であることを証明していた。

バランスの取れた人とは、IBでは、人間関係調整パワーの持ち主と言うことではない。科学技術と自然や社会との平衡を追究する人という意味である。客観性と主観性を分断しないで、その平衡やリンクを諦めない。それが自然環境を持続可能なものにする技術を生むのである。

最近では、システム思考とデザイン思考のバランスを追究する人という意味に置き換えられると思う。

さらに、エコエンジンの原理を考えていくとき、ラジカセや電球が機能するかどうか、さりげなくプレゼンしていたが、これがIBの学習者像の10個目のReflective 振り返りができる人という側面である。振り返りというのは、たんなる反省ではない。内省し、本当の問題を見出すためのモニタリング装置を創り出すという学びの方法論である。電球が点くということはどううことか考えるモニタリングのシステム思考は、振り返りの基礎である。

昼休みになってしまったが、自然科学部の高校生とOBは、快くプレゼンをしてくれた。葉脈標本の作り方を子どもたちといっしょに行い、最後はしおりにしてお土産にして渡す。自然科学への道標として持ち帰ってもらうというプログラム。

 

工学院はIBレベルの教育を目指している。IBではTOK(思考システムの理論)という科目がある。文系的には哲学教科であるが、理系的にはシステム思考である。

それはともかく、自然科学部の高校生とOBと、生物やセラミックの話になり、それがバイオテクノロジーとしてリンクしているという話や、海洋公害や自然保護と地元の生活の複雑な矛盾をいかに解決すべきかという話にまでどんどん広がった。

つまり、科目横断的に探究の問いがあること、それを解決するためにはどうしたらよいのかということは、テクノロジーの話だけではなく、社会経済的な話にもつながっているということであるが、これはTOKの発想そのものである。

そのような多角的な視点はどうしたら身につくのかと、TOKのプログラムで学ぶ問いを投げかけてみた。すると、彼らは、科学の知識を憶えようとしても意味がない。その周辺の雑学や番外編のトピックが、教科書的な知識につながったとき、身になるんですよと。

議論がかみ合うとはこのことだ。つまり彼らは、IBの学習者像を体現しているのである。

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