第1回21会カンファレンスのファイナルスピーカーは、土浦日本大学中等教育学校の校長中川弘先生。自ら中1の「根っこをつくる未来授業」を実践されている。中1の時期にグローバル人材の根っことして「自信と誇り」を養うために、いわばself-awareness(SA)のプログラムを制作している。このSAこそ英語教育のリベラアーツ的な基準であるCEFRの要諦である。ポートフォリオという概念の重要性がここにあると欧州評議会では語られている。根っこの未来授業をメタファとして21会の信念を感じていただきたい。(by 本間勇人:私立学校研究家)
21世紀型教師は常に自問自答する
21会の信念について、私が行っている授業の紹介を通してお伝えしようと思います。私の試みが、少しは21世紀型の授業になっているのか、といつも自問しながら授業を行っています。やっているのは12歳の中学1年生の授業で、パワーポイントで表示する言葉の中に授業のテーマが隠されている仕掛けをしています。そこから生徒が自ら何に気づき、未来像をイメージするのか毎回楽しみです。
トリガークエスチョン
たとえば、第三回目の授業では「カバからクジラ」という中にメッセージをこめました。岡田先生が発表した論文で、馬とこうもりは同じ種類の動物という論文があります。こんな異質のものが実は同じなのかと、子どもたちはびっくり。そして次に馬につばさがついたもの、ペガサスがいると話は飛ぶわけです。空想のものだけれども、昔にはいたのではないか、人間の中にあったのではないか、などの発想も広がります。
次にクジラの先祖はカバだという論文もあることを紹介してみます。カバの集団の写真を映し出します。1匹のカバが大海原にいって、海にいってクジラになったのではないかと思いをみんなで馳せる。そしてリフレクション、君たちも同じように変わってきた結果ではないかと。トリガークエスチョンになっていることを期待して。
気づきと対話
この後、生徒たちに何がおこるかというと感想をノートに書き始める。気づきが起こるのです。それに対して私はノート1ページくらいの返事を書く。これが子供たちにとって、さらにトリガーになる。もうちょっと違う角度から発想を出そうとか、たくさん書かなきゃいけないとか、いろいろ思うのでしょう。
回を重ねるごとに生徒のノートが良くなってくるものです。書き方を教えているわけではないのです。でも根っこができれば、自分の中にオリジナリティが形成されれば、書きたいことが生まれてくるものです。
未知との遭遇 不安を乗り越えてゲートをくぐる そして自力で歩く勇気
未来の子供たちが世の中に出ていくときに必要なのは「自信と誇り」だと思う。未知との遭遇の中で、様々なことに直面します。あるときは、不安で一歩も進めないかもしれない。ゲートをくぐれないかもしれない。しかし、自分の根っこに「自信と誇り」を持っていることを思い出せば、再び歩きだせるでしょう。
だから、その根っこが育つのを見守らないといけない。また、夢を語れる青少年になってもらいたい。親にも話しますが、子供たちをバカにしてはいけない。子どもたちがやりたいということをのばしていく。支援をしないといけない。私も、生徒たちが、気づきを得られるように、いろいろな教材を考えてい。たくさんの材料を与えていきたい。いろいろ対話をしていきたい。
子どもたちはノートを親に見せます。保護者の私そして自分の子に対する信頼が増えます。その信頼感は、生徒が堂々と育つ構えを支えます。最初はどことなく自信がなく、不安な子供たちが、大きく変化していきます。
1人ひとりのネバーエンディングストーリーを支援する
この変化を通して、世界に貢献しよう、リーダーになろう。これが21世紀型教育の大きなテーマだと思っています。自分は何のために勉強をしているのか、将来自分はどうなっていくのか、全部世界に貢献していくためなんだとつなげていきたい。そして、子どもたち1人ひとりが、自分に合った結果をそれぞれだせればよいと思います。1人ひとりのネバーエンディングストーリーを支援していきましょう。それが21会の信念です。