聖徳学園 成長を押し上げるICT活用

聖徳学園は、21会校として、「思考力テスト」を実施し、ジグソー法とICTを授業に取り入れ聖徳学園流儀のアクティブラーニングのプロトタイプを構築。来年以降生徒にタブレットを配布して行っていく新しい授業を開発している。

一方で「グローバル交流活動の効果を上げる学習設計の要因分析」を東北大の渡辺真一准教授などとコラボレーションして基礎研究も進めている。今回は、山名先生のジグソー法×ICT授業を見学した。by 本間勇人:私立学校研究家

ジグソー法

山名先生は、東京大学の三宅なほみ先生からジグソー法の理論を学び、ご自身の授業の中に取り入れ、生徒の成長を促すことができるかどうか検証している。この試行錯誤は21世紀型教育の重要な特長でもある。

というのは、今までは大学で研究されてきた学習理論(Theory)と現場で創意工夫した理屈(theory)の統合がなかったために、授業のプロセスがみえにくく、それがゆえにドメスティックになり、授業を評価することが難しかった。

しかし、山名先生のように、大文字のTheoryと小文字のtheoryをリンクさせる試みによって、授業のプロセスが見える化されるから、生徒の成長を促すポイントを教師も生徒もシェアできるし、学内でもシェアでき、シナジー効果が生まれる。

そしてなんといっても、評価の基準がグローバルスタンダードになるから、将来生徒がグローバルな世界で活躍する時に、そこで身につけた探求方法や考え方が役に立つだろう。

今回の中1の総合学習のテーマは、「なぜ勉強するのか?」だった。このテーマは2時間で行う。見学したのは1時間目。山名先生は、この授業に臨むにあたり、

・シラバス

・ワークシート3枚

・電子黒板とiPadをリンクするpingpongアプリの設定

などの準備をした。pingpongアプリを活用することは統計的なデータベースを活用することになるから、教師の役割は今までとは違い、データサイエンティストとしての役割も加わる。21世紀型教育とは何かと問われるが、実際にはこの「授業の準備→授業→ポスト授業」の中で教師がどのような役割を果たしていくかを追跡していくのが一番わかりやすい。

さて、シラバスの流れは次のようになっている。

1 ICT環境の設定

2 導入:ペアになって、「なぜ、勉強しなければならないのか?」を対話し、pingpongに書きです。

すると、電子黒板に各ペアが考えたことがすぐに反映する。このとき、1つひとつの考え方をクラスでシェアしていく。

「なんて文学的な表現なのー!」「カッコいい!」と歓喜の声がもれ、盛り上がる。同時に、山名先生は、表現の中のことばを拾って、たとえば「未知の世界」とはどういう世界をイメージすればよいのか問い返す。このとき、シェアが深まる。

3 エキスパート活動:4~5人でチームをつくる。全体を勉強賛成と反対に分け、ディベートの準備をするかのようなイメージで、ディスカッションする活動にはいる。

「勉強しなければ将来困る」「高度な研究ができなくなる」「面談で応えられなくなる」あるいは「勉強しなくても生きていける」「勉強する時間を自分の好きなことに使った方が能力を伸ばせる」とか多くの意見が教室を満たした。

4 ジグソー活動&クロストーク:ここからは2時間目の予定で、来月行われる。予定としては、賛成派と反対派が均等になるようにグループ分けをしてチームを再編成する。そのうえで、「勉強する意味とは?」についてディスカッションするということである。おそらく、ここでメリットとデメリットの情報をシェアしながら、ポジティブシンキングができるようになることが期待されているのであろう。

5 まとめ:導入のときのペアにもどり、「なぜ、勉強しなければならないか?」を再び話し合い、pingpongアプリに書き出し、再び電子黒板で、各ペアの考え方をシェアする。すでにこのジグソー法の授業は他のテーマでも行っており、そのときは、この段階の考え方は、導入段階よりも明らかに深まっていることが共有された。今回もそうなることを山名先生は期待している。

生徒の成長を押し上げるICT

聖徳学園のICT教育は、学びの効率化をはかり、それによってねん出された時間を豊かな時間として活用し「心を育てる」ことを目標にしている。

山名先生の授業は、まさに心を育てるICT教育の側面も持ち得ていた。

山名先生いわく「ペアやグループになって話し合うことは、従来もできたわけですが、その都度、考え方を電子黒板などに集約して、シェアするということは、やろうと思えばできたでしょうが、ICTがなければ膨大な時間がかかったでしょう。

それに、ジグソー法の最初の授業は、情報リテラシーや情報倫理をテーマにしていたので、ICTのデメリットの部分の心配はなくなりました。

何より、グループで積極的に話し合っている姿に、確実に成長を押し上げているなと感じました。ICTを活用しているからこそ、瞬間瞬間成長している実感を共有できるのだと思います」

前回も同じクラスの授業を拝見したが、たしかに、その時に比べ、生徒はpingpongなどICTの設定はスムーズになっているし、チームを編成する時も躊躇する様子はなくなっている。

そして活発なディスカッションは、ICTスキルの向上のみならず、コミュニケーション行為のレベルもあがっていることを示していると感じた。次回の授業も楽しみである。

 

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