Created on 9月 30, 2013
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文化学園大学杉並中学・高等学校(文大杉並)の薔薇祭は、アートの精神がほとばしる大イベントである。数あるイベントの中でも圧巻だったのが、全国の高校でもトップレベルとして有名なファッションショー、そして、感受性豊かな「内面」を「全身」で表現するダンスパフォーマンスである。学習指導要領の観点を遙かに超える教育活動の成果の一端を紹介する。(鈴木裕之:海外帰国生教育研究家)
文大杉並のファッションショーについて、パンフレットの小冊子扉に松谷校長先生が寄せていた文章の一部を引用する。
文大杉並の薔薇祭の目玉は間違いなく「ファッションショー」だと答えます。本校独自のショーがステージ一杯に繰り広げられる内容は全国の高校生のレベルではトップのものと言えるでしょう。本校のファッションショーは、衣装のデザインにはじまり、縫製、着付けから、ショーの演出、モデルの歩き方まで、すべて家庭科の選択被服造形Aを履修している高校2・3年生の手によるものです。被服の勉強が大好きで、履修している高校生46名が、夏休みも返上し、さらに校内合宿を行って、このショーを作り上げました。本校の建学の精神である‘感動の教育’「燃えよ!価値あるものに」をそのまま実践したものがこのファッションショーだと思ってくだされば有難いと思います。
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音響や照明・映像、ヘアメイク、パンフレットやチケットのデザインに至るまで、すべて生徒たちが行っているというのだから驚きである。どの生徒も複数の役割を担っていて、縫製長を務めながらモデル、あるいはモデルをやりながら、裏方もこなすといったマルチタスクのチームワークである。イベント終了後に会場整理のためにインカムをつけていた生徒に話を聞いたが、彼女もやはり出演者を兼ねていた。
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デザインに必要なコンセプトワーク、そこには想像力が必要である。そしてそこから創造力が発揮される。コンセプトを形にする表現力やコミュニケーション力、さらに役割を決めて完成へと導くコラボレーションの力・・・・。こういったアートの創造的活動が、主に放課後の時間の、生徒の自主的な居残り、あるいは合宿等によって準備されているというのが、文大杉並の懐の深さであり、全国レベルの部活を数多く擁する伝統なのである。
国際バカロレア(IB)が、TOKやCAS、Extended Essayといった、教科学習ではないコアカリキュラムに支えられているのと同じ構造がここにある。まさにIBにおけるCAS(Criativity, action,service) と同じ精神が文大杉並の教育エンジンとなっている。家庭科という教科の枠組みから発想していたのでは、とてもこのようなファッションショーは創り出せまい。
このような教育的バックグラウンドの深さがあるからこそ、文大杉並のグローバル教育は、実践的で本格的なものになっていくのだ。例えば、修学旅行では、パリとローマを訪問するが、オートクチュールが開催される2都市を選んでいるのは、単なる偶然とは思えない。もちろん直接ファッションショーを見に行くということはないにしても、そういうアートの感覚が溢れる都市での体験を重視しているのである。
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英語コースの生徒は、イギリスに語学研修に行く。
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2015年4月から始まるグローバルコース(仮称)では、日本と海外の卒業資格が同時に得られるプログラムになるという。それによって海外大学進学の道も大きく拓かれることになる。もちろん、文大杉並の教育の質は、進路だけに集約されるものではく、中高6年間の教育の質の豊かさに表れているのであるが、日常をそこで過ごしている生徒や先生以外の人間にとっては、それを垣間見るチャンスというのは、文化祭などの公開イベントの機会しかない。
一度足を運べばその学校の教育の質は分かる。1校では見えなくても、2校、3校、・・・と訪問すれば、その質の違いが見えてくる。そして、進路実績等の指標だけでは、いかに多くの情報を見落としていたかということに愕然とするはずである。文大杉並の教育の質はそれほど桁外れに凄いのである。
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