富士見丘の理事長・校長吉田晋先生は、新年度の教職員会議で、今年SGH(スーパーグローバルハイスクール)アソシエートとして、来年度のSGH指定校になるための十全の準備をしていくことを宣言。教職員一丸となってチームプレイをしていくことになった。
4月のワールドカフェ風の新しい説明会も、対話やディスカッションをベースにするスーパーグローバル教育へのデモンストレーションとして行われ、吉田校長は、SGHへの道を歩んでいくことを学外にも宣言することとなった。by 本間勇人:私立学校研究家
スーパーグローバル教育の肝は、なんといってもPBL(プロジェクト型学習)の新しい教科の開発。テーマと学びの方法、学びの評価を、教師と生徒が学習者として位置付けられ、教師中心主義でもなく、生徒中心主義でもなく、学習者中心主義的にカリキュラムを創出する。ある意味IB(国際バカロレア)の理念と共通する教育改革である。
富士見丘はすでに、生徒会が中心となり、教師とばかりではなく、地域とも協力し、学校や地域で出る生ごみを肥料転換するエコ活動を行ってきた。その実績が国際的な環境活動を行っているアラブ首長国連邦にも認められる、ザイード賞にもエントリーされたほどである。
この身近なエコ活動が、実は世界の問題につながっているというグローバルイシューが背景にあることに気づいた富士見丘の生徒、そして教師は、テキストからではなく、自分たちの活動の広がりから掘り下げていける手ごたえを感じた。
この個人と世界のつながりの広く深い学びは、生ごみのリサイクルを超えて、世界の未解決問題を学ぶプロトタイプになると気づいた。説明会では、生徒も参加し、受験生・保護者にプレゼンした。調べたことを発表するだけではなく、体験に基づいた発表はまさにクリエイティブなスーパープレゼンになり、参加者と感動を分かち合った。
日本の教育を変える根本は、実はこのような生徒の活躍を生み出す仕掛けである。その仕掛けを創る場はバックヤードと言われる。SGH構想を打ち出した文科省は、実はこのバックヤードのプログラムこそが暗黙知の生成を促す場であり、ここに教職員が全員参加することで、教師が変容する、生徒が変容する、保護者が変容する、ステークホルダーが変容する・・・よって、日本の教育が創造的に改革されるのだと考えている。
そのねらいは、富士見丘では、はやくも生まれている。SGHのプログラムを考案する多様なプロジェクトチームができ、まずプロトタイプをつくり、それを全員でリファインする準備がはじまった。
コンテンツやプログラムを創るのに知恵を出し合うミーティングは頻繁に行われている。毎日の生徒指導や授業はもちろん手を抜けない。限りある時間は資源そのものに変容した。
しかし、コンテンツに沈潜していくと、おもしろいが、期限院間に合わない。木をみて森もみる必要があると、有志が集まって、グランドスケジュールの調整をしはじめる最初のペンギンも出現し始めた。
さらに、「環境と生徒の身体活動・健康」に関するシステムデザイン的手法の研究をしている慶応義塾大学の伊香賀俊治研究室との協働研究の打ち合わせもあり、一挙に年間スケジュールも概要が決まった。5月下旬からスタートする。研究の基礎を学び、データ集計の方法やフィールドワークを伊香賀教授及び院生の助言に基づいて探究していく。そして実際に研究者に近い研究活動を1年かけて行っていくというのだ。
富士見丘の生徒は、研究室の方々を招くだけではなく、自らもキャンパスや研究室を訪れる。最近日常の大学の授業に参加するWCVが流行っているが、これはさらにAdvanced Learning Campus Visitという新しいキャリア教育の一環だし、新しい高大接続の動きである。
富士見丘のバックヤードの動きが、学内外、教育界にも与えるインパクトは強烈ということになろう。