近藤彰郎会長 新春インタビュー(1)

【2014年の私立学校】

    <今こそ「感性教育」を> 近藤彰郎会長新春インタビュー

2014年を迎えるにあたり、21会サイト編集部は、21世紀の私学人である近藤彰郎先生(一般財団法人東京私立中学高等学校協会会長、八雲学園理事長・校長)に、今年の私立学校の抱負と展望を聞いた。

近藤先生:あけましておめでとうございます。今年も子どもたちに、今ここから未来を変えていける力を育てていきます。過去は変えられない、しかし今ここから未来は変えられます。

毎年新しい年を迎える瞬間、つまりミッドナイトは、独り部屋で、耳を澄まして新しい意志の声を聴きます。

そして、今年は、「感性教育の完成である」と強く心に決めました。

時代は今も昔も常に変わります。特に昨今ではグローバルな流れは避けられません。ですから政府や文科省は、国際競争の中で政策を展開しています。その都度最適な政策を望むところですが、政策が浸透するには時間がかかります。その間に世界の情勢が変わることもあります。

しかし、私立学校は、民と民の関係を土台にしていますから、時代の真の要請を見極め、激しい変化に翻弄されることなく、未来をつくる人間を育てる本物の教育を日常の中で積み上げていきます。変えるべきところは即対応し、不易の部分は変えることなく引き継いでいくことができるのです。

私は、その本物の教育として、その時代時代が生み出す新しい道具に振り回されるのではなく、もちろんそういう新しい道具や技術を知ることは大切ですが、それはあくまで教育全体の一部ですから、教育の総合力こそ重要だと思っています。

そして、その教育の総合力を積み上げていくことこそ「感性教育」だと確信しているのです。

たとえば、グローバル人材と言ったとき、国際競争力で勝つことばかりが目標とされる。たしかに、負けるわけにはいかない。しかし、もしそれだけだとすると、極端に言えば、勝つためには何でもするとか、自分さえ勝てばよいという方向に針が大きく振れる。

私立学校は、そういう偏った力をもった人間を育てることはしません。総合力というのはそういうことです。つまり、競争の大前提に、人間と人間の信頼、互いをリスペクトするという相互尊重の心根が大事です。

人間勝ち続けるということはない。負ける時もある。だから、勝った時に、負けた人間の痛みを分かる感性がとても大切なのではないでしょうか。

この感性を育てなくして、人間の総合力は育ちません。K1でも空手でも、ルールの中で闘います。勝てばそれでいいということはないのです。

そのルールは、しかし、ルールブックに書かれているものだけではありません。それを読んで身につけるだけではまだ完全ではないのです。

人間と人間の絆という目に見えないルールを身につけ、それを実践してゆく。「道」とか「品性」と呼ばれるものかもしれません。そういうものをすべて含めて、私は「感性教育」と呼んでいます。

都内の学校に通っている児童生徒数の38.8%が私立学校の生徒です。高等学校に限れば、55.8%です。一般財団法人東京私立中学高等学校協会は、そのような私立学校が連帯しています。

それぞれ建学の精神を持っていて独自の教育を行っていますが、たとえば、学力育成に集中する偏った教育理念を有しているところはありません。私の言う「感性教育」という呼び方はしていないかもしれませんが、教育の総合力を大切にしていることは確かです。

言うまでもなく、協会は、それぞれの学校という現場を拠点に連帯しています。ですから、私も八雲学園で積み上げている「感性教育」をモデルに多くの私立学校の先生方と語り合えます。

日々の生活に根差した教育実践の中から生まれてきた本物教育を共に分かち合い、それを発信し続けていくことは、東京都の私立学校の生徒の人数を考えてみても、私たちは大きな役割を担っていると思っています。

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