前回の記事に引き続き21世紀型教育機構加盟校の取り組み紹介と、関係団体からのご報告です。
聖パウロ学園
一昨年まで21世紀型教育機構の事務局長として機構を牽引してきた本間先生が、聖パウロ学園の校長として参加されました。
中学部がない聖パウロ学園は他の21会校とは異なり、アクレディテーションも独自の基準を創っていく必要性を感じている。哲学を神学に結びつけることで、あるいは学習理論をいったん捨てることで子どもたちがいきなりダイレクトに世界の根本に触れるような体験を与えていくことが可能になる道を切り拓いていきたい。
現代社会の分断や格差を乗り越えるためには、ワークショップ言語による世界体験が必要で、児浦先生や田中歩先生、そして田代先生や新井先生たちの若い力を借りながら進んでいきたい。
新しい方向性に確信を持っているといった、力強いお話でした。
文化学園大学杉並
文大杉並の副校長青井静男先生からは、次のようなお話がありました。
今春から哲学授業が開始された。まだ実施回数は少ない段階ではあるものの生徒や教員の反応は上々で、順調に滑り出している。
英語教育については、高校から入学してくるダブルディプロマ(DD)コース以外の生徒についての成果もきちんと可視化されるよう、英検などの検定試験受検を徹底していく。
もっと早くDDコースに参加したいという声に応えられるよう、来年に向けてコースの整備を進めている。このコロナ禍においても、UBC(ブリティッシュコロンビア大学)など、海外大学への進学は増えているなど、DDコースは、着実に成果を上げている。
21会が発足した頃からDDコースを開発し育ててきた青井先生は、簡潔な報告の中に自信をのぞかせていました。
八雲学園
八雲学園からは高校部長の菅原久平先生に促され、若きリーダーで英語科主任の近藤隆平先生がお話されました。
もともと八雲学園は「本物」に触れることを重視する学校であり、オンライン授業への移行については慎重に進めてきたが、今年はいつでもスムーズに移行できるほど習熟してきた。また昨年の経験は結果的に対面授業における自分たちの教育の強みを振り返る良い機会になった。
今年は新たな取り組みとして、ホームルームクラスをネイティブの先生が一人で担当することも始めている。そういうことが可能になるのも、八雲学園で長く教鞭を執り、特別な資格を持っている先生が在籍していればこそであると感謝している。共学化して3年目を迎える今年は入学者数の上でも男女が同数になり、新しい教育にチャレンジするには良い時機が到来した。
和洋九段女子
和洋九段女子校長の中込真先生からは、21CEO加盟以来力を注いできたPBL授業の成果が出始めてきたとお話がありました。
受験生の質に変化が表れていて、これまではおとなしく保守的な生徒が多かったが、この数年は積極的で活発な生徒が増えてきた。また、教育評論家が和洋九段について表現する際のトーンにも変化が見られるなど、自分たちのイメージが以前とは変わってきたようだ。
特に2021年のPBL入試においては、受験生の数が多かっただけではなく、合格者が多数入学手続きをしてくれたことは、継続してやってきたことが実を結んできたと実感している。
新しい取り組みとしては、AIを活用したディスカッションの評価に取り組んでいて、PBLの採点に新しい可能性をもたらすのではないかと期待している。こういった取り組みを21CEOで共有し、ぜひPBLを広げていきたい。
海外に行けないという状況についても、安易な代替プランでお茶を濁すのではなく、より高いプログラムの開発を心がけている。
中込先生は、お話の最後で大学入試の共通テストの内容にも触れ、まだ十分に期待できる内容になっていないが、知識重視から思考力重視のものにもっと移行できるよう、一石を投じていきたいと意欲を示していました。
新井教頭先生からは生徒の変化についてコメントがありました。
改革1期生が高2生となり、企業や他校との連携を持つなど、主体的にどんどんアクションを起こしている。5~6年前までの雰囲気からは信じられないような変化があり教員の側も刺激を受けている。オンライン授業のハイブリッド化については、対面授業をどう再現するかという現状の延長で考えるのではなく、理想像からバックキャスティングで考える発想を静岡聖光の事例からヒントをもらった。
新井先生は、オンライン化の効用について、女子生徒にとっては社会とつながる際のリスクを回避できる面もあることを指摘し、今後もうまく活用していきたいと抱負をお話されました。
※今回は日程の折り合いがつかず、ご出席がかないませんでしたが、富士見丘、三田国際学園 も 21世紀型教育機構がアクレディテーション認定をしている加盟校です。
関係団体より
首都圏中学模試センター
首都圏中学模試センター取締役教育研究所長の北一成さんからは、中学入試市場の動向についてお話がありました。
昨年はコロナ禍の特殊事情で特に前半は会場での模試が実施できず、受験生も激減したが、後半からは通常に戻しており、今年度は、一昨年と比較しても受験者が増加している傾向にある。従来型にリバウンドしようとする動きも一部に見られるが、保護者の意識としては新しい教育や入試を求めているので、21世紀型教育機構の学校にはぜひその期待に応えていってほしい。
SpesDen
SpecDen の Co-Founder & CEOである 久保山 皓平さんからは、 PBL動画をアーカイブして検索するシステム、Okedou PBLについての説明がありました。
アクレディテーションやSGTアワードの選出など、動画を活用する可能性は広がっている。PBLの授業スタイルが普及する上で、思考コードや授業アクティビティに紐づいた検索システムは有効である。より多くの先生方に使ってもらえるように使い勝手を改善していきたい。
アクレディテーションチーム
株式会社FlipSilverlining の福原将之さんと株式会社カンザキメソッド代表取締役の神崎史彦さんは、アクレディテーション開始以来、授業評価、レポート作成、改善点の提案などに従事していただいています。あいにく、この日は話をする時間が取れませんでしたが、2021年度も引き続きアクレディテーションを強化していくチームを構成していただく予定です。
最後にー21CEO理事 石川一郎先生
石川先生は、オンライン定例会の最後でご参加の先生方の眼が疲れてきていることをねぎらいながら、簡潔に次のようなお話をされました。
1)脱炭素のニュースが目立つようになっている。脱炭素社会に向かっていくのが目の前にいる子どもたちである。
2)格差社会をどう解決するのか、このことが私たちに突き付けられている。
3)人生の楽しみを考えること、こういうことも哲学に結びついていくのではないか。
石川先生はいつもながらのユーモア溢れる語り口で、「大変な時期ですが、来年の今頃には笑って集まっていることを願いましょう。力を蓄えていく1年であると考えています」と結びました。