佼成学園女子の江川昭夫教頭は真正な21世紀型教育の先駆者である。偏差値モノサシとは真逆の生徒1人ひとりの考える力を評価するPISA型入試を開発したのも、中高の思春期時代に留学制度を設定したのもどこよりも速かった。特進留学コースのイマージョン授業率は30%にもなる。
そして、毎年英検1級取得者を輩出、TOEIC700点以上は12人にも及ぶ。結果、国際関係・外国語系の進路希望者が相次ぎ、いよいよ今年の卒業生からは海外大学進路に舵をきるようになるに到った。この佼成学園女子の進化・飛躍はいかにして可能か?カリキュラムイノベーター、私学人江川昭夫教頭に聞いた。by 本間勇人:私立学校研究家
佼成学園女子の飛躍はあくまで内生的動機づけ
江川先生:おかげさまで佼成学園女子は、受験市場や教育関係者の皆様からエールをいただき、支持していただいています。OGから折に触れ、自分のアイデンティティは、佼成学園女子で体験できた多様な機会と先生方の支援のおかげで形成されたと便りをもらうとき、一番の教育の成果の証明だと勇気をもらいます。
エビデンスベースの教育とか外生的な尺度で教育を測ることも大切ですが、なにより内生的な生徒の成長こそ本物の証しではないでしょうか。
どこか外部から教育道具を持ってきて、それを学内に導入して一気にわたしたちの教育ができあがったわけでありません。
一年一年、生徒の悩みに耳を傾け、生徒の成長ぶりに一喜一憂しながら、生徒がどこでターニングポイントを迎え、大きく伸びていくのか、ただひたすらその内生的な検証の積み上げが、実績として結実していったわけです。
教育は型だ、道具だ、プログラムだというのもよ~く理解していますよ。しかし、大切なのは、目の前にいる生徒にとって何が最も必要なものかという、教師の問題意識ですよ。
たしかに、結果的にプロジェクト学習になっているし、授業のイマージョン率もあがっています。英検1級取得者も毎年のように出ます。大学合格実績もどんどん右肩上がりになります。しかし、それは日々生徒とコミュニケーションをして、あるときは心配になり、どうしたらよいのか創意工夫をし、あるときは成長ぶりに大きな喜びを感じるその刹那に見える成長の原理を積み重ねていく以外に誠の道はないでしょうね。
学校経営はトップダウンですが、学校教育はボトムアップですよ。経営がしっかりしていなくては、教育の足場はもろく、そこで活動する教師も生徒も不安でしょう。しかし、教育は高いモチベーションと豊かな好奇心からしか始まりません。いまここで何が問題で、それをどう解決するのか、生徒が自分で考える時間をシェアする教師の存在価値は、ボトムアップでしか生まれてこないのです。
学校経営は、特に今は、時代の大変革期です。日々どんなに良い教育を行っていても、荒波や巨大な嵐に注意していないと、すぐに台無しになってしまいます。時代に翻弄されないように舵を切らねばならないでしょう。それには内側の都合で行動していたのでは、気づいた時には飲み込まれています。
ですから、トップダウンは重要な意思決定として大事なのです。しかし、その前提には、守るべき高いクオリティがなければ意味がないわけです。トップダウンの学校経営とボトムアップの教育活動は両輪です。佼成学園女子は、この経営の倫理と教育の論理のダイナミックな平衡を大切にしてきました。これからもしていきます。
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Submitted by flloyd on 月, 2014/03/17 - 19:20