八雲学園の文化祭(3) 「総合力」の集大成
リサーチ展示
リサーチ展示
八雲学園の感性教育の極限値はドリル部に結実していたが、実は八雲学園の感性教育スタンダードが文化祭で公開された。その1つは中3の英語劇。そしてもう1つは各クラスのリサーチ展示。さらに部活などの企画展示。
八雲学園といえば、破格の英語教育、進路指導、チューター制度、芸術鑑賞という4本の教育の柱が有名。そして、これらを本物体験で培う感性教育で統合する「総合力」で日本一であることも有名であるが、その集大成が毎年秋の文化祭で公開される。教育の「総合力」とは何かを追った。 by 本間勇人:私立学校研究家
八雲の体育祭体験から、重要な問いを投げかけられた「感覚―something―表現」「思いやる―something―支え合う」という2つの軸をどう考えるのか、somethingとは何であるのか。そのヒントは体育祭実行員という、プロデューサー、デザイナー、舞台設定役、タイムマネジメント役、誘導役などのまマルチプレイヤーの存在である。彼女たちは、まるで劇団のバックヤードの動きさながら組織的に活動するのだ。
八雲の体育祭は、「感覚―something―表現」のパフォーマンスを支えないがら生み出している芸術祭。しかも、ここには勝者を祝う一方ですべての生徒が楽しむという軸がもう一つある。
八雲学園(以降「八雲」)の体育祭は運動会ではない。芸術祭である。たしかにスポーツやダンスが目白押しであるが、それはミュージカルさながらの舞台であり、自分を表現し、友達と楽しむシーンを創り出す芸術の場である。舞台は、それを運営するプロデューサー、演出家、監督、舞台運営、デザイナーなど多様な人々によって、組織的にクリエイティブに創造されるアートパフォーマンス。
八雲学園の体育際でも、生徒は俳優になり、演出家になり、サポーターにもなるという、マルチロールプレイヤー。八雲の感性教育を体験した。(by 本間勇人:私立学校研究家)
今回の取材の過程で、エール大の学生が八雲学園でパフォーマンスと講演をするという情報を入手した。それで、もう一度その様子を取材させていただくことにした。エール大学の4年生古賀健太さんと仲間のJulian Reidさんが登場した。古賀さんはメディアでも登場してくる有名な才能者。灘高卒業後、ハーバード大学、エール大学に合格し、後者を選択。現在4年生。
学校プロジェクトをハーバードやブラウンなどの米国トップクラスの大学生とコラボして、世界の高校生に未来の才能の翼を広げてもらうことを目標にしている。日本では8月に小豆島でサマーキャンプを行うという。
放課後吹奏楽部の練習風景の取材機会があった。そして、筋トレ、感性、思考、学び、組織マネジメント、対話・・・等々総合力が結集した驚きの活動であることについて、部長、副部長が丁寧に語ってくれた。70名強の部員がいる人気の部活。八雲の高密度の「楽しい想い」について紹介したい。
休み時間に、菅原先生のところにやってきた高2の生徒がいた。中学受験の時に塾の先生より前に、八雲の先生と握手をしてしまった。それほど入りたくてたまらなかった。そして、あと1年半で卒業しなくてはならないことを、今から寂しく思っている。それほど八雲学園は楽しいというのである。
取材の日は、ちょうど期末も終わった時期だったため、チューター面談も行われていた。八雲学園の教育の4本柱のうちチュータ制度もその一つ。中3までは、生徒は、担任の先生以外に相談やアドバイスをしてもらえる先生をチューターとして選ぶ。毎日いっしょに時間を過ごしている担任の先生といつもはいっしょに過ごしていないチューターの先生からもらうアドバイスは、角度が一致していたり違っていたりする。自分を複眼的に見ることで、自分のオリジナリティや自分らしさが見えてくる制度。