聖パウロ学園 グローバル教育の原点へ(1)

聖パウロ学園は、高校だけの学園。3年間で、進路指導も、グローバル教育も、教養教育も、総合的な教育を行う。中高一貫校であれば、ゆるやかに6年かけて成長をサポートするところだが、同学園は、それを3年間で行う。そのため、進路指導は、同時に総合的な教育になり、グローバル教育は同時に進路指導にもなるという高密度の実践をしている。

高密度の高校教育とはいかなるシステムか?そしてそれはなぜ可能なのか?聖パウロ学園は、自己否定感に悩んでいる多くの高校生が、かけがえのない価値を見出して自己肯定感を膨らませて人生の旅に出る勇敢で高慢な精神を持った人に変わる教育を行っている。いわば教育の原点に立っている学園である。このことを年間通して取材をし証明してみたい。by 本間勇人:私立学校研究家

聖パウロ学園には、高2の秋にイタリア修学旅行がある。一般に修学旅行というと、広島、沖縄などの平和学習をベースにしたものや、京都奈良など日本文化を学ぶものが多い。海外の場合、どうしても英語圏に行くケースが多いだろう。

これらの修学旅行は、グローバル教育のテーマでもある「平和」「異文化交流」そして「英語」のスキルアップなどを目的にする。しかし、高橋博校長は、

「今日のグローバルというダイナミックな動きは、実はルネサンスという近代誕生の光と影の原点から出発している。イノベーションもグローバルイシューもそこから端を発している。時代はたしかに激変する。しかし、その基本原理をつかんだとき、生徒たちは、時代に翻弄されることのない自己判断のパースペクティブを持つようになる。

グローバル教育といったとき、この時代を生き抜くサバイバルスキルももちろん大切だが、それをどのように使うかどうかの判断や意志が最重要だ。時代を動かす根源的な法則に気づいて欲しい。それがイタリア修学旅行のコンセプト。自己否定感を自己肯定感にチェンジにするには、根っこを育てるのが一番だよ。」

そして、その根っこは、4月から調べ学習を積み上げていく過程で育っていく。私が取材に行ったとき、総合的学習の時間で、1人ひとりが調べたことをそれぞれ編集して、プレゼンしていた。

そのときのプレゼンテータ―の表情が生き生きしていたし、聞き役の生徒の「ファイト!」と見守る温かい眼差しが眩しかった。聖パウロ学園のグローバル教育の原点はすでに反映していたのである。

高2を担当している長谷部先生は、この調べ学習から編集、プレゼンへの過程についてこう語る。

「前回は、ヴェネチアについて、プレゼンしました。今回のテーマはフィレンツェが大きな括りですが、この地域の地理や歴史、文化、芸術、政治経済、歴史的人物などどこに注目するかは、生徒1人ひとりの興味と関心に任せています。

興味と関心のあるところから掘り下げていくと探究活動が始まります。とはいえ、1人の力ではまだまだ道に迷いますから、私たち教師や特にカトリック関係については宗教を担当している教員がサポートします。あくまで、ファシリテーターで、生徒が一歩ずつ歩いていってくれることが大切です。

サポートするのは、調べ方からまとめ方、プレゼンの仕方まで、生徒1人ひとりによって違います。今日のプレゼンをご覧になっておわかり頂けたと思いますが、人前で心を開いてプレゼンする勇気に心から拍手をおくりたいと思います。」

 

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