工学院 IB型考える授業公開(2)

今週から、文科省はいよいよ学習指導要領改定の作業に入る。2019年から2021年にかけて段階的に実施する予定の大学入試改革一体型の学習指導要領改定の作業である。

大学入試が従来型の一点刻みの知識定着度を評価する試験から、学びの体験や高度な思考力など人間力全体を評価する入試にシフトするのに伴い、小中高の学習指導要領も「思考力・判断力・主体性」を重視し、脱知識偏重というカリキュラムイノベーションを開始する。そして、そのためには授業も一方通行的講義形式からインタラクティブティーチングやアクティブラーニングに転換する予定。

工学院は、このような動きを、先行して動いていた世界全体のグローバルラーニングの潮流から読み解き、すでに先駆けてカリキュラムイノベーションに挑んでいる。今回の公開授業は、その準備段階の様子をありのままに公開した。

問答法

21世紀型教育あるいはグローバル教育などと呼ばれている学びの方法は、CEFRレベルでC1の英語力、PIL(ピアインストラクション:生徒どうしの教え合い)やPBL(プロジェクトベースドラーニング:探求・議論・編集・発表の学びのサイクル)のアクティブラーニング、電子ボードやタブレッドなどを組み合わせたICT活用力によって構成されている。

そして、その方法論のαでありωである(はじめでありおわりである)のは「問答法」。はじめであるαでは、教師と生徒の対話が行われるが、やがてそれは生徒どうしの対話になり、おわりであるωでは、自問自答ができ自律分散協調系のIB型思考力が身についている。

高3の物理の授業では、電気の領域を力学の領域で考えることは可能なのかについて問答が行われていた。電気の現象と力学の現象。目に見える部分は、全く違う現象であるが、電気も力学も、物質の運動という観点から見れば、一気呵成に分野横断的な発想が生まれる。

各分野の知識を活用しだすと、知識の背景にある本質的な運動の法則が現れる。そこに気づく問答の段階は、たんに知識の確認をするのではなく、現象から本質を見抜くクリティカルシンキングが働く。

この問答法のメタモルフォーゼが、PILであり、PBLである。教師と生徒の対話→生徒と生徒の対話→自分自身との対話という思考力の進化の過程を授業のシステムで形成していくのが21世紀型教育。

最終的には自律分散型の思考と、そこに到るまでに身につけた協調を組み立てるスキルが、生徒1人ひとりの内面で自問自答のシステムとしてできあがるのである。

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