八雲学園 小鳥が永遠の夏を飛ぶわけ

来週10日(木)、八雲学園は合唱コンクールを開催する。それにむけて、特別練習期間が始まっている。同学園の行事はほとんどが6年全体で行うから、高3生にとって、一つひとつの行事が卒業式である。合唱コンクールで卒業式、体育祭で卒業式、文化祭で卒業式、各部活で卒業式、そして来春卒業式本番を迎える。

まるで小鳥が遠くに飛翔するために親鳥が力の限り最後のエネルギーを注いでいるかのようだ。練習すれば練習するほど、力がタメられていくかのようだ。その様子を取材した。by 本間勇人:私立学校研究家

特別練習期間のうち土曜日は、めいっぱい練習できる。まずは、クラスルームで自分たち独自の練習をする。

クラスで歌っている様子を見た段階で、ものすごく良い出来ではないかと思ったが、各クラスにいる実行委員は、「まだまだこれからです。クリアしなければならない課題はまだあるんです。教室での声では、まだ十分ではないのですよ」と、体育館の練習にみんなで移動が始まった。

体育館では、学年ごとで練習をする。課題曲はどのクラスも同じだから、はっきり出来具合の差がでる。自由曲は、選曲、歌詞の意味などクラスごとに特徴があり、互いに刺激になる。

菅原組の実行委員は、

「6年間ともに学び活動してきましたが、共有している想いを伝えることのむずかしさは、いつも立ちふさがります。そこを乗り越えるために協力しても協力しつくすことはないのですよ。昨年自分たちは声を出し切れない部分がありました。

自由曲で、私たちの6年間の想いをアカペラでうたう部分がでてきます。大切な詩ですから、言葉をはっきりと伝えなくてはなりません。そして何と言っても声の大きさですね。想いをどれだけ、澄み切ったそれでいて大きなインパクトのある声の大きさで歌えるかです。でもまだ練習する時間はあります。今年は優勝します」と、

菅原先生と固い意志を表明してくれた。

体育館で、歌ってみて、課題が見えてきたところで、各クラス個別の教室で、声楽の金子先生に個別指導を受けた。

金子先生は、

「だいぶよかった。きれいだった。でもそれだけでは、高3生がうまく歌ったで終わるわよ。ここよ。ハートよ。想いをぶつけなさい」

とクリアする部分を集中的にトレーニング。

合唱チームに細かい指示を出しながら、指揮者とピアノ演奏者と譜面の再編集の話もしたりする。

そして、一音一音確実に澄みきっていく。さよならいとしいものよ。おまえがいてくれるからわたしは飛んでいける。おまえがいたから小鳥は歌えたんだ。でもこここがどんなに楽しくても、さあ大きな魂の世界に永遠の夏に飛ばねばならないときが近づいている。さあさようなら、おまえ、いとしいものよ。さようなら。

まだ練習だというのに、おまえたちこそどんなメッセージを伝えようとしているのか、担任の菅原先生の眼差しは、それを受け止めしっかり見守り、目頭からこぼれそうになる熱いものをひたすらがまんしていた。

 

 

 

 

 

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