工学院 教師はリスクテイカー(3)

加藤先生の授業に続き、田中先生の高2の英語の授業を取材。そして、驚いた。やはり電子黒板、ノートパソコン、デジタル教科書、インターネットというICTを駆使しつつ、PBLでリベラルアーツまで行っていたからであり、加藤先生と同じある意味IB(国際バカロレア)スタイルの授業になっていたからだ。

IBスタイルの授業とは、グローバル教育、イノベーション教育、リベラルアーツがPBLという対話型授業を介して有機的に統合されている学びの環境をいう。

(授業開始前から、生徒と対話しながら行う授業の準備は、ICT環境の整備から。工学院の教師は、ラップトップやタブレットを持ち歩いて、クラス移動をする)

田中先生のデジタル教科書の使い方は、スポーツのコーチさながら。日本語を表示されたら、英単語を言うと、今度は英単語が表示され、音声もでるが、そのときはシャドウィング。この間隔が非常に短く、全員のハーモニーが整うまで連打していく。はじめは、クラスの発音は不ぞろいだし、声が小さい。

完全に単語を憶えていないからだ。しかし、やがて英単語発音大合唱になる。授業のオープニングはかくして生徒の意欲を引き出す時間。

次に英文読解。前回の授業のパラグラフの文法や英文構造をサクサク復習し、シャドウィングしたら要約を生徒がする。

英単語の形式と音声と意味の3つの関係のドリルと英文の構造形式と音声と意味の3つのドリルの関係は同構造。知識を思考へリンクするシステムは痛快。ICTは速度感を自在にコントロールできる。それは大きなアドバンテージだ。

そして、急に時間の質密度が高くなる。テキストの内容は、国境なき医師団に関してだが、それに関連するニュースソースをインターネットにつないで、全員で見る。当然、テキストと動画の共通点と相違点について、考えながら生徒は観て、分析が自然とはじまる。

動画を見終えたら、グループワーク。ミッションは「ここまでの話を読んで、自分たちが今の状況でできるのは何か?」。

環境問題、戦争と平和の問題、食糧危機の問題、健康の問題、貧困の問題・・・。議論は多肢に渡る。しかし、今自分ができることとなると、意外と解答は金太郎飴になる。生徒たちは、もちろんその限界を超えなければならないと考える。

これについて、田中先生はこう語る。

「たとえば、戦争をなくすというのは、もちらん大事なアイデアですが、言うまでもなく、難しい。一体今の自分ができることは何か。途方に暮れるところから始まるわけです。実は、まだ、テキストの途中で、これから続きを読んでいくのですが、この段階で問題意識をもつことで、今後の理解が深まります。最後は、英語でプレゼンするためのテーマを投げかけようと思っています。」

コミュニケーションのツールとしての英語から思考を引き出すツールとしての英語へ。まさにIBスタイルの授業である。

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